ランダムミュータジェネシスによる 神経疾患モデルマウスの開発 (WS-20-2) 山村 研一 (熊本大学医学部遺伝発生研究施設) ヒトゲノムプロジェクトの進展で遺伝子の構造解析については西暦2005年程度まで には目処が立った。しかし、遺伝子の構造だけでは、機能は必ずしも推定できず、 また病気の場合の発症過程についても何も語れないことが多い。したがって、遺伝 子導入及び遺伝子破壊マウスを用いての研究が必要となる。これにより推論が裏付 けられることもあるが、遺伝子を破壊しても何も起こらない場合もあり、事前に予 測できない。逆に予想外のことが起こることもある。例えば、Cbfa1遺伝子である。 これは、ショウジョウバエのpair-rule遺伝子の一つであるruntに相同性のある DNA結合ドメインを持ち、T細胞で発現するTCR遺伝子等のエンハンサーに結合する転 写因子として見つかった。しかし、その破壊マウスでは骨形成がみられず、そのマ スター遺伝子であると分かった。皮肉なことにこの発見は骨形成を専門とする研究 者によってなされたわけではない。ことここに至ると、これまでのデータをもとに 作業仮説を立てるという従来の実験医学序説的発想は、すべてにおいて真ならずと 考えざるを得ない。この点を看破した米国の遺伝子破壊マウスの委託作製を行なう 会社の宣伝文句は「Knockout Genes Now. Ask Questions Later」である。 一方、相同遺伝子組換えによる遺伝子破壊マウスは、1996年度末までに約1000種類 作製されたが、10万個と推定される遺伝子からみればたかが1%である。遺伝子破壊 マウス作製の律速段階は、ES細胞を用いた相同遺伝子組換えによる破壊であるが、 これに約3カ月かかる。したがって、1人につき1年間で4種類の遺伝子破壊マウスし か作製できない。10万個全ての遺伝子破壊マウス作製には、25,000人・年かかるこ とになる。また、経済的にも1件最低200万円かかり、負担が大きいことが指摘され ている。 上記の点を解決する方法として、飽和突然変異マウスライブラリーをランダムに作 製するプロジェクトを提案したいが、その現状を我々のデータも含め紹介したい。
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