新しいモデル動物の作製技術
(WS-20-1)
下田 耕治  前島 一淑
(慶應義塾大学医学部実験動物センター)
ヒトや動物の生理学的あるいは病理学的現象を探究するための実験系として、様々
な疾患モデル動物が利用されている。これらは自然発症モデルと実験的発症モデル
に大別される。自然発症モデルでは、遺伝的に発症素因が固定され、原因遺伝子の
多くは染色体上の位置が特定され、その塩基配列が決定されつつある。実験的発症
モデルでは、これまで薬剤の投与や外科的処置により疾患モデルが作製されてきた
が、現在では生殖細胞に対し遺伝子操作を行うことにより、特定の遺伝子が導入あ
るいは改変された遺伝子操作動物(マウス)を作製することが可能となった。遺伝
子操作動物では加えられた処置(原因:導入または改変遺伝子)とそれによって現
れた症状(結果)が明確なため、より優れた実験系と言うことができる。
神経疾患モデル動物を遺伝子操作で作製しようとするとき、どのような遺伝子を導
入あるいは改変したらよいであろう。脳神経に異常を呈する動物はしばしば行動異
常を伴うため日常の飼育管理において発見されやすく、そのため多くの神経疾患モ
デル動物が報告されている。そのうち幾つかのモデルでは原因遺伝子や発症機序が
分子レベルで明らかにされている。したがって、その遺伝子を逆に操作することに
よって症状が緩和ないし再現されれば、当該疾患に関し原因と結果が確定したこと
になる。また、神経の発生や機能に重要な役割を演じている遺伝子は操作遺伝子の
優れた候補と言うことができる。現れた症状や発症機序がヒトと同じであるかどう
かは別にして、これらのモデル動物は脳神経を科学する上に貴重な知見をもたらす
ことは疑いない。
ここでは「発生原理に基づいた神経疾患モデル研究の新しい展開」の序として、マ
ウスの胚操作法や遺伝子操作法を紹介し、ES cell、over expression、dominant
negative、knockout、partial knockout、gene trap、Cre-loxP systemなどについ
て概説する。

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