日本実験動物医学会
認定獣医師制度案について
本学会の懸案である認定獣医師制度を確立するために、制度案を提案します。この
提案書に示しています暫定制度は平成10年5月に発足させたいと考えています。その
ためには平成10年4月の本学会総会で制度を決定しなければなりません。それまでに
、この提案書に対しての会員の皆様のご意見をお寄せ下さい。
ご意見の送り先
□郵便:(郵便番号記載の場合は住所不要)
〒980-8575 東北大学医学部附属動物実験施設 笠井憲雪
□FAX:022-717-8180 東北大学医学部附属動物実験施設 笠井憲雪
□認定委員会メーリングリスト:jalam-cert@iexas.med.osaka-u.ac.jp
□笠井個人のメールアドレス: nkasai@mail.cc.tohoku.ac.jp
日本実験動物医学会認定制度検討委員会
委員長 笠井憲雪
委 員 安居院高志、板垣慎一、黒澤 努、二宮博義、降矢強、毛利資郎、宮嶌宏
彰、
八神健一(五十音順)
目 次 (掲載順)
・A.認定制度確立へのプロセス
・B.制度の概要
・C.本制度実施までの暫定措置について
・日本実験動物医学会認定獣医師制度の提言(案)
・日本実験動物医学会創立認定獣医師制度(暫定制度)規程(案)
・別表1.創立認定獣医師資格評点基準(暫定JALAM点)の内訳
・日本実験動物医学会認定獣医師制度規定(案要旨)
・認定制度検討委員会における意見
A.認定制度確立へのプロセス
1.暫定制度の制定、追随して本制度の制定
2.暫定制度による創立認定獣医師の認定
3.創立認定獣医師の試験委員による試験問題の作成
4.本制度による認定獣医師試験の実施
5.本制度による認定獣医師の認定
B.制度の概要
1.名称は日本実験動物医学会認定獣医師とする。
2.認定獣医師は日本実験動物医学会認定委員会による資格審査と認定試験の合格者
をもって、認定される。
3.認定試験を受験しようと思う者は、予め書類審査により資格認定基準の一定以上
の評点(JALAM点と呼称)に達していなければならない。
4.認定試験は年一回実施する。
5.認定獣医師の資格は5年間有効であり、更新試験により更新することが出来る。
6.本制度の認定獣医師試験の試験委員は、認定獣医師および必要な専門家より選出
する。
C.本制度実施までの暫定措置について
1.本制度による認定試験の実施までの間は、暫定措置として暫定制度を設け、試験
を実施せず、資格審査により認定資格基準の一定以上の評点を得た者を認定する。
2.暫定制度による認定獣医師を「創立認定獣医師」と称する。
3.暫定制度は施行後3年以内に廃止し、本制度に移行する。
4.その他の内容は「日本実験動物医学会創立認定獣医師制度規程(案)」を参照。
日本実験動物医学会認定獣医師制度への提言(案)
わが国において実験動物に関わる獣医師は、これまで実験動物の飼育実験環境の改
善、微生物的遺伝的品質の向上、モデル動物の開発などにそれぞれの専門性を活か
し、個々には大きな貢献をしてきた。しかし、社会の動物福祉への認識が高まるに
つれ、実験動物の福祉への関心も高まってきており、大学や研究所等で行われる動
物実験が福祉の面からどのように管理されているのかが問われるようになってきて
いる。まず第一に、動物実験の当事者である研究者が、動物の福祉に則った実験方
法および飼育管理方法を執ることが求められる事は当然である。そしてそこには動
物と研究者の間に介在する第3者とでも言うべき動物実験の管理者が求められる。こ
の役割を担うことができるのが獣医師であり、獣医師の実験動物医学の知識、技術
を駆使した的確な動物実験の獣医学的管理が求められているのである。
動物実験は一般的には研究目的に沿って健康な動物に処置を施し、人工的に疾病を
作ったり、外科的障害を惹起させるものである。しかし、獣医学的管理処置は研究
目的を妨げてはならないという制約が存在する。このために動物実験の獣医学的管
理に携わる獣医師は、まず実験計画段階において予想される苦痛の評価と実験方法
の妥当性の評価を行うこと、実験実施段階に於いては、研究目的を妨げない範囲で
の最もよい苦痛の軽減法を施し的確な術後管理を行うこと、そして実験終了時には
、的確な安楽死法の実施または助言を行うことが求められる。さらに、実験動物飼
育管理施設の管理運営に関すること、研究者や技術者の教育訓練に関すること、法
規や社会の動向に関すること等の知識とそれに基づいた実践が求められ、加えて実
験動物学そのものの研究を行うことが求められている。これらの知識・技術・研究
を総称して実験動物医学と呼ぶが、これらの能力を身につけるためには、臨床獣医
学的知識と技術に加えて医学生物学的研究の方法の知識と経験、動物福祉に対する
明確な考えを身につける事が必要である。そしてこれらを通して実験動物の福祉を
達成することが獣医師の責務である。
この様に実験動物医学に携わる獣医師に求められる能力は膨大なものである。これ
らを個人の努力に求めることは不可能に近い。そこで、我々はこれらの能力を身に
つけるための卒後研修システムを確立すると共に、実験動物の福祉を求める社会の
期待に応える獣医師の水準を保証するために、日本実験動物医学会に認定獣医師制
度を制定する。
日本実験動物医学会創立認定獣医師制度(暫定制度)規定(案)
1.目的
日本実験動物医学会は、「認定制度の提言」の主旨を達成するために認定獣医師制
度を設け、試験と資格審査による認定制度(本制度)を確立するが、それまでの暫
定措置として、暫定制度により「創立認定獣医師」を認定する。
2.認定委員会
(1)創立認定獣医師を認定するために認定委員会を設置する。
(2)委員長は学会幹事の中から会長が指名し、委員は学会会員から委員長が指名す
る。
(3)任期は暫定制度が施行している期間とする。
3.資格審査
(1)創立認定獣医師の認定を受けようとする者は、認定委員会による書類による資
格審査に合格しなければならない。
(2)資格審査の基準は次のとおりとする。
(い)獣医師であること。
(ろ)出願時に5年以上継続しての学会会員(実験動物医学研究会および実験動物医
学会)であること。
(は)別表1の創立認定獣医師資格評点基準による合計点が80点以上であること。
(3)資格審査料は10000円とする。
4.認定
(1)資格審査合格者は認定を受けるために認定料を支払わなければならない。
認定料は10000円とする。
(2)創立認定獣医師に適格でない事由が生じた場合は、認定を取り消すことがある
。
(3)創立認定獣医師の資格の有効期間は認定後5年とする。
5.更新
有効期間終了後さらに認定を受けようと思う者は本制度による認定制度に則り、更
新を受けなければならない。
6.その他
(1)この規程は施行後3年以内に廃止し、本制度に移行する。
(2)この規程は平成10年5月1日から施行する。
別表1.創立認定獣医師資格評点基準(暫定JALAM点)の内訳
背景資格、論文発表、学会活動、研修会の4種別からなる。
1.背景資格:最大20点
実験動物医学分野での経験が10年以上ある 10点
研究機関で実験動物医学に関する指導的役割を行っている 10点
博士号の取得者 10点
2.論文発表:最大30点
生命科学関連論文(筆頭著者)6点/編
同(共著者)2点/編
3.学会活動:最大20点
実験動物医学会および実験動物医学研究会(JALAM)、実験動物学会(JALAS)
JALAM会員歴1点/年
JALAM/JALAS学会参加 1点/回
JALAM/JALAS学会発表(筆頭著者)3点/回
JALAM/JALAS 同(共著者)1点/回
4.研修会:最大30点
JALAM主催研修会およびJALAMが認めた研修会への参加
5点/回 同 指導的参加(教育セミナー講師) 7点/回
以上合計最大100点
日本実験動物医学会認定獣医師制度規定(案要旨)
日本実験動物医学会認定獣医師制度規定(本制度)については暫定制度発足後に制
定する。
1.目的
2.認定委員会
認定委員会の設置。認定委員長は学会幹事の中から会長が指名。委員は認定獣医師
から委員長が指名。任期2年再任重任は妨げない。認定委員会に試験委員会をおく事
が出来る。
3.認定試験
・認定の希望者は書類審査と認定試験に合格しなければならない。
・書類審査基準:獣医師であること、5年以上の継続学会会員であること。書類審査
の「認定資格基準の評点(JALAM点)」が80点以上であること。学会活動、研修会参
加、論文発表を行っていること。
・試験は筆記試験と実技試験
受験料は10000円
4.認定
認定料の支払い10000円。5年毎の資格更新。認定の取り消しの権限。
5.その他
制度の改変は理事会の議による。
○試験委員会細則
委員は定数15名以内。任期2年、再任可。委員長は委員の互選による。
○認定試験大綱
試験の方法・内容は試験委員会が検討。試験は資格試験であり、合格者数をあらか
じめ定めない。試験は年1回1日。
○更新細則
・5年毎の資格更新。
・更新基準:更新申請時の継続会員であること。過去5年間の「更新のための認定資
格基準の評点」が100点であること。
・更新料20000円。
認定制度検討委員会における意見
(1997年7月〜10月)
1.
(1)認定制度の目的(何のために制度を作るのか)および認定を受けた人のメリッ
ト等を明確にしておく事が重要と思います。5年後の更新時にこの制度のメリットが
ないと更新者が減る可能性がある。
(2)現在は何のメリットもないと思われている認定制度(実はわれわれの実験動物
医学の実力が上がるということが最大のメリットと私は考えていますが)が、将来
どのように活用されるのか、目標とか理想像を描いておくことも必要だと思います
。思いきり理想的なことを言えば、例えば、1)認定された獣医師の実力がダントツ
で大学・研究所で認定獣医師であることを条件に募集されるようになる、2)動物実
験を行う際には法律で、獣医師と実験動物技術師免許保持者を届けなければならな
い(この場合も実力が認知されていれば必然的に認定獣医師となる)、等のように
。
(3)この制度が社会的認知を受けて認定を受けた人にも目に見えるメリットとして
現われてくるのは20年先でよいと思っています。すなわち今獣医学部(学科)の学
生が40歳台になった頃、今議論している先生方が皆定年退官になった頃です。その
頃までに外国からの圧力、一般市民の関心の高まり、マスコミの吹聴等で社会的に
実験動物専門家の獣医学的管理の必要性が高まってくるのではないでしょうか。そ
の時点でそれでは誰がその任にふさわしいかという話になったときに、20年間もの
長きにわたり地道に自主的認定を行ってきた当制度が脚光を浴びるのではないでし
ょうか。
(4)米国のこの制度の歴史を見てますと、おそらく現在こうした委員会で議論して
いる初代の認定獣医には上記メリットが訪れることは期待できません。次世代、じ
じ世代のためにやっているようなものと私は思っています。
2.「獣医師」の資格をこの認定の前提とするか否か。つまり獣医師でなくても一定
の評点に達したもの(暫定期間中)、または評点および試験に合格したもの(本制
度移行後)を認定するか否か。
(1)認定を受ける人は獣医師に限るということでよいと思う。但し、認定する側、
認定委員には認定獣医師の他に外部の人が入ってもよいのではないか。すなわち、
大学の獣医学部の実験動物学講座の主任教授が獣医師でない場合がいくつかの大学
で現実にある。しかし、現に獣医学生がその方々から実験動物の講義を受けている
ので、そういう方々も認定委員もしくは試験委員、インストラクターなどとしてこ
の制度に参加していただく必要がある。
3.獣医師会とは連携をとっていくことが必要であると思います。具体的には獣医師
会の理事の方に本制度の意義を説明して理解して戴くということになりましょうか
。もっと積極的な関わりあいとしては、認定獣医師になる条件として、獣医師会に
加入するというのを入れるということもあるかと思いますが。
4.認定獣医師と専門獣医師(名称の問題)
founder は認定獣医として出発し、最初の5年目の見直し以降専門獣医と称し、やが
て指導獣医制度でも設ける。
認定獣医の英名はJapanese Diplomate of Laboratory Animal Medicine
指導医はJapanese Fellow of Laboratory Animal Medicine
5.
(1)現在の実験動物医学会を見てみますと、学会の折にシンポジウムの代わりに教
育セミナーをやっています。セミナーの中にトピックスを入れて若干お茶を濁して
いますが、学会では研究中心のシンポジウムを開催すべきです。第一期の認定獣医
師を出すまでは仕方がないかと思いますが、認定制度の発足と同時に学会での教育
セミナーはやめて健全な研究中心のシンポジウムにすべきと考えます。どうしても
学会と同時にやらなければならないのであれば前日また夜に開催しサテライトとす
べきです。制度が発足した後は例えば夏期集中セミナーのように1週間位しかる場所
で講義と実技の集中授業をやるのがよいのではないかと考えています。
(2)わが国で不足しているのは科学的知識、情報を交換する場ではなく(これらは
他の学会でもかなりのところまでできている)技術を鍛える場ではないかと思って
おります。これはwet handを含むworkshopで行うことを提案します。上手なプログ
ラムをくめば(オルガナイズする側は大変ですが)短時間でも効率よくかなりの技
術が伝達されるものと考えております。AALASではこれが盛んで参加費は結構な額で
もいつも満員御礼となっているようです。
6.制度案をまとめるにあたり、この制度の意義や目的を明確にした前文を作ってお
かないと、形が出来て魂がないままさまよい続けることを危惧します。この制度が
広く認知されるようになるまで、「大義名分」や「御題目」は重要で、それを読ん
でこの制度のイメージが誰にでも分かることが必要と思います。
7.「別表1.創立認定獣医師資格評点基準(暫定JALAM点)の内訳」の「2.論文発
表」における提出論文は現行案は「生命科学関連論文」となっているが、「実験動
物学関連」や「実験動物医学関連」にするなどの意見があった。
8.
(1)「3.学会活動」の会員歴おいて実験動物医学会および実験動物医学研究会(
JALAM)と実験動物学会(JALAS)が同点というのは納得できません。
(2)暫定措置というのは比較的年配の人からまず認定していこうということだと思
うのですが、 jalamの歴史が jalasに比べて浅いので、jalas も入れた方がよいの
では。
(3)jalas 以外にも疾患モデル学会や実験動物代替学会(名称が正確でないかもし
れない)もあり、また国外の学会もあります。本制度は jalam が基盤となっている
ので、jalam を高得点としその他の実験動物関連学会は申請者の判断で記入しても
らって、ボーダーラインのときのみ認定委員会で得点に入れるか否かを審査すると
いうのはどうでしょう。
9.審査料と認定料について
(1)金銭的なことですが、審査料と認定料あわせて2万円というのはこの制度の具
体的メリットがない状態で如何なものでしょうか。個人的には2万円は結構きついで
すよ。
(2)これはよくわからないなー。今、大阪で一晩のむと1万円くらいはでていきま
す。二晩だれかにつきあったと思えばこんなものではないでしょうか? 逆に採点す
る側の労力、事務手数料などもそろそろ計算してみても良いかもしれません。しか
しfoundation memberとなろうとする方たちは所詮ボランティアでやっていくしかな
いでしょうね。
(3)認定料等の算出は審査認定のための必要費用を算出してから決まるはずですが
、まだ具体的な費用については議論されていません。さらにこのお金を誰が管理す
るのか、どの様に使用されるかを含め、今後議論する必要があります。
追悼 板垣慎一先生の死を悼む
板垣慎一先生はかねてからご療養のところ、平成9年8月8日に永眠なされました。
先生は本学会の設立に貢献され、さらに理事として本学会の発展に寄与されました
。
ここに、先生の生前のご功績に対し、心から哀悼の意を表すと共に、ご冥福をお祈
りいたします。
先生は昭和58年東京大学大学院農学系研究科畜産獣医学専攻修士課程を修了された
後、山口大学農学部獣医学科助手として2年間奉職されました。昭和60年母校の大学
院博士課程に入学され、昭和63年同課程を修了し、農学博士の学位を取得された後
、国際協力事業団長期専門家としてアルゼンチン共和国ラ・プラタ国立大学獣医学
部に赴任されました。平成2年からは東京大学農学部獣医学科実験動物学教室助教授
として、教育研究に従事されました。
本学会では最近は学術集会担当理事として学会における講演会やシンポジウムの企
画から準備、開催まで一手にして下さり、さらには東京在住の理事として学会関係
の雑用をいつも快く引き受けて下さいました。また、平成7年に養賢堂から出版され
た「バイオメディカルリサーチマニュアルの第6巻・疾患モデル動物」、さらには平
成10年1月朝倉書店から出版された「最新実験動物学」に疾患モデル動物関係の原稿
を執筆され、先生の研究成果の一端を披露されています。
ご遺族には経子夫人と11歳から6カ月までの5人のお子さまがおれらます。突然に一
家の支柱を失われたご家族の悲しみと今後のご苦労は察してあまりあるものがあり
ます。また仕事もこれからというときの急逝で、誠に無念というほかありません。
安らかにご永眠されるようお祈りいたします。 (笠井憲雪)
なお、「故板垣慎一先生遺児育英基金」では残された遺児への育英資金を募ってい
ます。
ご賛同いただける方は下記へご連絡下さい。
〒113-8657 東京都文京区弥生1-1-1
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻実験動物学教室内
故板垣慎一先生遺児育英基金事務局
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