JALAM NEWS LETTER
実験動物医学
Japanese Association for Laboratory
Animal Medicine (JALAM)
No.18 / 2002.2
日本実験動物医学会
〒180-8602 東京都武蔵野市境南町1-7-1
日本獣医畜産大学実験動物学教室内
Tel.0422-31-4151(314)
URL http://www.adthree.com/jalam/
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主な内容
・ 第18回日本実験動物医学会(第133回日本獣医学会)
1.日本実験動物医学会教育セミナー
パネルディスカッション:「実験動物医学よりの総理府告示(実験動物基準)の見直し」
進行: 慶應義塾大学医学部 前島 一淑
2.総会
3.教育講演
「ヒトおよび実験動物のパルボウイルス感染」
筑波大学生命科学動物資源センター 八神 健一
4.一般講演
・関連情報案内(第133回日本獣医学会)
シンポジウム:「近未来の獣医学における動物を用いる実習教育の是非」
第1部:動物代替法の紹介
司会: 日本獣医畜産大学 高橋 和明
慶應義塾大学医学部 前島 一淑
・第19回日本実験動物医学会(第49回日本実験動物学会総会との合同開催)
1.パネルディスカッション
「日本における動物実験での苦痛の判断」
座長: 千葉大学大学院医学研究院 伊藤 勇夫
佐賀医科大学医学部附属動物実験施設 森本 正敏
2.教育講演
「パラインフルエンザウイルス感染について」
長崎大学医学部附属動物実験施設 大沢 一貴
・ 日本実験動物医学会理事選挙結果
・ 認定委員会から
・事務局だより
会費納入のお願い
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Contents
・ 18th JALAM Scientific Meeting in 133rd Japanese Society of Veterinary Science (JSVS) Scientific Meeting
Kawasaki, Mar. 30, 2002
1. Seminar
Panel Discussion: Revision of the Notice of the Prime Minister's Office "Laboratory Animal Standards" based on laboratory animal medicine
Program Director: Kazuyoshi Maejima
Laboratory Animal Center, Keio University School of Medicine
2. 2002 General Meeting of JALAM
3. Educational Lecture: Parvovirus infection in humans and laboratory animals
Ken-ichi Yagami
Laboratory Animal Resource Center, University of Tsukuba
4. Oral presentations
Other related symposium in the 133rd JSVS Scientific Meeting:
Kawasaki, Mar. 29, 2002
Propriety of practical training using animals in veterinary science in the near future
Part 1. Introduction of animal alternatives
Chairpersons: Kazuaki Takahashi
Nippon Veterinary and Animal Science University
Kazuyoshi Maejima
Laboratory Animal Center, Keio University School of Medicine
・ 19th JALAM Scientific Meeting (Joint Session with 49th JALAS Meeting)
Nagoya, June 22, 2002
1.Panel Discussion: Evaluation of pain in laboratory animals in Japan
(1) Judgment of animal distress in pain research using the Saga Medical School Guidelines for Animal Experimentation .
Masatoshi Morimoto
Laboratory for Experimental Animals, Saga Medical School
(2) A judgment of pain by animal experiment in public dental college.
Eiji Sagara
Animal Research Center,Kyushu Dental College
(3) Review and approval of animal research protocols and the degree of their animal distress in Keio University School of Medicine
Kouji Shimoda
Laboratory Animal Center, Keio University School of Medicine
(4) Criteria of research experiments in space.
Isao Ito
Department of Comparative Medicine and Laboratory Animal Center, Chiba University, Graduate School of Medicine and NASDA
2.Educational Lecture:「Parainfluenza Virus Infection」
Kazutaka Ohsawa
Laboratory Animal Center for Biomedical Research, Nagasaki University School of Medicine
・Election of Board Members of JALAM
・From the Accreditation Committee of JCLAM
・From the Executive Office
Request for Payment of Membership Dues
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第18回日本実験動物医学会(第133回日本獣医学会)
日時:平成14年3月30日(土)(9:00〜14:30)
場所:専修大学生田校舎
1.日本実験動物医学会教育セミナー:(9:00〜12:00)
パネルディスカッション
「実験動物医学よりの総理府告示(実験動物基準)の見直し」
進行 慶応義塾大学医学部 前島 一淑
話題提供者
第1 一般原則、第2 定義: 鍵山 直子(潟Oラクソスミスクライン)
第3 導入に当たっての配慮: 朱宮 正剛(東京都老人総合研究所)
第4 実験動物の健康及び安全の保持: 松田 幸久(秋田大学医学部)
第5 実験等の実施上の配慮及び終了後の処置: 黒澤 努(大阪大学医学部)
第6 危害防止: 吉川 泰弘(東京大学大学院農学生命科学研究科)
第7 生活環境の保全: 浦野 徹(熊本大学動物資源開発研究センター)
第8 実験動物生産者が採るべき措置、第9 補則、第10 適用除外:
日柳 政彦(鞄本医科動物資材研究所)
要旨(前島一淑)
昭和48年10月制定の「動物の保護及び管理に関する法律(動管法)」は、平成11年12月に「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」と改正されて平成12年12月1日より施行された。その付則第2条には、施行後5年以内を目処に検討を加えて所要の措置を講ずるとされている。この条文は「動物愛護管理法」の改正を保証するものではないが、動物側に立つ人々からは動物愛護を一層促す方向での法改正が求められており、とくに「動管法」に基づく昭和55年3月の総理府告示「実験動物の飼養及び保管等に関する基準(実験動物基準)」の見直し、あるいは新しい「動物実験法」の策定の要望が強い。
研究者側の自主規制が評価されたことも与かって、実験動物に関する「動管法」第11条は1字1句の改正も無く「動物愛護管理法」に引き継がれたけれども、実験動物医学の立場からは多少の修正があってもよかったという意見も少なくない。とくに、実験動物福祉に関する国際的な調和を重視すれば、「実験動物基準」には見直すべき箇所があるといえよう。
そこで、実験動物医学あるいは獣医学的管理の視点から現行の「実験動物基準」に検討を加え、将来的には、その議論に基づいて「動物愛護管理法」の見直しを考えて見たい。議論を活発にするために、まず、かねてから「実験動物基準」に対して発言(必ずしも代表的意見ではない)されておられる会員の中から7人を選び問題点を指摘して頂き、フロアの方々と一緒になって賛否両論を戦わせる集会としたい。
なお、同じ条項について複数のパネラーが発言(話題提供)しても煩雑になるだけなので、指摘する条項を以下のように割り振った。パネルの進行は前島が担当する。
第1一般原則、第2定義:鍵山直子、第3導入に当たっての配慮:朱宮正剛、第4実験動物の健康及び安全の保持:松田幸久、第5実験等の実施上の配慮及び終了後の処置:黒澤努、第6危害防止:吉川泰弘、第7生活環境の保全:浦野徹、第8実験動物生産者が採るべき措置、第9補則、第10適用除外:日柳政彦
限られた時間で結論を出すことは到底困難であるから、今回の討議を踏まえてこの問題に関する作業委員会を本学会内に設け、日本実験動物医学会とし「実験動物愛護管理法」ならびに「実験動物基準」の見直し提案を行うような方向に議論が修練できればよいと考えている。
2.総会(12:00〜12:30)
3.教育講演(13:30〜14:30)
座長 熊本大学動物資源開発研究センター 浦野 徹
「ヒトおよび実験動物のパルボウイルス感染」
八神 健一
(筑波大学生命科学動物資源センター)
実験動物の感染症は、動物実験を障害する要因として排除すべき対象である
と同時に、ヒトの感染症のモデルとしての可能性を持つ。ここでは、parvovirus感染を両側面から取り上げ、動物実験への影響、ヒトおよび齧歯類parvovirus感染の病態の比較、病原性の発現機構、モデルとしての可能性を紹介する。
parvovirusは最小のDNAウイルスで、ウイルス複製に宿主因子を巧みに利用している。非構造タンパク(NS)とキャプシドタンパク(VP)を合成し、初期調節タンパクであるNSは宿主因子との相互作用を介して宿主遺伝子の発現を修飾し、病原性と強く関連する。ヒトparvovirus(B19)は小児の伝染性紅斑、胎児水腫、貧血等を起こすほか、関節リウマチとの関連も疑われ、成人では不顕性感染が多い。ウイルスは胎盤を通過し、胎児の造血系や心筋で増殖し胎児死亡の原因となる。新生児では免疫寛容状態となり骨髄にウイルスが潜伏し造血障害や自己免疫病を起こす可能性がある。成人で多発性関節炎から関節リウマチに移行する例もあり滑膜でB19ゲノムやタンパクが示されている。齧歯類parvovirusは、prototypeとしてMVM、RV、H-1が知られ、近年、流行している新型parvovirusはリンパ系への親和性が強く不顕性感染を起こす。prototypeの感染では胎仔に垂直感染し、胎仔死亡や新生仔の脳炎、肝炎等の病原性を示す。ウイルスは造血系組織、小脳、小腸上皮、腫瘍など細胞分裂の盛んな細胞で増殖する。また、RVはラットに感染し糖尿病を誘発するが、膵β細胞への感染はなく、β細胞特異的なT細胞が活性化しβ細胞を破壊すると推測される。このように、parvovirusは致死的ではないが多彩な病態と関連があり、病原性発現には初期調節タンパクNSと宿主因子を介した宿主遺伝子の発現修飾の関与が疑われる。
4. 一般講演(14:30〜15:30)
(5題)
第133回日本獣医学会における関連情報案内
日時:平成14年3月29日(金)(16:00〜 )
場所:専修大学生田校舎3号館−351
シンポジウム:「近未来の獣医学における動物を用いる実習教育の是非」
第1部:動物代替法の紹介
司会: 日本獣医畜産大学 高橋 和明
慶応義塾大学医学部 前島 一淑
はじめに:シンポジウム第1部の趣旨 高橋 和明(日本獣医畜産大学)
臨床教育 丸尾 幸嗣(東京農工大学農学部)
生理学、薬理学、毒性学教育 金子 豊蔵(国立医薬品食品衛生研究所)
コンピューターを利用した教育 二宮 博義(麻布大学獣医学部)
追加発言、討議
おわりに:シンポジウム第2部へ 前島 一淑(慶応義塾大学医学部)
企画趣旨(高橋和明、前島一淑)
数年まえから兆しはあったが、動物愛護の側に立つ市民団体から農工大に対する家畜解剖学実習に関する抗議は、将来の獣医学教育と研究における動物利用に関するわが国の獣医学関係者の関心を大いに高めるという皮肉な結果となった。教育を含む動物実験の抑制を求める世界的な趨勢からすれば、本学会はもっとまえから対応を考えておくべきであったけれども、その動きは、限られた人々を除いて必ずしも活発でなかった。しかし、第133回学会においてこの問題が取り上げられ、その続編(第2部)がつぎの第134回学会において予定されることになった。
通常の議論の進め方では、獣医学教育における動物利用の可否に関する意見を幅広く紹介、検証し(総論)、それを受けて具体的な方法の検討(各論)に入る流れであるが、この問題に関する本学会員の理解は必ずしも十分に深まっているとは思われないので、動物を用いない獣医学教育の可能性という具体的な問題(各論)を先に扱う。
薬学、看護学、毒性学等を含む医学領域の教育や研究の場では、獣医学領域のそれらよりもかなり早い時期からこの問題は取り上げられ、技術的な検討も進められて部分的には実践されている。それらの流れを踏まえつつ、今回のシンポジウム(第1部)の演者は獣医学教育に直接関与しておられる方々を中心に構成した。
わが国では、動物代替法を用いた系統的な獣医学教育はほとんど実施されていないし、その経験をもつ者も極めて少ないから、第1部では、諸外国で実施されている方法を紹介し、話題を提供するに止まることになろう。この問題に関する情報をもつ方々がおられたら、フロアから積極的な追加発言をお願いしたい。
第1部では、これらの動物代替法が獣医学教育において実用的か否かの討論は必要であるが、獣医学教育における動物代替法の利用の理念に関する議論へ発展させることは避けたい。それは第2部(総論)で予定されており、細部は第134回学会を主催する岐阜大(司会予定は鈴木義孝、前島一淑)と検討中である。
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第19回日本実験動物医学会
(第49回日本実験動物学会総会との合同開催)
場所:名古屋国際会議場
日時:5月22日(水)
1.パネルディスカッション
「日本における動物実験での苦痛の判断」
日時:5月22日(水) 10:00〜12:30
座長 伊藤 勇夫(千葉大学大学院医学研究院)
森本 正敏(佐賀医科大学医学部附属動物実験施設)
(1) 佐賀医科大学における動物実験の苦痛の判断基準で、
痛みに関する動物実験を審査する
森本 正敏
(佐賀医科大学医学部附属動物実験施設)
国立大学動物実験施設協議会(国動協)の調査において、全会員校が何らかの形で動物実験計画書の審査を実施している。それらの計画書のなかには動物実験において動物が受ける苦痛の判断の記載項目があり、私の知る限りでは、会員校間において苦痛の判断基準にかなりの共通点がある。それは5段階(1〜5あるいはA~E) に分かれており、右方にいくに従い苦痛の程度が激しくなっている。
動物実験は実験対象動物に痛みや苦痛を与えないようにしなければならないが、「痛みの研究」は「痛みを生じさせること」が研究の出発点になる場合が多い。近年、「痛みの研究」は、基礎・臨床共にその目的が難治性疼痛の治療を目的としたものが多い。
(資料)日本疼痛学会の過去3年間の動物実験による演題
平成11年(総演題数〜79題)
ラット〜vivo:25,vitro:9、マウス〜vivo:6,vitro:1、他〜vivo:2 計43題
平成12年(総演題数〜67題)
ラット〜vivo:26,vitro:6、マウス〜vivo:7vitro:0、他〜vivo:1 計40題
平成13年(総演題数〜78題)
ラット〜vivo:22,vitro:7、マウス〜vivo:5,vitro:1、他〜vivo:3,vitro:2 計40題
「資料」でみられるように、動物実験のうちin vivoの実験が圧倒的に多い。これらの多くはラットおよびマウスを難治性疼痛モデルとして作成している。ヒト臨床における難治性疼痛(経験していないヒトには理解できない痛みだそうです)を動物に与えることは、動物実験計画書に利用されている苦痛のカテゴリーでは「カテゴリーDか4」に相当すると考えられるが、ヒトの痛みから推測すると「カテゴリーEか5」でも妥当ではないかとさえ思われる。しかし、それでは「痛みの研究」はできないことになるが、国際疼痛学会は1983年に「国際疼痛学会の動物実験に関する倫理委員会の指針」を発表した。国際疼痛学会誌「Pain」に投稿するにはこの指針を遵守することが投稿規定に記載されている。この指針の日本語訳(下記)は学会当日に会場で配布する予定である。
Zimmermann M.,Pain 16:109-110 (1983)
横田敏勝(訳)、ペインクリニック12:321-327(1991)
(2)歯科大学(公立)における動物実験での苦痛の判断
佐加良 英治
(九州歯科大学動物実験施設)
九州歯科大学は単科の歯科大学であり、動物実験の申請数はさほど多くない(年平均70〜80件)ため、月に1回、定期的に動物実験委員会を開催し動物実験計画書の審査を行っている。
1995年度〜2000年度の総審査件数は435件であり、その内承認されたものは433件で2件が未承認となっている。承認されたもののうち、再提出・再審査後に承認されたものは23件、内容の加筆・修正を求めたもの108件である。
苦痛の判断は「動物福祉のためのサイエンティストセンター」による「倫理基準に基づいた動物実験の分類」を中心に行っている。いわゆる米国・カナダのカテゴリーによる方法を参考に行っている。基本的な苦痛の判断は以下を基準にしている。
1)カテゴリーAに属する実験については、分類の定義を満たしていると判断された場合は、承認可とする。
2)カテゴリーBに属する動物実験については、分類の定義を満たし、妥当であると判断された場合は、承認可とする。
3)カテゴリーCに属する動物実験については、申請された時点での実験レベルから妥当であり、かつ得られる結果が重要であると予測された場合は、承認可とする。
4)カテゴリーDに属する動物実験については、苦痛を和らげる処置をすることによってカテゴリーCに下げることができる場合、また、苦痛を和らげる処置がとれない場
合であっても得られる結果が重要であると予測された場合は、承認可とする。
5)いかなる方法を講じても重度の苦痛を和らげることが出来ない場合(カテゴリーE)は、承認不可とする。
歯科領域の動物実験は歯牙の移動や切削、骨の延長、抜歯、インプラントの植立など硬組織での実験が多いため、一つ一つの実験期間が長く、また疼痛をともなうものが多く、実験承認に苦慮することがある。これまでの審査の中で、カテゴリーC以降の実験では、実験に使用する匹数、実験計画の内容、動物福祉に関する項目で内容の加筆・修正を求めたものが多かった。このカテゴリーをもとにした苦痛の判断は通常の審査を行う上では有用であるが、カテゴリーの判断で迷う部分も少なくない。これまでに苦痛の判断で難しいと思われたのは、実験内容そのものはカテゴリーCのレベルであるが、実験手技が難しく(マイクロサージェリーによる移植)、実験者の腕が未熟である場合には供試動物が術後に死亡することになる事例である。これ以降、実験計画申請者個人の実験技術レベルまで判断材料に含めるようになった。また、口腔内を処置する実験が多いため、術後に摂水や摂餌が円滑に行われない事例も見られた。よって、実験処置後の摂水や摂餌が円滑に行われるか否か、術後の疼痛緩和への配慮がなされているかも重要な判断基準となっている。
疼痛関連の実験についてはpain,16(1983)109-110のガイドライン(Ethical guidelines for investigations of experimental pain in conscious animals)をクリアしたものが審査対象となっている。
また、本学は公立大学であるため、動物実験計画書を始めとするすべての動物実験に関する様式、動物実験施設の管理運営に用いた書類は情報開示の対象となっている。そのため実験計画書の審査では、常に情報開示を念頭におき審議を行っており、開示請求があった場合でも速やかに対応できるように準備している。
(3)慶應義塾大学医学部における動物実験計画の審査と苦痛の判断
下田 耕治
(慶應義塾大学医学部動物実験センター)
慶應義塾大学医学部では昭和61年に実験動物委員会(以下、動物委員会)が組織され、昭和63年に動物実験ガイドラインが作成された。この(旧)ガイドラインでは、各研究者が立案した動物実験計画が、動物福祉上の問題が生じる恐れがある場合は動物委員会に意見を求めることと記述されている。従って、研究者が動物福祉上の問題が生じないと判断すれば動物委員会に意見を求める必要は無いのであり、動物委員会側は、意見が求められていないのであるから医学部では動物福祉上問題のある実験は行われていない、と判断してきた。外国の雑誌に論文を投稿するときに、編集者から当該動物実験が動物委員会から承認されたものであるかどうかについて問い合わせがある場合などに限り、意
見が求められ承認証が発行されてきた。
しかしながら、愛玩動物(ペット)として飼われてきたイヌやネコが伴侶動物(コンパニオンアニマル)として人間の精神活動に深く関わり、動物福祉という概念が国内でも広く認識されるようになるにともない、医学部でも動物実験の実態をより正確に把握し、動物福祉についてより積極的な姿勢を示すことが社会のニーズにあった方向であると認識されるようになった。そこで、平成9年に新しいガイドラインが制定され、そこに動物実験計画の事前審査制が明記された。動物実験計画の審査は予備審査委員会の委員8人と動物委員長および動物センター長の計10人で行い、最終的に動物委員会において承認される。審査委員会発足当時は積極的に審査を行って頂けたが、現在では私たち獣医師など一部の審査委員が事前審査で意見を返信するにすぎない。事前審査制が軌道に乗った現在では、少数の獣医師が予備審査を行い、そこで問題が生じた計画については実験責任者と連絡を取り合い、修正や改善をお願いする方が、多人
数で最初から審査するよりも効率的であるのかもしれない。
実験計画の審査で用いられる苦痛の基準は「動物の苦痛の分類(Categories of Biomedical Experiments Based on Increasing Ethical Concerns for Non-human Species)」(Scientists Center for Animal Welfare編)である。外科手術、腫瘍移植、臓器障害モデルなど動物に相当な苦痛を与える恐れのある実験処置が計画に含まれている場合は、実験目的・方法の項目を詳細に記載して頂く。この欄には科学研究費計画調書のように研究の重要性についてのみ記載してくる例が往々にしてあるが、そうした場合は動物に対してどの様な処置を実際に施すのかを記載するように通知する。外科手術の場合は麻酔薬の種類、経路、量、追加する頻度、処置の時間、処置後の管理など、腫瘍移植の場合は移植してか
ら終了までの期間などについて具体的に記入して頂く。
これらをもとに苦痛の程度を判断するが、2000年度は上記の分類でカテゴリーB: 61、C: 79、D: 63、2001年度がB: 45、C: 46、D: 60件が承認されている。カテゴリーEは当然ながら1件もない(当医学部ではAは対象外)。また、これ
までに苦痛の程度がもとで退けられた例はない。
動物実験計画書を書いて苦痛の程度を自己判断することは、動物実験が動物に苦痛を与える行為であり、いわゆる4(3)Rを実践しなければならないことを研究者に自覚して頂くために有用であると思われる。こうしたことを長く継続的に行っていけば、研究者の意識が少しずつではあるが向上して行くものと
信じている。
(4)宇宙における国際公募実験の苦痛の判断
伊藤 勇夫
(千葉大学大学院医学研究院(兼)宇宙開発事業団 宇宙環境利用研究センター)
広大な宇宙空間を人工衛星で探査し、人類が宇宙の他の惑星に向かう計画の実現を目指し、遠くない将来にも一般の人が短期の宇宙旅行するのも夢ではない時代になるかという期待もある。宇宙環境での医学では大気圧のレベルからはずれた微小重力や過重力下等の環境に置かれた生体の平衡器系、循環器系、筋肉骨格系等の変化、影響を探知する研究が進んでいる。日本からも既に国際公募で審査をパスしたラットを用いた平衡器系と筋肉骨格系の2テーマが採択されており、近い将来米国か他の国の宇宙船に搭載され、帰還後の臓器サンプルの取得、検索が予定されている。
宇宙開発事業団(NASDA)の動物実験委員会は10名(委員長 宇宙環境利用研究センター長、外部委員6名)で構成されており、現在の委員の専門別内訳は医学4、獣医4、理系2名である。NASDAとしては国際協調下の研究の進展を前提に外部の専門家に委嘱して米国航空宇宙局(NASA)のものなどを参考に動物実験ガイドラインを作成し、平成13年に機関として制定された。動物実験委員会ではガイドラインをもとにして各委員が専門の立場から宇宙医学、宇宙環境利用等に関する種々の公募テーマの審査が実施されてきた。また各種微小、過重の重力負荷実験における動物の受ける影響についてNASDA自身でも基礎データの蓄積、収集活動の一助として現在落下塔を使用した短時間の微小重力を体験したラットの心身への影響を調べる実験を行っている。
宇宙での実験が地上実験と異なる点は大気圏から脱出する際に数Gとされる過重力
を受け、それに続く無重力で放射線が飛び交う過酷な環境下の生活が設定されていることにある。その環境下での実験処置による負荷への苦痛がさらに伴うことも想定される。微小重力下での条件を模した代表的な地上実験例としては落下塔実験、飛行実験、尾部懸垂実験など、過重力下のモデルとしては旋回腕、遠心装置などを利用して研究が行われている。微小重力環境を作り出すモデルとして汎用されている尾部懸垂の作成方式にも研究者によってそれぞれ創意工夫があり、倫理面からのみ論ずることには議論がある。微小または過重力状態に置かれただけでも、動物への影響の有無が身体に直接侵襲が加わる苦痛とは異なるものなのかこれら設定の異なる重力環境下で行われるこの種に実験では動物がどの程度の苦痛やストレスを受けているかを明確に表現した手法は提示されていないのが現状だろう。微小重力下での生体の反応を心拍数、血圧等の生理学的データや行動をビデオ収録し心理学的に解析し、実験中に採取した代謝物質等の生化学的及び組織学的にも検索し、変化を追究し苦痛を総合的に評価する試みも行われている。
宇宙環境医学の実験では被験個体が専用のカプセルや装置の中にあらかじめ格納され宇宙環境に似た状態に設定した上で実験が実施される場合が多く、直に生体からリアルタイムで宇宙環境での固有の苦痛として確認し、その程度を評価する科学的に説得力のある方法を示すことは容易ではない。
2.教育講演
「パラインフルエンザウイルス感染」
日時: 5月22日(水) 13:30〜15:00
座長 浦野 徹(熊本大学動物資源開発研究センター)
「パラインフルエンザウイルス感染について」
大沢 一貴
(長崎大学医学部附属動物実験施設)
パラインフルエンザウイルス(PIV)は、モノネガウイルス目、パラミクソウイルス科、パラミクソウイルス亜科に属するRNAウイルス群であり、現在では、おもに1型、3型より構成されるレスピロウイルス属(Respirovirus) および2型、4型を含むルブラウイルス属(Rubulavirus) に大別されている。パラインフルエンザウイルスという呼び名は、症状がインフルエンザに類似した呼吸器疾患であること、およびウイルス粒子の形状やHA(Hemagglutination)/ NA(Neuraminidase)活性がインフルエンザウイルスのそれと類似することから与えられたものであり、この名をもつ一群が遺伝子レベルで見ると必ずしも同一群を構成しないことは明白である。たとえば、ヒトのムンプスウイルス(MuV, おたふくかぜ)やトリのニューカッスルウイルス(NDV)は、ルブラウイルス属の主要なメンバーであり、PIV2型は1型や3型よりもMuVやNDVにずっと近縁であるといえる。
げっ歯類を中心とした実験動物学の分野で最も影響の大きいPIVは、mouse PIV1型 (Sendai virus, mPIV1)であろう。しかし、近年の衛生管理の向上により、マウス、ラット、モルモットの繁殖コロニーにおいては mPIV1感染事故はきわめて少なくなっている。また、小規模の実験群のような若齢の高感受性個体の少ないコロニーでは、感染事故が起こったとしても、感染個体の抗体上昇や移行抗体の上昇とともに、コロニーからウイルスが自然に消失することも少なくない。mPIV1 に最も近縁のウイルスは、human PIV1型(hPIV1)で、核酸レベルでおよそ75%の相同性をもち、抗原性も強く交差する。
近年、モルモットやラットのコロニーにおける PIV3型様ウイルス感染が話題になっている。当施設では、1993年にモルモットのコロニーよりPIV3型様ウイルス(hPIV3-gp)を分離し、タンパク質および遺伝子レベルで解析を行った結果、human PIV3型(hPIV3)に酷似することが明らかになった(1, 2)。PIV3型には、hPIV3のほかに bovine PIV3(bPIV3)が知られており、両者間の相同性は75%程度にすぎず、P遺伝子領域のRNAエディティングのフレームの違いからもそれぞれ独立した種として認められている。これに対してhPIV3-gpは、hPIV3とは核酸レベルで約97%もの相同性があり、流行株間程度の差でしかないと判断された。米国CDCのDr. Erdmanは、この hPIV3-gpについて、“HNタンパク本来の終止コドンがに置換し、C末端がアミノ酸2つ伸長しており、他の100株以上のhPIV3にはない珍しいケースであり、分子系統樹から近年ヒトで流行した株とはやや異なっている” とコメントしている(私信)。これらのことは、ヒトからモルモットにhPIV3が感染し、しばくの間コロニー内で維持され今日に至っていることを示唆しており、このような reverseズーノーシス(anthroponosis) により配慮すべきであると考えている。
いっぽう、成熟ラット、モルモットを用いた hPIV3-gpによる経鼻感染実験結果から、1) ラットでは、ウイルスはIFA抗体価上昇とともに(8-10 dpi)肺からすみやかに排除され(nested-PCR(-))、逆に抗体上昇がない場合はそれ以降も肺に存在する(2/3匹)にもかかわらず、肉眼病変を認めないこと、2) モルモットでは、抗体上昇の有無にかかわらず多くの個体でウイルスが3-4 dpiで肺からすみやかに排除されるものの、なかには8 dpi 以降肺の肝変化を呈する個体がいる(>1/10匹)こと、などが明らかになっている。
(参考文献)
1. Genetic characterization of parainfluenza virus 3 derived from guinea pigs. J. Vet. Med. Sci., 60(8), 919-922, 1998
2. Isolation of a parainfluenza virus type 3-like agent from guinea pigs. Acta Med. Nagasaki., 46(3-4), 15-18, 2001
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日本実験動物医学会(平成14年度〜平成16年度)理事選挙結果について
選挙管理委員長 宮嶌 宏彰
さる2001年4月4日、東京農工大学農学部において開催されました、日本実験動物医学会平成13年度総会において、前島一淑理事長から次期の平成14年度〜平成16年度の理事を選出するに当たって、叶V日本科学の宮嶌宏彰会員が選挙管理委員長を担当するように指名を受けました。
宮嶌会員は直ちに組織作りに取りかかり、九州地区の熊本大学の大杉剛志会員、鹿児島大学の鈴木秀作会員、大分大学の万年和明会員、及び宮嶌宏彰会員の4名からなる選挙管理委員会を組織いたしました。
2001年6月1日、理事選挙細則に従って、日本実験動物医学会各会員に理事候補者の推薦を文書で呼びかけました。
2001年8月31日までに事務局に推薦状を集中した結果、推薦者会員17名、被推薦者会員12名でした。2001年9月12日〜10月1日の間、選挙管理委員4名の持ちまわり開票並びに被推薦者の確認作業の結果、理事選挙細則に基づき、次期理事候補者として8名の会員を選出いたしました。
その後、選出された次期理事候補者8名の中から日本実験動物医学会会則(理事会運営細則2.)に基づき7名の会員を選出する作業に取り掛かりました。
各会員に2002年1月14日までに事務局宛に投票を集中するように文書で依頼し、1月17日に叶V日本科学において選挙管理委員の大杉剛志会員、鈴木秀作会員、宮嶌宏彰委員長立会いのもとに、日本実験動物医学会理事選挙の開票を行いました。万年和明会員は委任され、当日は参加されませんでした。
開票の結果、投票総数103票、うち有効投票102票、白票1票で、以下の7名の会員が当選となりました(アイウエオ順)。
有川 二郎 (北海道大学)
浦野 徹 (熊本大学)
大和田 一雄 (山形大学)
笠井 憲雪 (東北大学)
黒澤 努 (大阪大学)
斎藤 徹 (日本獣医畜産大学)
前島 一淑 (慶応義塾大学)
以上
・ 認定委員会
平成13年度日本実験動物医学会認定獣医師審査結果の発表
(平成14年3月25日付け)
阿部 敏男(認定第059号)
梶原 典子(認定第060号)
中井 伸子(認定第061号)
(認定獣医師認定委員会)
初めての日本実験動物医学会認定試験を実施
今回、初めての試験による認定審査が行われました。また、本試験の実施に先立ち模擬試験も実施されました。
模擬試験の実施
昨秋10月7日、盛岡での獣医学会開催時に模擬試験を行いました。これは、認定試験が初めての試みなので受験者に問題の傾向を知らせることと試験を実施する試験小委員会の予行演習という二つの観点から行われたものです。当日は12名(うち4名が認定獣医師の協力受験)の方が受験され、試験小委員会としましては本試験実施のための貴重な情報を得ることができました。御協力いただいた方々に御礼申し上げます。模擬試験問題、解答、受験者のアンケート結果、解答率などはhttp://www.med.nagoya-cu.ac.jp/animal.dir/mogi.htmlに掲載されております。JALAMホームページ(http://hayato.med.osaka-u.ac.jp/index/societies-j/jalam-j.html)からも閲覧することができます。
本試験の実施
初めての認定試験は平成14年1月27日、慈恵会医科大学で実施されました。認定審査を申請された方々のうち、資格単位基準を満たしている3名の方が受験しました。当日は関東地方は雪の予報で、交通機関の乱れなどで地方から出てこられる方に不利にならないかと心配させられましたが、天気はそれほど荒れることもなく、試験は無事終了いたしました。採点の結果3名とも十分な点数を獲得され試験小委員会としては合格という判断を下し認定委員会に報告いたしました。
来年度は受験者の利便を考え地方にも複数の試験会場を設置することを考えております。最後になりましたが、認定獣医師の方々からは公募の形でたくさんの問題を御提供いただきました。ここに厚く御礼申し上げます。来年度も試験問題の公募を行いますので応募の御協力をよろしくお願い致します。
(認定獣医師認定委員会・認定試験小委員会)
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・事務局たより
会費納入のお願い:同封の振込み用紙を用い、平成13年度ならびに平成14年度の会費の納入をおねがいいたします。