JALAM NEWS LETTER

実験動物医学 NO.15/2000.7

主な内容

 

日本実験動物医学会平成12年度総会議事内容

・ 日本実験動物医学会のお知らせ

     エクスカーションのお知らせ

第14回日本実験動物医学教育講演「なぜその動物種を用いるのか?」

                     座長 鳥居隆三(滋賀医科大学)

 斉藤徹(日本獣医畜産大学)

1. 脳研究における霊長類

理化学研究所・脳科学総合研究センター  田中啓治

2.脳研究における小型げっ歯類

         理化学研究所・ライフサイエンス筑波研究センター  日下部守昭

 

・ 日本実験動物科学技術大会2001案内(その1)

感染症新法、狂犬病予防法及び家畜伝染病予防法の改正と獣医師の義務

 -実験用動物を中心として-

東京大学大学院農学生命科学研究科  吉川泰弘

 

・ 認定獣医師となって思うこと

バイエル薬品中央研究所   池田卓也

 

・委員会報告

1.情報委員会

 2.認定委員会

 

事務局だより

会費納入のお願い

 

Main Contents

 

・Contents of 1999 General Meeting of Japanese Association for Laboratory Animal Medicine (JALAM)

 

・ 2000 JALAM Meeting

Friday, October 6, 2000 14:00~17:00

Osaka Prefecture University, Sakai, Osaka

 

14th JALAM Education Lecture "Why is this species used?"

(1) Small rodent as an experimental animal for brain research

Moriaki Kusakabe, 

Biogenic Resources Center, RIKEN

(2) Experiments on nonhuman primate animals in the study of higher brain

functions

Keiji Tanaka

          Advanced Technology Development Center,

Brain Science Institute, RIKEN

        

・ Announcement of the Japanese Congress of Laboratory Animal Science and Technology 2001

 

 

・ Opinion on a Diplomat of Japanese College of Laboratory Animal Medicine (JCLAM)

Takuya Ikeda

 

 

 

 

日本実験動物医学会平成12年度総会議事内容

 

日時:平成12年4月5日  場所:つくば国際会議場

前島会長あいさつののち会長を議長に選出し、議事を開始した。

 

[1]平成11年度事業報告

1.総会の開催

 平成11年度通常総会、日時:平成11年4月2日、場所:麻布大学

2.理事会の開催

(1)平成11年度第1回理事会

日時:10月13日(水) 9:00?11:00、場所:熊本大学動物資源開発研究センター

(2)平成11年度第2回理事会

日時:平成12年3月7日(火) 午後1時より、場所:日本実験動物学会事務局、

3.学術集会等の開催(学術集会委員会)

(1)教育セミナー

 ・第11回:日時:平成11年4月2日(金)9:00?12:00、場所:麻布大学(第127回

日本獣医学会総会)、テーマ:実験用動物の人獣共通感染症の実態と対策について

・第12回:日時:平成11年10月12日(火)14:30?17:00 、場所:熊本大学医学部(第128回日本獣医学会総会)、テーマ:遺伝子改変マウスにおけるマウス肝炎ウイルス(MHV)汚染を考える 

(2)一般演題の発表

平成11年4月の第127回日本獣医学会総会(麻布大学 相模原市)では、一般演題19題が発表された。 

(3)平成13年5月に開催予定の第48回日本実験動物学会総会は我が国の各種実験動物関係諸団体との共同開催(大会名称:実験動物科学技術大会2001)が企画されており、日本実験動物医学会もこれに共催することでシンポジウムの内容等につき検討した。

4.会報の発行(会報編集委員会)

 実験動物医学第13号と14号を平成11年7月と平成12年2月に発行した。  

5.情報活動について(情報委員会)

 情報委員会はホームページおよびメーリングリストを立ち上げ、運用している。また、内外の関連情報についても適宜関連MLに伝達した。

6.実験動物学教育について(実験動物学教育委員会)

(1)獣医学教育の再編案等に関する情報収集を行った。

(2)実験動物出題基準を作成した。

7.認定獣医師について(認定獣医師認定委員会)

(1)認定獣医師の会の開催

平成11年4月2日麻布大学:獣医師の正式名称(日本実験動物医学会認定獣医師)、英文名称(Japanese College of Laboratory Animal Medicine : JCLAM)が決められた。

(2)認定獣医師審査

 平成11年度(第2回)認定獣医師認定審査を行った。11名を認定獣医師として認定した。

(3)ACLAMとの交流を持った(詳細は渉外理事の報告参照)。日本獣医師会との会合。

8.海外交流について(渉外担当理事)

(1)米国のAmerican College of Laboratory Animal Medicine(ACLAM)と交流を持つべく平成11年11月に開催されたACLAM理事会とビジネスミーティングに代表を派遣した(阪大・黒澤理事および東北大・笠井理事)。

(2)齧歯類品質の国際標準化に関する会議

 AALAS Scientific Advisory Committee(米国実験動物協会科学委員会:委員長 Dr.Abigail Smith )主催のInternational Standardization of Rodents and Diagnostic Testの会議に出席した。

(3)国際標準基準作成の委員会への参加

 米国、ヨーロッパ、日本により微生物モニタリングおよび遺伝モニタリングの国際標準策定のためのワーキンググループを作ることが決められ、参加することした。

9.エクスカーション(懇親会)の開催

 平成11年10月12日熊本大学医学部・浦野徹氏のご尽力で、熊本市内江津湖で屋形船を浮かべ、懇親を深めた。

10.会員の動静(平成11年12月31日現在) 日本実験動物医学会 会員数 243名

 

[2]平成11年度決算報告ならびに平成11年度特別会計(認定委員会)決算報告は原案通り承認された。

 

[3]平成12年度事業計画 

委員会を中心に活動を行う

(1)学術集会委員会

 1)第13回教育セミナー(平成12年4月筑波)

 2)第14回教育セミナー(平成12年10月大阪)。

 3)上述以外の不定期の学術集会あるいは教育活動については、まず初めに学術・教育内容などについて実験動物学教育委員会と協議し、13年度以後の実施に向けて準備する。

(2) 会報編集委員会

 会報(第15号、16号)の発行を予定。今年度から「主な内容」は英文も添付する予定。 

(3)情報委員会

 1)情報委員会は引き続きホームページの運営および本会関連MLの運営を行う。

 2)ホームページに編集委員会が準備するニュースレターの英文目次を掲げる。

(4)実験動物学教育委員会

 獣医実験動物専門医のニーズに関する調査を行い、獣医の学部教育における実験動物学の教育と卒後教育、実験動物専門医に必要なカリキュラムのマスタープランを検討する。

(5)認定獣医師認定委員会

 1)認定制度の現在の暫定規則を改正し、本制度を確立する。

 2)試験制度案の作成をおこなう。

 3)認定獣医師の会を開催する(2000年4月5日)

(6)国際交流について

引き続き、ACLAMとの交流を続ける。さらに、韓国との交流を模索する。

 

[4]平成12年度予算案 原案通り承認された。

 

[5]平成11年度認定獣医師発表(平成12年3月25日付け)

池田卓也 認定第33号   池田忠生 認定第34号   磯貝 浩 認定第35号  

鈴木秀作 認定第36号   手塚英夫 認定第37号   福田孝一 認定第38号  

松本清司 認定第39号   丸尾幸嗣 認定第40号、  万年和明 認定第41号   

毛利資郎 認定第42号   諸星康雄 認定第43号

 

 

日本実験動物医学会のお知らせ

日本実験動物医学会・教育セミナー

日時: 2000年10月6日(金) 14:00〜17:00

    (獣医学会開催日前日です)

場所: 大阪府立大学

セミナー終了後エクスカーションを予定しております。

 

日本実験動物医学会エクスカーション

(秋の大阪のハートを水上タクシーから満喫)

集合:2000年10月6日 17:30   

日本獣医学会会場(大阪府立大学)の門(会場に一番近い門は現時点で不明)

  (遅刻、その他不都合な方は18:00より淀屋橋水上タクシー乗り場にて待つ)

募集人員:約50名

要領:大型水上タクシーに乗船後、大阪市庁舎、中之島公会堂、中之島、大蔵省造

幣局、大阪ビジネスパーク、大阪城などを約90分で巡り、大阪のハートを満喫す

るという趣向です。なお、淀屋橋(出発場所)からは大阪府大方面へは地下鉄が便利です。

また、ここからは大阪北新地の歓楽街がすぐそばです。少し酔い覚ましに歩くとお初天神通り、阪急東商店街など若向き歓楽街にも向かえます。

 

連絡先:大阪大学医学部附属動物実験施設 06−6879−3171(黒澤)

申込先:kurosawa@iexas.med.osaka-u.ac.jp

 

 

第14回日本実験動物医学会教育セミナー

教育講演「なぜその動物種を用いるのか」

                  座長 鳥居隆三(滋賀医科大学)

 斉藤徹(日本獣医畜産大学)

 

脳研究における小型げっ歯類

理化学研究所、遺伝子基盤研究部 日下部守昭

 

小型げっ歯類が医学研究に実験動物として使用されてきた歴史は長く、その成果は広く利用されてきた。最近では、分子生物学技術の発展とともに、トランスジェニックマウスやノックアウトマウスと呼ばれる遺伝子操作動物の作成が可能となり、従来、遺伝疾患モデル動物として使用されてきた突然変異マウスとともに脳研究領域において大きな役割を果たし始めている。

 脳は、神経細胞とグリア細胞と呼ばれる2大要素によって複雑に形成されており、多くの遺伝子によって、その高次機能発現が演出されている組織である。脳神経機能研究は、従来より神経解剖学的および神経生理学的に解明され、その成果が蓄積されてきたが、ゲノム研究の推進に伴って個々の遺伝子が単離され、一つの遺伝子に焦点を当てた研究アプローチが精力的になされるようになった。その結果、マウスでは、種々の遺伝子組換え個体が作成され研究に用いられているが、脳研究に重要な貢献をしてきたラットは、遺伝子操作技術開発が遅れているのが現状である。ラットを用いた生理学研究によって蓄積されてきた成果を有効利用するためにも遺伝子操作ラットの作成技術開発は急務であると考える。

情動研究や記憶機構など脳の高次機能研究は、より高等な動物種を用いて成し遂げられる研究であるが、ヒトやサルなどを実験動物として使用する場合には限界がある。また、脳の高次機能発現には多くの遺伝子が関連しており、遺伝子レベルでの研究と個体レベルでの研究を一体化できる実験材料が必要となってくる。この意味で、マウスやラットなどの小型げっ歯類は、今後脳高次機能研究の一役を担うものと信じている。

本講演では、現段階での研究手法や今後必要になると考えられる研究方向についても紹介したいと思う。

 

 

脳研究における霊長類

理化学研究所 脳科学総合研究センタ−  田中啓治

 

 高次脳機能の研究においてはサルを使った研究と人間を対象とした研究が相補的な役割を果たす。高次脳機能には大脳皮質連合領域が重要である。連合領域とは感覚第一次野と運動第一次野を除いた大脳皮質の領域であり、霊長類で大きく発達した。げっ歯類の脳では大脳皮質連合領域は未発達である。それで高次脳機能の研究には霊長類を用いる必要がある。高次脳機能研究の最終目標は人間の脳機能の理解であり、そのためには人間になるべく近くまで発達した動物を使うことが望まれる研究の局面もあるが、マカク族のサルが侵襲的な実験に使える最も人間に近い(大脳皮質連合領域がよく発達した)動物種である。最近、非侵襲的に頭皮の外から神経活動を測定する非侵襲脳活動計測法が発達してきたために、人間の脳についても研究が進んでいる。しかし非侵襲計測法の空間分解能は1ミリ以上であり、機能メカニズムを細胞、神経回路レベルで調べるには全く不十分である。また、脳の中の配線を調べるためには、脳の中に色素などのトレーサーを注入するトレーサー実験が必要であるが、このようなトレーサー実験を人間の脳で行うことはできない。そのために、マカク属サルを用いた実験と人間を対象とした研究の両方をバランス良

く展開していく必要がある。マカク属サルを実験動物にした研究では、サルを行動課

題で訓練し課題遂行中に神経細胞活動を記録する方法、トレーサー法、主に麻酔した

サルで行う光計測法などが用いられ、大きな成果が挙げられつつある。

 

 

 

 

日本実験動物科学技術大会2001案内(その1)

 

感染症新法、狂犬病予防法及び家畜伝染病予防法の改正と獣医師の義務

 -実験用動物を中心として-

               東京大学大学院農学生命科学研究科  教授 吉川泰弘

 

はじめに:

 最近、相次いで獣医師に関連する法律の改正が行われた。それらは、主として産業動感染症の防疫を目的とした家畜伝染病予防法(家伝法)、ヒトの感染症の防疫を目的とした「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症新法)、及びヒトと動物の狂犬病の防疫を対象とした狂犬病予防法である。これらはいずれも直接、実験動物の感染症を対象にしたものではないが、家伝法では実験動物として利用されるアヒル、ニワトリ、ウサギ、イヌの感染症についても届け出の必要な感染症が含まれている。また感染症新法では動物由来感染症が初めて法律の対象となり、サル類のエボラ出血熱とマールブルグ病が検疫対象となった。狂犬病予防法の一部改正では、検疫対象動物がイヌの他にネコ、キツネ、スカンク、アライグマに拡大された。そこで、実験用動物に関連するものについても紹介する必要があると思い、法律の目的、経緯、獣医師の義務、問題点等について、簡単にまとめてみた。

1、感染症新法について:

 感染症新法は平成10年10月の官報に公示され、同年12月28日に関連の政令が出され、平成11年4月から施行された。サル類の検疫に関しては省令が平成11年12月と平成12年2月に出され、輸入検疫は12年1月1日から実施されるようになった。

 感染症新法は明治以来、丁度百年振りに伝染病予防法が見直されたもので、1)人権に配慮し、これまでの患者の隔離による伝染病の封じ込めというスタイルから、監視(サーベイランス)と予防医学を中心にする。2)感染症を危害評価に応じて第1類から4類に分類し、適切な対応をとる。3)新しい感染症に対応するため5年ごとの見直しを行う。4)人獣共通感染症を組み込んだことが新しいポイントであった。

1類感染症はエボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッ

サ熱。

2類感染症は急性灰白髄炎、コレラ、細菌性赤痢、ジフテリア、腸チフス、パラチフ

ス。

3類感染症は腸管出血性大腸菌感染症。

4類感染症はエイズ、腎症候性出血熱、Q熱、マラリア、MRSA等の感染症が含ま

れる。

このうち、エボラ出血熱、マールブルグ病、クリミア・コンゴ出血熱、ペスト、ラッサ熱(第1類感染症)、細菌性赤痢(第2類感染症)、腸管出血性大腸菌症(第3類感染症)、アメーバ赤痢、エキノコックス症、ジアルジア症、Q熱、クラミジア肺炎、黄熱、デング熱、

腎症候性出血熱、ツツガムシ病、ライム病、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、日本紅斑熱、ブルセラ症(以上4類感染症)はいずれも広義の動物由来感染症で、ヒトが感

染した場合には、診断した医師は届出を義務づけられている。他方、後述するいくつかの例を除き、ほとんどの感染症は動物が感染していても獣医師が届け出る義務はない。しかし、注意して監視する必要はあると思われる(例えば最近、ペスト菌の保有動物としてプレーリードッグが問題にされた)。

 獣医師がこの法律により特に義務づけられるのは、第13条に関連して政令で定められたサル類のエボラ出血熱及びマールブルグ病(当該感染症に罹ったあるいはその疑いのある時)の届け出義務である。「サルの検疫制度に係る省令検討委員会」では、輸入禁止地域等(第54〜56条)の設定に関して、以下のように提案した。1)サル類の輸入に関してはエボラ等の病原体の存在が疑われる地域(過去に発生報告があった地域あるいは発生の起因となったサルの原産地等)はハイリスク地域とする。2)医・獣医組織体制が整備されていない地域はこれらの疾病のサーベイランスが十分でないと考えられるのでハイリスク地域とする。3)他方、一定のリスクがある地域でもサルに関して飼育施設の管理体制、検疫制度が十分に整備されている場合には、リスクを軽減出来ると考える。これらの要因を考慮し、過去にエボラ等の病原体の存在が確認された地域、またはエボラ等の病原体の存在が疑われる地域で、医・獣医組織体制が整備されていず、発生があっても状況の把握が適正に行われにくいと考えられる地域は輸入禁止とする。また4)輸出前検疫はエボラ等の潜伏期間を考慮し、30日程度の隔離状態での臨床観察を要求すること。5)輸入後は30日程度の隔離係留による臨床検査を主体とし、エボラ等が疑われる場合は係留期間延長および精密検査を実施する。エボラ等を発症したサルを摘発した場合は同一群のサル全てを殺処分とすること。

 これを受けて、厚生・農水両省は現地査察を行い、輸入許可国をアメリカ合衆国、ガイアナ(2施設)、スリナム(2施設)、中華人民共和国(5施設)、フィリピン共和国(5施設)としたが、平成12年2月28日にインドネシア共和国(2施設)とベトナム社会主義共和国(1施設)がこれに加えられた。従って、これ以外の地域からのサル類の輸入は原則禁止となった。輸入禁止地域からサル類を輸入しようとする場合は、大臣の許可が必要となる。この場合特別の輸入許可手続と義務の遵守、1)輸入許可申請書、2)輸入許可証明書、3)輸入許可証明書に付帯する義務規定、が必要となる。

 輸入許可国からサル類を輸入する場合は、輸入に関する届出書を輸入40〜70日前に動物検疫所(横浜本所)に提出し、成田空港あるいは関西空港の動物検疫所支所に輸入検査申請書を提出する。サル類を輸入出来る空港は成田空港と関西空港のみである。到着時の検査(輸出国政府機関の発行した証明書、健康状態の確認)の後、係留施設に30日間係留し、臨床観察及び異常を認めた場合の精密検査を行う。係留施設は上記空港の施設の他に農林水産大臣が指定した施設も含まれる。検疫後は輸入検疫証明書が交付される。

 また厚生省の「感染症予防に係る動物対策検討委員会」で、輸入サル類の赤痢、結核等(両疾病とBウイルス感染症を含む)についても、サルが罹患発症している際にヒトへの伝播の危険があることから、適切な対応が必要であることが指摘された。これをうけて、厚生省生活衛生局乳肉衛生課長から農水省畜産局衛生課長、動物検疫所長を経て、サル類の輸入検疫においてサルが赤痢又は結核等の感染症にかかっていることを確認した際に、検疫施設長は保健所長に連絡するよう通知が出された。

 これまでの検疫対応としては、Bウイルス病発症個体は治療せず殺処分するが、Bウイルス抗体陽性個体は殺処分はせず、免疫抑制実験等には使用しない。結核についてはツベルクリン陽性個体のみ治療しないで安楽殺する。細菌性赤痢については、治療し治癒した後、排菌しなくなれば開放する手段を取って来たが、基本的には対応が特に変わるわけではない。しかし、発症個体を確認した場合は動物検疫所あるいは保健所長への連絡が必要になった。

2、狂犬病予防法の一部改正について:

 狂犬病予防法(昭和25年)の制定によりイヌの登録、ワクチン接種義務及びイヌの輸入検疫が行われるようになり、わが国では昭和32年以降狂犬病の発生はみられていない。しかし世界的にはネコや野生動物(アライグマ、キツネ、スカンク等)での発生が報告されており、また交通手段の発展による動物移動の増加やエキゾチックアニマルの輸入増加により、わが国に狂犬病ウイルスに感染した動物の侵入する危険性が増大している。事実、隣国の韓国でも長く狂犬病の発生はみられなかったが、1993年以来狂犬病が再発生し、その対応に追われている。

 今回、狂犬病予防法の一部改正(平成10年10月の法改正、12月の政令)により輸入検疫対象がイヌの他にネコ、アライグマ、キツネ、スカンクに拡大され、平成12年1月1日より輸入検疫が実施され始めた。「猫等の検疫制度制定に係る省令検討委員会」では以下のような結論を得た。新しい動物検疫は1)基本的にはイヌに準ずる。2)ネコ、キツネ、アライグマ、スカンクの輸入検疫については、係留による臨床観察をおこない、係留期間については現行のイヌの係留期間に準じた期間とする。3)ワクチンについてはネコはイヌと同様、輸出国でのワクチン接種を要求し、ワクチン接種を考慮した係留期間を設定する。アライグマ、キツネ、スカンクについてはワクチン効果に関する科学的データ等が整備されていないことから、輸出国にワクチン接種を要求しない。4)政府機関の監視下におかれている施設等で適切な管理下で一定期間隔離されたネコ等は、狂犬病に感染している危険性が低いと考えられるので、ワクチン接種が無い場合でも180日間の係留期間を短縮することが可能であると考えられる。すなわち輸出国で出生以来又は6カ月以上適切な施設で隔離されていたこと、狂犬病にかかっている恐れのないこと等を輸出国政府機関が証明した場合は、輸入検疫は30日間の係留と臨床観察で対応する。5)幼弱動物、SPF動物等の検疫については係留場所を動物検疫所以外にも指定し、その使用を考慮する。

 これに基づき、イヌ・ネコに関しては、狂犬病の予防注射を受けているものは、健康証明書があれば係留期間は14日、健康証明書が無ければ30日となる(但し、狂犬病の予防接種を受けて30日以内の個体、あるいは家畜防疫官の許可を受けて予防接種を係留場所で行った場合は、健康証明書の有無により、それぞれ注射を受けた日から係留を始めた日までの日数を44日、60日から差し引いた日数、あるいは係留を始めた日から注射を受けた日までの日数に44日、60日を加えた日数の係留が必要となる)。また狂犬病フリーの指定地域から直接輸入され、健康証明書があるもの12時間以内、指定地域以外からの輸入で、指定施設で隔離されていたこと等の証明書がある場合は30日、それ以外は180日の係留、観察が必要となる。

 アライグマ、キツネ、スカンクについては、ワクチン接種を要求しないので、指定地域から輸入され、健康証明書があるものは12時間以内、指定地域以外から輸入され指定施設で隔離されていたこと等の証明書があるものは30日、それ以外は180日の係留となる。

 イヌ、ネコ、アライグマ、キツネ、スカンクを輸入する場合は、動物を輸入する40〜70日前に届出書を、また動物が到着したらすぐに輸入検査申請書を到着する予定の空港・港を管轄する動物検疫所に提出する必要がある。到着時に輸出国の証明書の確認、健康観察を行った後、係留検査が始まる。検疫終了後は輸入検疫証明書が交付される。後述するようにイヌのレプトスピラ症が家伝法の対象となったため、レプトスピラ症にかかっていない又はかかっている疑いのない旨の証明書が必要となる。この証明がない場合は、家伝法違反となるため輸入することはできない。

3、家畜伝染病予防法の一部改正について:

 近年、畜産経営の規模が拡大する傾向が著しく、これに伴い伝染病の発生による被害の規模拡大が強く懸念されるようになったこと、海外ではウシ海綿状脳症、ヘンドラウイルス、ニパウイルス感染症(家伝法改正時には出現していなかったが、その後ブタとヒトの人獣共通感染症として多大な被害を起こし、ごく最近、監視伝染病の対象疾病に組み込まれた;対象動物はウマ、ブタ、イノシシ)のような新型感染症が頻繁に発生するようになったこと、及び食肉等の輸入量の増大、輸入地域の多様化により輸入伝染病の侵入機会が増加しているため、農水省は家伝法の全面的な見直しを行った。家伝法は平成9年4月に官報により改正が公示され、平成10年4月より施行された。

 主な改正点は1)流行性感冒、気腫疸、豚丹毒を削除したこと。伝染性海綿状脳症、水胞性口炎、リフトバレー熱、アフリカ馬疫、鶏チフスを加えたこと。ヒナ白痢を家禽サルモネラ症に名称変更したこと。及び対象家畜にシカ、イノシシを加えたことである。また2)届出対象疾患と届出先の変更を行った。即ち新疾患、家畜伝染病、届出伝染病は知事(家畜保健衛生所)に届け出ることとし、監視伝染病として家畜伝染病(26種)と届出伝染病(70種)を整備した。更に3)家畜防疫員の検査等は新疾病、監視伝染病に限ることとし、殺処分手当金の改正と動物検疫対象疾病の限定(新疾病、監視伝染病のみ)を決定した。ここで言う新疾病とは既に知られている家畜の伝染性疾病と病状や治療の結果が明らかにことなる疾病(感染症新法ではヒトの新感染症に分類したもので新興感染症、特殊な輸入感染症等を含む)のことである。新疾病を発見した獣医師は直ちに家畜保健衛生所(知事)に届出る義務がある。

 これらの感染症のうち、大動物を除き主として実験用動物で問題になるものには以下のものがある。

 

 家畜伝染病      届出伝染病               

  

 家禽コレラ           鳥インフルエンザ  鶏痘  マレック病

 家禽ペスト           伝染性気管支炎   伝染性喉頭気管炎

 ニューカッスル病       伝染性ファブリキウス嚢病  鶏白血病

 家禽サルモネラ症        鶏結核病  鶏マイコプラズマ病

(S. pullorum, S. gallinarum)   ロイコチトゾーン病 

                  アヒル肝炎アヒルウイルス性腸炎

                  ウサギウイルス性出血病

                  ウサギ粘液腫 野兎病

                  イヌレプトスピラ症 

 

 実験用動物として購入、飼育されている場合には、こうした感染症に巻き込まれる可能性は少ないと思われる。多くは古くから知られている感染症だが、いくつかは比較的新しいものなので、以下に簡単に紹介する。

 アヒルウイルス性腸炎はアルファヘルペスウイルスにより引き起こされる。アヒル、カモ、ガチョウ、ハクチョウなどの水禽類が罹患する急性感染症で経口感染し、潜伏期は3〜7日、発症後1〜5日で死亡(日齢による)する。既に北米、欧州、中国、インド、タイで発生がみられ、死亡率は5〜100%、持続感染も成立し、感染鳥が湖沼の汚染源となることが知られている。発症個体では食欲不振、羞明、沈鬱、水様性下痢、鼻汁、運動失調が起こり、病理学的には斑状出血、肝の巣状壊死と核内封入体がみられる。予防法としては生ワクチンがある。

 アヒル肝炎は3型があり、I 型とIII 型はピコルナウイルス、II 型はアストロウイルスにより起こる。幼鳥は感受性が高く、成鳥は発病しない。I 型は北米、英国、中国、台湾、朝鮮、日本で発生しており、感染率は100%、致死率は1週齢以内では95%である。II 型は英国で発生しており、致死率は2週齢までは50%、6週齢までは10〜25%である。他方、III 型は米国で発生しており、致死率は30%である。症状はI 型とIII 型ではうずくまり、痙攣・後弓反張して死亡するものが多く、II 型では甚急性死を起こす。病理学的には肝の点状、斑状出血、肝細胞壊死、胆管増生がみられる。予防法としてはI 型のみ生ワクチンがある。

 最後にウサギウイルス性出血病であるが、これはカリキウイルスにより引き起こされる。1984年に中国のアンゴラ種に初めて発生した。接触と経口感染より伝播する高い死亡率の急性伝染病である。ウイルスは糞、尿、鼻汁、涙等に含まれ、感染動物は回復した後も3〜4週ウイルスを排出する。すでに欧州の全域、中国、韓国、北朝鮮、ニュージーランド、アフリカ、メキシコ、キューバ、ロシア等にも広がっている。症状は哺乳ウサギは不顕性感染、2カ月齢以下では亜急性感染で回復するが、2カ月齢以上では急性症状を呈し、90%以上が死亡する(潜伏期1〜2日で発症後6〜24時間で死亡)。臨床症状は発熱、食欲減退、沈鬱、衰弱、神経症状で、末期には鼻孔周囲に血様滲出物がみられる。病理学的には肝の腫大と肺・脾・腎の点状出血、急性壊死性肝炎、肝の限局性壊死、血管内凝固が特徴である。

 このほか前述したように、古い疾病であるがイヌのレプトスピラ症が届出伝染病にされた。

おわりに:

 獣医学の分野が動物をゴールとした狭義の臨床獣医学(産業動物獣医学、小動物獣医学)のほかに獣医公衆衛生学やパラメディカル(実験動物学や毒性学)のようにヒトをゴールとした社会獣医学に広がって来ており、獣医師に対する社会ニーズも社会的義務も変化しつつありる。視野を広く持って社会のニーズに答えて行くことが、これからの獣医に強く求められていると思われる。

 

 

認定獣医師となって思うこと

バイエル薬品中央研究所     池田卓也

 

国際標準という言葉が,実験動物分野においてもごく自然に使われるようになってきた.各動物実験施設では,直接あるいは間接的に様々な国際標準への対応を迫られている.一方,わが国の実験動物関連分野における諸制度は,いわゆる国際標準から掛け離れているという多くの指摘がある.このような状況下で,日本実験動物医学会(JALAM)が,実験動物施設に関わる獣医師の国際標準化に向けて,認定獣医師の会(JCLAM)を誕生させたことは意義深い.そして暫定認定獣医師制度2年目にして,資格審査により認定を得た獣医師の一人として,認定を素直に喜ぶとともに認定獣医師制度と認定獣医師の役割について考えてみた.

まずは,認定獣医師43人中,民間企業に在籍する獣医師はわずか3人と少ないのは,民間企業人としてさびしい限りである. JALAMに所属する民間企業在籍者の割合は,2割程度と決して多いとは言えないが,それに比しても3人は少なすぎる.これには,企業におけるJALAMやJCLAMの認知度が低く,企業からの積極的な参画が得られ難い状況があること.資格暫定評点基準が,学問領域の成果に重点が置かれ,自由な研究発表が制限されている民間企業人には,高いハードルとなっていること.さらに日本獣医学会に併せて開催されるセミナーへは,昨今の厳しい企業環境では出張が制限され,必ずしも自由に参加できない状況があること.などが要因としてあげられる.しかし認定獣医師制度を定着させるためには,大学や国公立の研究機関に在籍する獣医師のみならず,広く民間企業に在籍する獣医師をも含め,裾野の拡大を計る必要があろう.そのために民間企業の一代表として,民間企業人が参画しやすいように認定獣医師制度の弾力的な運用を訴えたい.その結果として,社会的な認知度が高まり,民間企業に籍を置く認定獣医師の増加が達成されれば幸いである.

今一つは,認定獣医師の動物実験施設における位置と役割が,必ずしも明確となっていない感がある.すなわち認定獣医師制度を発足するに当たっては,その制度および認定獣医師の資格について,多くの議論がなされてきたと記憶している.しかしながら,制度としての確立に重点が置かれたこともあってか,認定獣医師の役割については未だ具体的かつ十分には定義されていない.これらの点を明確にし,我々の必要性を広く認識させることにより,民間企業を含めて社会的な認知度を高め,結果として認定獣医師制度を定着させることが肝要あろう.

本制度発祥の地,米国では獣医師の地位は,日本に比較して高い.特にACLAM認定獣医師は,その地位と役割が社会的にも認知され,多くの動物実験施設が彼らを必要とし権限も与えている.私が接したACLAM認定獣医師は,高いプライドを持ち,自己紹介の折にも認定獣医師である点を強調していた.一方,日本の動物実験施設における我々の位置付には,正直行って心許ないものがある.我々が,ACLAM認定獣医師と同様に,社会的要求に見合った獣医師となりうるのか!そして今後,質の高い認定獣医師を社会に送り出せるのか!社会が期待する動物福祉等の実践に貢献できるのか!など,認定獣医師が検討すべき問題は山積している.いま我々には,これら問題点を明確にし積極的に取り組むことが求められている.そしてさらに我々自信が,認定獣医師の存在意義を問い直し,その必要性を社会に対して明確にすることが肝要であろう.そのことが認定獣医師制度の社会的認知度を向上させ,制度として定着することに繋がると信じたい.今後の我々のあるべき姿については,認定獣医師あるいは認定獣医師を目指す諸氏と,活発な議論をすべき問題であり,それができれば幸いである.

 

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