第48回アメリカ実験動物学会に出席して
八神 健一
(筑波大学動物実験センター)
1997年、11月16日から20日まで、ロサンゼルス郊外のアナハイムで開催された第
48回アメリカ実験動物学会(American Association for Laboratory Animal
Science(AALAS) National Meeting)に出席する機会を得た。会員の中にもこの学会
に出席された経験をお持ちの方が多々おられることと思うが、私たちが国内で接す
る学会の雰囲気とは異なる部分も多いので、私なりの印象を御紹介したい。
 まず、AALAS自体は日本の実験動物学会に相当するが、構成メンバーは研究者ばか
りでなく実験動物技術者に相当する人が多く参加しており、地域ごとの集会や企画
も盛んである。年一回の総会(National Meeting)は地域を上げて準備され、会場
の運営には多くのボランティアが貢献し、AALASの認定するLATG(laboratory
animal technologist)、LAT(laboratory animal technician)、ALAT(
assistant laboratory animal technician)の名札を付けた参加者の数が目立った
。
 会場となったアナハイムのコンベンションセンターは、ディズニーランドのすぐ
近くで、ホテルの立ち並ぶ一角にある。会員は近隣のホテルに宿泊し、歩いて会場
に行けるので、朝早くから夜遅くまで企画も盛りだくさんである。今回は、16の会
場で、同時にワークショップ(WS)、セミナー(SM)、ラウンドテーブルディスカ
ッション(RTD)、レクチャー(LEC)、プラットフォームセッション(PS)等が計
71のテーマで、さらにポスター発表も71件が行われていた。それぞれ、「研究、実
験手技」、「動物福祉や社会教育」、「動物施設管理」の3種に大分類され、
LECやPSでは「研究、実験手技」、RTGでは「動物福祉や社会教育」のテーマが多く
、WSやSMでは「研究、実験手技」や「動物施設管理」が多い、というような特徴を
持たせたプログラムが組まれていた。全体的に、最新の研究成果の発表ではなく、
動物実験に関わる幅広い実用的な問題を教育的な立場で取り上げたり、新たな問題
点を討議する企画が多く、出席者がそれぞれ自分にあった知識を得たり、情報交換
をする場という印象が強い。例えば、WSは有料(75〜160ドル)で、キメラマウスの
繁殖システム、麻酔法、IACUC(Institutional Animal Care and Use Committee,
研究機関に設置された動物委員会)のプロトコール作成やGLPへの対応等の問題点を
実例や解決法を中心に各々4時間をかけて解説し、SMでは霊長類の遺伝子治療や異
種移植等の動物実験の新たな問題や、改訂されたNIHガイドライン(NRC, Guide
for the Care and Use of Laboratory Animals, 1996)の実施状況も取り上げられ
ていた。感染病についてはHelicobacter を中心にPSで取り上げていた。ポスター発
表も実用的なものが多く、技術者が積極的に日頃の業務の一部をまとめるといった
内容のものが目についた。細分化され過ぎた最新の研究成果の発表よりも体系づけ
たテーマでの教育的な発表は、発表する側にとっても聴く側にとっても貴重な機会
のように感じられた。教育という点では、スライドやビデオコーナーの規模も大き
い。広い会場に設営された数十台の装置で、200種類を越えるビデオ、30種類のスラ
イドから好みのものを個別に見ることができる。もうひとつ見応えのあるものは、
機器展示である。大ホールに設営された300程のブースに飼育器材、飼料、動物、実
験器材、検査試薬等々、様々な関連企業の展示があるほか、動物実験に関連する団
体(ILAR:Institute for Laboratory Animal Resources, FBR:Foundation for
Biomedical Research, LAMA:Laboratory Animal
Management Association, ASLAP:American Society of Laboratory Animal
Practitioners etc.)のブースもあり、各々の活動の広報、普及に役立てていた。
目についた例としては、マイクロアイソレーションケージがいくつかのメーカーで
展示され、関心の深さが伺われた。また、動物実験に関する啓蒙活動として地元の
小学生たちを招待し、展示会場を自由に見せていた(小学生たちはお土産の動物ポ
スターやグッズがお気に入りのようで、動物実験への理解が深まったかどうかは定
かでない)。
 なお、会場入口での動物実験反対グループの抗議行動が激しく、参加者のチェッ
クが厳しく行われていた。黒ずくめの衣装をまとった数十名の活動家がプラカード
を持ち、叫声をあげながら出席者らを取り囲む場面もあったが、事前に察知してい
た学会側が、「決して相手にするな」と情報を流し、数十名の警官で入口を固めた
こともあり、大きな混乱には至らなかったようである。
 わが国でも、いろいろな学会で、その開催方法が少しずつ変わりつつある。学会
総会は、最新の研究成果の発表だけでなく、会員それぞれのレベルで学ぶ場所であ
るという考え方も重要ではないか、との思いを抱いて帰国した。みなさんはどうお
考えでしょうか?

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