JALAM NEWS LETTER
実験動物医学
Japanese Association for Laboratory
Animal Medicine (JALAM)
NO.20 / 2003.3
日本実験動物医学会
〒180-8602 東京都武蔵野市境南町1-7-1
日本獣医畜産大学実験動物学教室内
Tel.0422-31-4151(314)
URL http://www.adthree.com/jalam/
------------------------------------------------------------------------------
主な内容
●認定委員会からのお知らせ 3
・平成14年度日本実験動物医学会認定獣医師審査結果
・第135回日本獣医学会における認定獣医師資格単位対象プログラム
・日本実験動物医学会認定獣医師認定規則
●「認定獣医師の会」のご案内 3
●日本実験動物医学会ワークショップ(第135回日本獣医学会関連集会) 9
日 時:2003年3月31日 9:00-12:00
場 所:東京大学 弥生講堂 (第9会場 7号館-230)
テーマ:認定獣医師の役割
座長:黒澤努(大阪大学医学部附属動物実験施設)
山本博(富山医科薬科大学生命科学実験センター)
1.認定獣医師制度の歴史 黒澤努(大阪大学医学部附属動物実験施設)
2.認定獣医師試験について 安居院高志(北海道大学大学院獣医学研究科)
3.大学における教育と認定獣医師制度 吉川泰弘(東京大学大学院農学生命科学研究科)
4.企業が求める認定獣医師 池田卓也(グラクソ・スミスクライン)
5.医学研究が求める認定獣医師 笠井憲雪(東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設)
●日本実験動物医学会シンポジウム(第135回日本獣医学会関連集会) 13
日 時:2003年4月1日 9:00-12:00
場 所:東京大学 弥生講堂 (第9会場 7号館-230)
テーマ:実験動物に対する獣医学的診断治療
座 長:浦野 徹(熊本大学動物資源開発研究センター)
阿部敏男((株)武田ラビックス)
1.実験動物感染症の診断 伊藤豊志雄(実験動物中央研究所)
2.マウス・ラットの緑膿菌感染における治療方法
浦野 徹(熊本大学動物資源開発研究センター)
3.マウスのパスツレラニューモトロピカ感染の治療 八神健一(筑波大学生命科学動物資源センター)
4.イベルメクチンを用いたマウスの蟯虫感染症の治療 末田輝子(東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設)
●第135回日本獣医学会における実験動物医学関連一般演題
日 時:2003年4月1日 13:00-
場 所:東京大学 弥生講堂(第135回日本獣医学会第9会場7号館-230)
上記の詳細(http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/yakuri/135/time-table-new.htm)
●2002年米国実験動物学会見聞記 黒澤努(大阪大学医学部附属動物実験施設) 17
●第50回日本実験動物学会における日本実験動物医学会教育シンポジウム(予告) 17
日 時:2003年5月28日(水) 13:00-16:00
テーマ:『実験動物施設のセキュリティー』
座 長:黒澤 努(大阪大学)
座 長:佐藤 浩(長崎大学)
1.ハンチンドン研究所のセキュリティー Mr.Brian Cass(ハンチンドン研究所)
2.実験動物施設におけるバイオセキュリティー 杉山 和良(国立感染症研究所)
3.実験動物施設を訪れた動物実験反対運動家 黒澤 努(大阪大学)
上記の詳細(http://www.jalas.or.jp/SOUKAI/50/)
●学術集会委員会からのお願い 18
●平成15年度総会 18
日 時:2003年4月1日 12:00-13:00
場 所:東京大学弥生講堂(第135回日本獣医学会第9会場 7号館-230)
●事務局だより 会費納入のお願い 18
------------------------------------------------------------------------------
Contents
・News from diplomate certification committee
New diplomate certified in 2002
・JCLAM Meeting 1/April/2003, 14:30〜
(Yayoi Hall, Tokyo University, room 9 7th building 230)
・JALAM Scientific Meeting in 135th JSVS
Workshop
Date: 31, March, 2003, 9:00 - 12:00
Venue: ayoi Hall, Tokyo University (No.9 room, 7th building 230)
Theme: Role of JALAM Diplomate
Chairman : Tsutomu Miki Kurosawa (Osaka University)
Hiroshi Yamamoto (Toyama Medical and Pharmaceutical University)
1.History of the Diplomate Certification System
Tsutomu Miki Kurosawa (Osaka University)
2.Examination for Diplomate (JCLAM) Certification
Takashi Agui (Hokkaido University, Graduate school of Veterinary Medicine)
3.College Training and Diplomate Certification
Yasuhiro Yoshikawa (University of Tokyo)
4.Diplomate(JCLAM) for Private Company
Takuya Ikeda (GlaxoSmithKline)
5.Diplomate (JCLAM) for Medical Research
Noriyuki Kasai (Tohoku University Graduate School of Medicine)
・Symposium
Date: 1, April, 2003, 9:00-12:00
Venue: Yayoi Hall, Tokyo University (No.9 room 7th building 230)
Theme: Veterinary Diagnosis and Treatment for Laboratory Animals
Chairman : Toru Urano (Kumamoto University, CARD)
Toshio Abe(TAKEDA RABICS.Ltd.)
1.Diagnosis for Infectious Disease of Laboratory Animals
Toshio Ito (Central Laboratory of Experimental animals)
2.Treatment for Psudomoniasis in Mouse and Rat
Toru Urano (Kumamoto University, CARD)
3.Treatment for Mouse Pasteurellosis (Pasteurella pneumotropica infection)
Kenichi Yagami (University of Tsukuba, LARC)
4.Treatment for Syphaciasis in Laboratory Animals
Teruko Sueta (Tohoku University, Graduate School of Medicine)
・Memoir on 2002 AALAS Annual Meeting
Tsutomu Miki Kurosawa (Osaka University)
・JALAM Educational Symposium In 50th JALAS Annual Meeting (pre-announcement)
Date: 28, May, 2003, 13:00-16:00
Theme: Security of Laboratory animal facility
Chairman : Tsutomu Miki Kurosawa (Osaka University)
Hiroshi Sato (Nagasaki University)
1. Security of HLS
Brian Cass (HLS)
2. Bio-security In Laboratory Animal Facility
Kazuyoshi Sugiyama (NIID)
3. Radical Animal Right Group visited to Laboratory Animal Facility
Tsutomu Miki Kurosawa (Osaka University)
・Announcement from Program Committee for Academic Meetings
・2003 JALAM annual general meeting
Date: 1, April, 2003, 12:00-13:00
Venue: Yayoi Hall, Tokyo University (135th JSVS meeting, No.9 room, 7th building 230)
・Announcement from Executive Office
Request for Payment of Membership Dues
------------------------------------------------------------------------------
認定委員会からのお知らせ
平成14年度日本実験動物医学会認定獣医師審査結果
平成14年度認定者 鈴木 真 (認定第062号)
(平成15年3月25日付け)(認定獣医師認定委員会)
※但し、期限内に認定料を納付した場合に限る。
第135回日本獣医学会における認定獣医師資格単位対象プログラム
第135回日本獣医学会での下記シンポジウム等の出席を認定獣医師資格単位と致します。なお、これらのワークショップと教育シンポジウムはいずれも、JALAM主催の研修会として単位を認定致します。
1.ワークショップ
テーマ:認定獣医師の役割
日 時:平成15年3月31日(月) 9:00-12:00
場 所:東京大学弥生講堂 第9会場 (7号館230講義室)
新規申請者:必須分野で申請する場合 10単位
選択分野で申請する場合 5単位
更新者:第一分野で申請 10単位
第二分野としては申請できない。
2.日本実験動物医学会教育シンポジウム
テーマ:実験動物に対する獣医学的診断治療
日 時:平成15年4月1日(火) 9:00-12:00
場 所:東京大学弥生講堂 第9会場 (7号館230講義室)
新規申請者:必須分野で申請する場合 10単位
選択分野で申請する場合 5単位
更新者:第一分野で申請 10単位
第二分野としては申請できない。
------------------------------------------------------------------------------
「認定獣医師の会」のご案内
日 時:2003年4月1日 14:30〜(一般講演終了後)
場 所:東京大学弥生講堂(第135回日本獣医学会第9会場、7号館-230)
------------------------------------------------------------------------------
日本実験動物医学会認定獣医師認定規則
第1条 目的
日本実験動物医学会は認定獣医師制度を設け、試験と資格審査による「認定獣医師」を認定する。
第2条 認定委員会
1 認定獣医師を認定するために認定委員会を設置する。
2 委員長は学会理事の中から会長が指名し、委員は認定獣医師から委員長が指名する。 ただし必要があれば認定獣医師以外からも指名することができる。
3 任期は3年とし、再任を妨げない。
第3条 認定審査
認定審査は資格審査と試験からなり、合格にはそれぞれが基準点に達しなければならない。
1 資格審査の基準
(1)獣医師であること。
(2)出願時に3年以上継続して学会会員であること。
(3)別表1の認定獣医師資格基準による合計が70単位以上であること。
2 試験
試験方法については別途定める。
3 認定審査を申請するものは審査料を申請時に支払わなければならない。審査料は別に定める。
第4条 認定登録
1 認定審査に合格した者は日本実験動物医学会長より認定証が交付され、認定獣医師名簿に登録される。
2 認定審査に合格した者は認定を受けるために認定料を支払わなければならない。認定料は別に定める。
第5条 有効期間と更新
1 認定獣医師の資格の有効期間は認定後5年とする。
2 有効期間終了後さらに認定を受けようと思う者は、有効期間終了前に更新をしなければならない。
3 更新には次の資格審査をうける
(1)認定獣医師資格取得後の本学会会員歴が継続していること。
(2)別表2。認定獣医師更新資格基準による合計単位が80単位以上であること。
4 更新審査を申請するものは審査料を申請時に支払わなければならない。審査料は別に定める。
5 更新審査合格者は認定を受けるために認定料を支払わなければならない。認定料は別に定める。
第6条 認定の取り消し
認定獣医師に適格でない事由が生じた場合は、認定を取り消すことがある。
第7条 名誉認定獣医師
1 実験動物医学の専門分野に優れた貢献をした個人に「名誉認定獣医師」の称号を授与することができる。
2 この称号を授与される者は獣医師の資格を問わない。
3 この称号を授与される者は認定委員会または認定獣医師の会〈JCLAM)の推薦により、日本実験動物医学会理事会により決定される。
4 名誉認定獣医師は認定料等の経費の支払いは求められず、選挙権を含む認定制度の 運営に携わることはできないが、認定制度の各種活動に加わることができる。
第8条 生涯認定獣医師
1 現役を退いた認定獣医師は認定委員会へ申請することにより、生涯認定獣医師として登録する事ができる。生涯認定獣医師は認定獣医師として認定される。
2 予備認定獣医師は認定料等の経費の支払いは免除され各種選挙権を含む認定制度の運営に携わることはできないが、認定制度の各種活動に加わることができる。
第9条 予備登録
1 認定審査に合格後直ちに認定登録を行わないもの、または更新をしないものは予備登録名簿に登録される。予備登録者は認定獣医師として認定されない。
2 予備登録者は認定制度の運営および活動に携わることはできない。また認定獣医師としての権利を行使することはできない。
3 予備登録者は認定登録をするか、または更新申請をして更新審査に合格し、認定経費を納入することにより認定獣医師として認定される。
4 予備登録の有効期限は5年とする。ただし、特別の事情がある場合には延長することができる。
第10条 その他
1 この規程は平成10年8月13日から施行する。
2 この規程は平成11年10月25日に改正した。
3 この規程は平成13年4月4日に改正した。
認定経費に関する申し合わせ
1 認定審査に関わる審査料は20,000円とする。
2 認定審査に関わる認定料は10,000円とする。
3 更新審査に関わる審査料は10,000円とする。
4 更新審査に関わる認定料は5,000円とする。
この申し合わせは平成13年4月4日から施行する
別表1 認定獣医師資格単位基準の内訳
評点は必須分野と選択分野からなる。必須分野は全ての条件を満たすこと。選択分野から30単位以上を取得し、必須分野と選択分野の合計70単位を認定の必要単位とする。
□必須分野:つぎの全てを満たすこと。
1. 査読制度のある雑誌に掲載され、自らの研究活動を証明できる原著または短報の筆頭著者 生命科学関連論文1編 20単位
2. JALAM主催研修会への参加2回 20単位
□選択分野:必須分野に申請した事項は除くこと。
・実験動物医学分野での経験が5年以上ある10単位
・博士号の取得者 10単位
1. 査読制度のある雑誌に掲載された原著または短報、あるいは症例報告などの生命科学関連論文(必須分野で審査されたものは除く)
筆頭著者10単位/編 共著者 5単位/編
2. 日本実験動物医学会(前身の実験動物医学研究会を含む)(略称:JALAM)、日本実験動物学会(略称:JALAS)および日本獣医学会(略称:JSVS)における学会発表
筆頭著者 JALAM/JALAS/JSVS 5単位/回
共著者 JALAM/JALAS/JSVS 2単位/回
・JALAM/JALAS/JSVS以外の生命科学関連学会での発表
筆頭著者 3単位/回 共著者 1単位/回
・JALAM主催研修会への参加 5単位/回(必須分野で審査されたものは除く)
・JALAM主催ウェットハンド研修会への参加10単位/回
・JALAMが認めた研修会等への参加 その都度JALAMが単位を決定する
別表2. 認定獣医師更新時資格単位基準の内訳
認定獣医師認定後または前回更新後の5年間の活動について単位をつける。活動は学会活動(学会発表と研修・試験)とそれ以外の2分野からなる。
更新に必要な単位数を80単位とし、そのうち第1分野から最低40単位取得する。ただし第1分野で80単位を取得しても良い。
□第1分野
・日本実験動物医学会(前身の実験動物医学研究会を含む)(略称:JALAM)、日本実験動物学会(略称:JALAS)および日本獣医学会(略称:JSVS)における学会発表
筆頭著者 5単位/回 共著者 2単位/回
・JALAM企画の研修会参加(単位数はその都度決定する)
参考例
獣医学会での教育セミナー等への参加 10単位/回
同指導的参加(教育セミナー講師等〉 13単位/回
ウェットハンド研修会への参加 15単位/回
同指導的参加(研修会講師等) 20単位/回
・認定筆記試験受験 (全試験を100点満点に換算して)1点=1単位
□第2分野
・JALAM/JALAS/JSVS以外の生命科学関連学会での発表
筆頭著者 2単位/回 共著者1単位/回
・査読制度のある雑誌に掲載された生命科学関連論文
筆頭著者10単位/編、 共著者 3単位/編
・JALAMが認めた他会の研修会等への参加および指導的参加
その都度JALAMが単位数を設定する (1〜5単位)
例:参加 2単位 指導的参加 4単位
・認定試験間超作成(公募問題に応募) 3問=2単位
・研究機関で実験動物医学に関する指導的役割を担う(新規・継続)10単位
・博士号の取得 5単位
・動物実験・実験動物に関する評論(新聞・雑誌・TV・ラジオ等)3単位
・動物実験・実験動物に関する本の執筆、編集 5単位
・日本獣医師会生涯教育事業(本会主催事業を除く)1ポイント=1単位20単位まで。
他会企画研修会は前もって調査(申告)し、認定委員会が認定し単位を設定する。日獣の生涯研修事業と重複しないようにする。
日本獣医師会生涯教育事業は本年度試験的に始まった事業であり、本学会も参加する。これを利用することにより、地方の会員も単位を獲得することができる。
◇ 更新時単位取得例く5年間で80単位取得例)
1. 大学勤務者(1)
第1分野 日本実験動物学会発表 筆頭者 1回 5単位
共著者 3回 6単位
研修会参加 5回 50単位
第2分野 論文発表 共著者 1回 5単位
他会企画研修会参加 5回(×2単位)10単位
研究機関で実験動物医学に関する指導的役割を担う10単位
合計 86単位
2. 大学勤務者(2)
第1分野 日本実験動物学会発表 筆頭者 1回 5単位
共著者 5回 10単位
研修会参加 3回 30単位
第2分野 論文発表 共著者 1回 5単位
他会企画研修会参加 5回(×2単位)10単位
研究機関で実験動物医学に関する指導的役割を担う10単位
試験問題作成 5回 10単位
合計 80単位
3. 製薬会社勤務者(1)
第1分野 日本実験動物学会発表 共著者 3回 6単位
研修会参加 4回 40単位
第2分野 他会企画研修会参加10回(×2単位)20単位
研究機関で実験動物医学に関する指導的役割を担う10単位
試験問題作成 2回 4単位
合計 80単位
4. 製薬会社勤務者(2)
第1分野 日本実験動物学会発表筆頭著者 1回 5単位
共著者 3回 6単位
研修会参加 3回 30単位
第2分野 他会企画研修会参加10回(×2単位) 20単位
研究機関で実験動物医学に関する指導的役割を担う 10単位
試験問題作成 2回 4単位
日本獣医師会生涯教育事業 6単位
合計 81単位
5. 地方在住者 (1)
第1分野 研修会参加 4回 40単位
第2分野 他会企画研修会参加 5回(×2単位)10単位
研究機関で実験動物医学に関する指導的役割を担う10単位
日本獣医師会生涯教育事業 20単位
合計 80単位
6. 地方在住者 (2)
第1分野 研修会参加 4回 40単位
第2分野 他会企画研修会参加 2回(×2単位)4単位
研究機関で実験動物医学に関する指導的役割を担う10単位
日本獣医師会生涯教育事業 18単位
試験問題作成 4回 8単位
合計 80単位
7. 更新単位を取得していない場合(1)または不足の場合(2)
(1)第一分野 認定筆記試験受験 80点取得 合計80単位
(2)第一分野 不足分を認定筆記試験受験で取得する。
□試験の概要
(1)試験は「実験動物医学総論」の必須科目と「実験動物医学各論」の選択科目からなる。
(2)「実験動物医学各論」はA及びBからなり、どちらか一科目を選択する。
対象動物
A:主としてゲッシ目並びにウサギ目。鳥類、爬虫類、両生類、魚類なども含む。
B:主としてネコ、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ヒツジなど。その他中・大動物も含む。
(3)試験問題は全て5肢択一とする。
(4)総論には動物種に限定されない共通問題のほか、各動物種固有の基礎的各論問題も 含まれる。
(5)総論50点、各論50点の計100点満点で、80点以上を合格とする。
□参考教科書
「獣医実験動物学」光岡知足、波岡茂郎、輿水馨、前島一淑編、川島書店、1990
「実験動物学」田嶋嘉雄監修、朝倉書店、1991
「最新実験動物学」前島一淑、笠井憲雪編、朝倉書店、1998
上記の教科書はあくまで参考教科書であって、時事的問題などで逸脱もありえます。
------------------------------------------------------------------------------
日本実験動物医学会ワークショップ
(第135回日本獣医学会関連集会)
日 時:2003年3月31日 9:00-12:00
場 所:東京大学 弥生講堂 (第9会場 7号館-230)
テーマ:認定獣医師の役割
座長:黒澤努(大阪大学医学部附属動物実験施設)
山本博(富山医科薬科大学生命科学実験センター)
1. 認定獣医師制度の歴史
黒澤努(大阪大学医学部附属動物実験施設)
2. 認定獣医師試験について
安居院高志(北海道大学大学院獣医学研究科)
3. 大学における教育と認定獣医師制度
吉川泰弘(東京大学大学院農学生命科学研究科)
4. 企業が求める認定獣医師
池田卓也(グラクソ・スミスクライン)
5. 医学研究が求める認定獣医師
笠井憲雪(東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設)
------------------------------------------------------------------------------
1.認定獣医師制度の歴史
黒澤 努
大阪大学医学部附属動物実験施設
日本実験動物医学会はすでに61名の認定獣医師を認定している。この認定獣医師の必要性に関して各方面からの様々な意見が今後出されるであろうが、そもそもその必要性を考えついた者の一人として、これまでに日本実験動物医学会認定獣医師が誕生するまでの歴史を紹介する。
米国実験動物医学協会(ACLAM)の存在は1985年のNIH指針ですでに知っていた。さらに大阪大学医学部附属動物実験施設の概念設計のために留学した米国ミシガン大学医学部のBen Cohen教授の元でその詳細を教えられた。この滞在時は、ACLAM認定試験の直前だったこともあり、数人の受験者が事前勉強でミシガン大学を来訪し、多数のスライドを用いて、Cohen教授等とともに症例検討会が開かれ、一緒に勉強した。またミシガン大学にはACLAMを目指すレジデントがいて、それらの方々とも親交を深め、実地修練の内容を知るにいたった。こうしてACLAMの専門医制度を良く理解したが、その後施設の建設が始まりしばらくはACLAMについては考えることが少なかった。
しかし、施設運営の検討を開始し、国際的なレベルの実験動物施設運営のためにNIHの指針さらには実験動物福祉の立場からAAALACなどの関連文書を参照すると実験動物医学専門医の話がたびたび出てくることに再度気付いた。すなわち米国では実験動物施設の運営では実験動物の獣医学的careが重要項目となっているが、それらの詳細は専門医によってなされるとの規定となっていたのである。わが国に国際的なレベルを達成できる実験動物施設を設立しようとすると、実験動物医学の専門医の存在が前提となる。そこで、笠井先生と伊藤(勇夫)先生に声をかけて、実験動物医学の専門家の研究会を作ることとした。早速当時の実験動物会の重鎮であった前島先生、波岡先生、光岡先生に相談を持ちかけたのであった。残念ながら、当時は実験動物医学という概念を日本実験動物学会か日本獣医学会の中に分科会と旗揚げすると良いとされただけで具体的にどのようにしたら、分科会を結成できるのかすらよくわからなかった。暗中模索である。
幸い日本獣医学会では分科会制度の見直しを開始したこともあり1993年に日本獣医学会の実験動物分科会として実験動物医学研究会が初代前島会長を選出して結成できた。また1996年には日本実験動物医学会と改称して本格的活動、とりわけ専門医の認定を視野にいれた活動が開始された。こうして日本実験動物医学会認定獣医師が1999年に暫定制度により誕生し、さらに2002年には、本制度における認定獣医師が認定され、総勢61名の認定獣医師が現在活躍することとなったのである。
------------------------------------------------------------------------------
2.認定獣医師試験について
安居院高志
北海道大学大学院獣医学研究科動物疾病制御学講座実験動物学教室
日本実験動物医学会(JALAM)認定獣医師制度は1999年度から始まり、最初の3年間は暫定制度として、無試験で経歴・研究歴等の書類審査のみで58名のファウンダー認定獣医師を認定した。2002年度から本制度に移行し、筆記試験による審査を開始したところである。引き続き筆記試験の受験資格としての書類審査は行っているが、経歴・研究歴の基準は緩和された。即ち暫定制度では、認定の必須条件は獣医師であることと5年以上継続してJALAM会員であることであったが、本制度では獣医師であることは当然変わりはないが、学会会員歴は3年に緩和された。また、その他の評点も暫定制度では、個人により違いはあるものの平均的な認定獣医師の場合、実験動物医学分野での経歴が10年以上で研究機関において実験動物医学に関して指導的役割を行っている者で、その他、数本の生命科学論文、数回の実験動物関係での学会報告、数回のJALAM主催研修会への参加等が必要であった。一方、本制度では実験動物医学分野での経験が5年以上、1本以上の生命科学関連論文、2回以上のJALAM主催研修会への出席という具合に必須条件が緩和された。その代わりに筆記試験を受け80点以上の得点を取らなければならない。すなわちより若い人に認定獣医師となるチャンスが与えられたということである。
さて、試験問題についてであるが、試験は総論50問、各論50問で、計100問からなる。各論はAまたはBからなり、Aは対象動物がげっ歯目、ウサギ目、鳥類、ハ虫類などいわゆる小動物で、Bはネコ、イヌ、ブタ、サルなどの中・大動物である。専門は小動物または中・大動物だったとしても、現場では認定獣医師はオールマイティーを求められるので、総論では両対象動物に関する基本的事柄を問う問題が出題されている。問題は学問主義に流れることのないよう、あくまで現場で実験動物専門獣医師として活躍するために必要な基礎知識を問うものであることを心掛けている。従って、感染症、麻酔・鎮痛、動物福祉、法規などの問題が中心となっている。しかし、現場では実験動物専門家として実験者から実験動物についての相談を受けたりすることもあるので、解剖、生理、遺伝・育種などでは学問的基礎知識を問う問題も含まれている。問題の作成では、まず認定獣医師に対し公募を行い、集まった問題を更に10人の試験委員で吟味し、最終問題を作成している。問題の作成には数カ月をかけ、メールでの討議、実際に一堂に集まる最終委員会を経て決定されている。この間、問題の適・不適、解答の正しさ(解答が二つあり得ないか、または特殊な例を考慮しても正しいと言えるか)などを徹底的に検証している。問題はJALAMホームページ上に公開されている。これは学会員の批判を受けとめ試験問題のさらなる向上を図るためと、認定獣医師・学会員の学力の向上のためである。
------------------------------------------------------------------------------
3.大学における教育と認定獣医師制度
吉川泰弘
東京大学大学院農学生命科学研究科
大学における実験動物の認定獣医師教育について述べよということであるが、現実には特別にこうした教育は行っていない。そこでもう少し拡大解釈して大学における教育と認定獣医師制度というテーマで考えてみたい。
1.獣医課程における実験動物学教育:東大では6年制の獣医学教育のうち2年生までは一般教養であり、専門の教育はほとんどない。また現在、5年生の前期でほぼ全ての実習と教育を終え、後は各研究室で基礎あるいは臨床の研究をする。従って実質2年半(前後期5学期)で、基礎から臨床まで習うことになる。この中で実験動物学としての講義と実習はそれぞれ1学期(講義は平均13〜14回、実習は4週に集中)で、その他に3年生で進学した最初の実習で、実験動物の扱い方を練習する。14回の講義で広範囲にわたる実験動物学の全てを教えることは困難である。またほぼ3分の1は外からの講師を招いて、専門のトピックス的講義をしていただいている。実習も実験動物学と毒性学の混合という形である。最近は高校で生物学を学ばない学生も獣医学に進学するケースが増えており、獣医師国家試験を無視して、基礎生物学(遺伝学、繁殖学、動物学)と応用学(動物実験、福祉、法律、感染症など)を取りまとめて教えることになる。1年生の時から専門教育を受ける場合は、もう少し余裕があると思われるが、どの大学もほぼ似た状況ではないかと思う。
2.認定獣医師の役割:実験動物認定獣医師の役割を考えると、動物実験委員会(実験の評価、管理、情報公開)の主役を引き受けること。動物実験の専門家としてのアドバイス(動物の選択、手技、実験デザイン等)、獣医学的ケア・管理(麻酔、感染症予防等)、その他のソフトウェア(福祉、法律等)の専門知識を保有し、適切な対応をとること……と万能性が要求される。これを上述の大学教育として行うことはとても不可能である。
実験動物専門獣医師の教育:専門獣医師を育成するには体系的な教育が必要である。しかし、現在の方式のように育成された人間を認定するだけであれば特に教育の必要はない。若い人材を育てるのであれば、6年生終了後集中的に専門教育を行う(大学院修士)あるいは、夏季に集中的な講義・実習を行う(研修制度の)ような体制が必要とされる。実験動物技術者のためには白河研修のような制度がすでに確立されている。時間はかかるかもしれないが、こうしたシステムが実験動物専門獣医師育成にも必要ではないかと思う。これはすでに認定された専門家にとっても生涯教育としての自己研修の機会を提供することにもなる。
------------------------------------------------------------------------------
4.企業が求める認定獣医師
池田 卓也
グラクソ・スミスクライン株式会社
筑波研究所 動物管理部
我国の大多数の企業においては、実験動物施設における獣医師の役割は、必ずしも明確に規定されていない。現実的には多くの企業で、実験動物施設に獣医師を配しているが、実験動物施設の運営管理上の規程等に、獣医師の役割を明確に規程している例は極めてまれである。 現在、我国においては特別な場合を除いて、企業の実験動物施設に獣医師の存在が必須不可欠な要件とは、認識されていない。そのため獣医師が存在しない実験動物施設も多数存在するのが、企業の現状である。況や認定獣医師となると、大多数の経営者および実験動物施設が所属する機関の長に、“実験動物施設に認定獣医師が必要である”との認識は、まったくない。そのため日本の企業において、一般論として“企業が求める認定獣医師とは”と言う問いに対して、現状で回答を求めるのは困難であろう。
欧米においては、実験動物施設に獣医師の存在が必須要件である。たとえどんな小さな実験動物施設においても、実験動物施設の維持・運営管理は、獣医師の関与なしには成立しない。もし専任の獣医師を配置できない場合でも、実験動物施設を保有し実験動物の飼育管理をする以上は、パートタイムあるいはコンサルタント獣医師の選任が必要条件となっている。現実的には大半の企業で、実験動物施設に専任の獣医師を常駐させている。特に大規模な研究施設に付属する実験動物施設では、Veterinarian Medicine に代表されるような名称の組織を保有し、複数の獣医師を配している。そこでは、「実験動物の管理と使用に関する指針(ILAR 1996)」に示されている獣医学的管理を統括し、実施している。
このような背景から、認定獣医師制度を最初に確立し、すでに長い歴史を持つ米国の認定獣医師の活躍は、日本の認定獣医師が果たす役割について考えるうえで有用である。特に企業の実験動物施設での活躍を参考にする事は、企業が求める認定獣医師の姿を明らかにするうえで、重要であると思われる。 今回、研究所の動物管理部門に10人近い獣医師を擁し、そのうち5人が認定獣医師(ACLAM)である、米国の大規模な研究所の実験動物管理部門における例を示し、彼らの日常の活動および役割を紹介する事により、企業における認定獣医師の役割を論じたい。また本事例を参考に、我国の企業における認定獣医師の、今後のあるべき役割を考えて試たい。
------------------------------------------------------------------------------
5.医学研究が求める認定獣医師
笠井憲雪
東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設
認定獣医師制度が始まり、今春で5回目の認定を終えた。これまでに62名の方が認定獣医師となり、各方面で活躍している。このうち35名56%の方が医科系大学をその活躍の場としている。おおくは動物実験施設であり、実験動物の飼育管理者さらには動物実験法の指導監督者となっている。さらには総合大学であっても獣医師の数は少なく、認定獣医師がその大学の唯一人の獣医師であることが多く、大学全体の実験動物や動物実験の指導者となっている。近年は医学部や薬学部以外でも動物実験を行っており、例えば東北大学では理学部や工学部、さらには文学部でも行われている。さらに情報科学研究科や電気通信研究所においても動物実験委員会が設置されており、動物実験の多様化が益々進んでいることがうかがわれる。また、国や県での情報公開法や条例の施行による情報開示請求は、そのほとんどが医科系大学へ向けられたものである。
このような中で医科系大学の認定獣医師が求められていることは動物実験の倫理面での見識と能力である。それは技術的側面と社会科学的側面がある。前者は動愛法や動物実験指針で求められている「苦痛の軽減」のための麻酔法や安楽死法、さらには3Rの実施技術であり、これらについては我々は良く議論している。後者は生命倫理学や動物福祉学さらには法律面での見識であり、これについては苦手な分野であり、携わる認定獣医師は少ない。しかし、今後動物実験の社会的合意を得、研究者への動物実験倫理の教育指導のためには、動物と人間の関係についての歴史的考察や人々の考えの背景にある宗教や倫理、近代的な哲学者や生命倫理学者の動物や動物実験についての考え方、国内外の動物や動物実験についての比較法制などを地球規模で調査研究することが必要になると思われる。それには生命倫理学者や哲学者、そして法学者の助力を得て認定獣医師自らが動物生命倫理学や動物福祉学、関係法学の研究に参画していくことが望まれる。
------------------------------------------------------------------------------
日本実験動物医学会シンポジウム
(第135回日本獣医学会関連集会)
日 時:2003年4月1日 9:00-12:00
場 所:東京大学 弥生講堂 (第9会場 7号館-230)
テーマ:実験動物に対する獣医学的診断治療
座長:浦野 徹(熊本大学動物資源開発研究センター)
阿部敏男((株)武田ラビックス)
1.実験動物感染症の診断
伊藤豊志雄(実験動物中央研究所)
2. マウス・ラットの緑膿菌感染における治療方法
浦野 徹(熊本大学動物資源開発研究センター)
3. マウスのパスツレラニューモトロピカ感染の治療
八神健一(筑波大学生命科学動物資源センター)
4. イベルメクチンを用いたマウスの蟯虫染症の治療
末田輝子(東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設)
------------------------------------------------------------------------------
1.実験動物感染症の診断
伊藤豊志雄
財団法人実験動物中央研究所
ICLASモニタリングセンター
実験遂行が困難になる、実験成績の再現性が得られないといった動物実験障害の原因の一つに感染症がある。感染症診断方法の各論あるいは手順は獣医の教科書に記載されている。ここでは家畜やペットの感染症診断との違いを強調しつつ、感染症成立要因、症状、検査方法と問題点ならびに診断検査の実際という構成で、実験小動物、特にマウスやラットの感染症診断の実際を紹介する。
感染症:感染源となる病原体は多様であり、同じ病原体であっても株により病原性が異なるということがある。同じ動物種であっても系統など遺伝的素因、年齢、基礎疾患の有無等の違いによって感染抵抗性が異なることはよく知られている。そのうえに、宿主としての実験動物は実験処置が加えられる、免疫不全動物の普及等、易感染性を示す場合が多い。感染経路を見ると、実験動物として生産・維持されていれば、中間宿主を必要とする寄生虫やその伝播に媒介動物を必要とする病原体は排除できるが、一方では実験動物に固有の感染経路として投与材料中への病原体混入もしばしば経験されている。
症状:感染に伴う組織破壊や宿主の免疫反応によって目に見えるような臨床症状が出る場合を顕性感染と呼ぶ。当然、臨床症状が認められず肉眼的に異常として認識されないような感染も存在し、不顕性感染と呼ばれる。どちらになるかは病原体と宿主との相互関係によって決まるものであり、ある集団に病原体が進入した場合、全ての個体が同じ経過を示すわけではない。症状や経過から病因の推察が可能な場合が多い。
診断方法と問題点:感染症診断法には、人工培地や培養細胞などを用いた培養による細菌やウイルスなど病原体の分離や、寄生虫検査などのように顕微鏡下病原体を確認するなどによる病原体の分離・検出、あるいは病巣部材料の塗抹標本や病理組織標本などの免疫染色による特異的な抗原検出、病巣部などから核酸を抽出、PCR法による病原体に特異的な核酸配列検出など病原体の特異的部位の検出、さらには感染の結果、生体内で産生された血清中の抗体の有無によって感染を間接的に検出する方法とがある。症状や病理組織学的検査によって、特定の疾病に特徴的な臨床所見や病変を見出す非特異的方法もある。このように感染症診断のための検査方法はいろいろあるが、検査を実施してみると、菌同定方法の不統一、特異的方法といっても偽陽性や偽陰性反応の存在等問題が無いわけではない。それぞれの検査方法について、感度や特異性を熟知するとともに、異なる検査方法を準備するといったバックアップシステムの構築も不可欠である。
感染症診断の実際:最後に、実験動物感染症診断の実際ならびに異常動物が見出された場合の対応を紹介する。
------------------------------------------------------------------------------
2.マウス・ラットの緑膿菌感染における治療方法
浦野 徹
熊本大学動物資源開発研究センター・病態遺伝分野
緑膿菌はグラム陰性の小桿菌で1本の鞭毛を有し、緑色色素ピオシアニンを産生する細菌で、土壌や河川などの自然界に広く分布しており、また、湿潤な環境から高頻度に検出される。実験動物領域での緑膿菌感染は、かつてはSPFマウス・ラットを中心に高率に発生していた。近年は、SPF動物からの緑膿菌の検出率こそ低下したものの、感染事故例はSPF動物のみならずconventional動物でも相変わらず時々見受けられる。ただし、通常は緑膿菌感染イコール発症ではなく、ごく稀にマウスで旋回病、腎盂腎炎および敗血症、モルモットで肺炎、ウサギで致死的肺炎や皮膚病などの自然発症例が見られる程度で、感染したことが直ちに自然発症に結びつく感染病としてはそれほど問題にはならない。実験動物領域で緑膿菌が忌避される最大の理由は、このような自然発症例ではなく、むしろ本菌感染動物に放射線照射やサイクロフォスファミドなどの免疫抑制剤およびコーチゾンの投与などの実験処置を加えた時に、本菌症が誘発され、時として敗血症死することにある。近年は遺伝子改変マウスにおいて、緑膿菌を初めとする日和見病原体が宿主に与える影響について懸念されているが、このことについては未だ不明であり、本菌感染が遺伝子改変マウスにとって問題であるか否かはわからないが、今後の重要な検討課題であろうと思われる。
マウス・ラットの緑膿菌感染における治療に関しては、各種実験処置により本菌症が誘発される可能性が懸念されることからすれば、個体あるいは動物飼育コロニーからの本菌除去についてが広義の意味での治療と位置づけられる。そこで、今回のシンポジウムでは個体あるいは動物飼育コロニーからの緑膿菌の除去を中心に述べる。
緑膿菌の除去を可能にするためには、まず初めに本菌の伝播経路、個体あるいは動物飼育コロニー内での本菌の分布状態を知ることが重要である。緑膿菌が実験動物領域に感染してくる原因は、恐らく本菌の持っている特性、すなわち自然界に広く分布すること、乾燥したところでも生存できること、栄養分の少ない水の中でも容易に増殖できることなどが影響すると考えられ、このことが、マウス・ラットを飼育するコロニーに容易に感染してくる原因と考えられる。具体的には、ヒトの手指、各種器材等に付着した緑膿菌が飼育コロニー内に侵入し、動物の飲水の中で増殖し、さらにマウス・ラットの主に消化管内へ感染していくと考えられる。その他、飼育室内では飼育棚、床、流し台等の環境、さらに飼育室以外では例えば洗浄室が問題となり、この場合、飼育器材を浸漬しておく水槽、洗浄機、洗浄室床面、洗浄室などを徘徊する昆虫類からも本菌が検出されるから、本菌を除去するためには動物を飼育する建物全域について対策を講じる必要がある。このことが、緑膿菌を除去するためには、動物個体と動物飼育施設全域の大きく二つに分けて考える必要があることの理由でもある。
動物個体からの緑膿菌の除去については、本菌の主たる感染部位が消化管であることから、1)抗生物質のひとつであるgentamicinを飲水に添加して給与する方法、2)緑膿菌の消化管での定着を阻止する腸内菌叢をあらかじめ動物の消化管に付与しておく方法が有効である。さらに、3)体外受精による生殖工学的手法、あるいは、4)帝王切開による手法も有効である。
動物を飼育するコロニーからの緑膿菌の除去については、本菌に有効な消毒薬の使用などによる徹底した衛生管理をおこないながら緑膿菌陽性個体のみを処分することにより可能である。この場合、細心の注意を払いながらの徹底した衛生管理が前提であり、このことなくしては本菌の除去は成立しない。
つぎに、動物間の本菌の伝播経路を遮断する意味から、伝播経路である動物に給与している飲水、さらに飼育管理者等のヒトに焦点を合わせて、飲水をpH2.5?3.0に調整したり、本菌に有効な消毒薬の使用などによる徹底した衛生管理が効果的である。
動物を飼育する施設全体からの緑膿菌除去については、飼育室以外への対策が必要で、そのためには本菌がしばしば検出される洗浄室およびその周辺区域を中心にして、それに係わりをもつヒト、実験動物および昆虫類なども対象にして、消毒薬等の殺菌手段を適材適所に用いることによる本菌の防除が有効である。
以上のように、緑膿菌感染を治療するにあたっては、本菌の病原性、疫学、伝播経路、診断法等を十分に理解したうえで、動物個体および動物飼育コロニーを対象にしたきめの細かい対策を講じながら適切な方法でおこなうことが重要である。さらに、本菌が自然界を含めて広く検出されることから、再感染を防止するための予防対策もまた非常に重要であり、注意を払わなければならない。
------------------------------------------------------------------------------
3.マウスの Pasteurella pneumotropica 感染の治療
八神健一
筑波大学生命科学動物資源センター
1960?70年代、実験動物(特にマウス・ラット)は感染症発生による壊滅的な打撃を繰り返し受けていた。これに対する根本的な対応策として、帝王切開によるSPF化とバリア飼育の原則が普及し、生産施設に限らず実験施設においても感染症コントロールの基本的な考え方として定着してきた。その過程で、感染症に罹患した実験動物を治療することは、感染拡大のリスクや実験成績への影響の点からもタブー視されてきた。確かに、病原性や伝染性の高い微生物に対して姑息的な対応は禁忌であり、汚染の可能性のある動物を全て淘汰する方法が感染症の拡大を防止するうえで極めて重要であることに変わりはない。一方、1960?70年代に比較すれば、飼育装置の改良は目覚ましく、また、病原性や発症機構、抗菌剤の作用機序等の知見も深まり、感染症拡大のリスクと実験の継続のニーズを考慮した対応策の選択が可能となっている。さらに、実験動物の犠牲を減少させるべきとの社会通念への配慮も必要である。病原性や伝染性の低い病原体に汚染した場合の対応策として、集団中の全動物を直ちに淘汰すべきかどうか、見直されるべきであろう。
そこで、実験動物の感染症治療の1例として、Pasteurella pneumotropica (P. pneumotropica)汚染マウスの抗菌剤治療による菌の駆除について紹介するとともに、感染症対策として、淘汰ではなく治療を行う際の必要条件について提案したい。
【P. pneumotropica汚染マウスの抗菌剤治療】fluoroquinolone系の抗生物質であるEnrofloxacinの投与による P. pneumotropicaの駆除について紹介する。この方法は、飲水による投与であるため、多数のマウスに対して一斉に処置することが可能である。マウス1頭あたり約25mg/kg/dayとなるよう、水道水にEnrofloxacin(バイトリル2.5%注射液)を170mg/lとなるように添加し、2週間にわたり給水びんで自由摂取させた。2週間の投薬の後、2週間の投薬休止期間を置き、2回目の投薬を同様に行った。この間、ケージの交換は週1回、給水びんの交換は4?5日ごとに実施した。通常、1回目の投薬でほとんどのマウスから菌の駆除が出来るが、大規模な集団ではわずかながら陽性例が残る懸念があるため、2回目の投薬を行う。
【実験動物の抗菌剤治療の条件】実験動物を抗菌剤治療することは、感染症拡大のリスクと実験の継続のニーズを考慮したうえで選択すべき対応策のひとつと考えられる。リスク評価の項目として、病原体の病原性や伝染性の程度、副作用や合併症の可能性(菌交替症や耐性菌の出現の可能性を含む)が重要であり、実験動物医学関連の知識と総合的判断力が必要となる。実験実施者においては、研究に支障のない限り実験の継続を希望するであろう。実験への支障は、病原性の発現機構や抗菌剤の作用機構を理解したうえで判断するべきである。また、抗菌剤治療を行う場合、当該微生物、副作用の症状あるいは耐性菌の出現などをモニタリングする方法も同時に考慮すべきであろう。
実験動物の感染症治療は、病原性や伝染性の程度の低い微生物を対象とし、適切なリスク評価とモニタリング体制を持ち、実験動物医学的な判断のもとに実施されるべきであろう。
------------------------------------------------------------------------------
4.イベルメクチンを用いたマウスの蟯虫感染症の治療
末田輝子
東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設
マウスの蟯虫感染症は、世界中の動物実験施設で頻発しているが、実験を行う上で重要な障害にならないことからこれまではあまり重要視されてこなかった。しかし、1980年のトランスジェニックマウスの登場以来、遺伝子操作マウスの授受が激増し、その感染力の強さから蟯虫(ネズミ大腸蟯虫、ネズミ盲腸蟯虫)の存在が動物授受の障害となっている。この「やっかいな寄生虫」の治療は古くから研究されており、駆虫剤としてピペラジン化合物、パモ酸ピルビニウム、サイアベンダゾール、パモ酸ピランテルなどが知られており、これらの薬剤を餌や水に混ぜて投与する方法はある程度の効果が認められている。一方、1991年に Le Blanc らは広い抗寄生虫スペクトラムを有するイベルメクチンをマウスに直接噴霧する駆虫方法を発表した。日本ではマウスの蟯虫駆除における本薬剤の使用経験はあまりなく、また、副作用としてのマウスの繁殖に及ぼす影響についてはまだ十分に検討されていない。私は経済性と簡便性からこの方法に注目をし、追試実験を行い、その駆虫効果の高さを確認し、さらに本薬剤のネズミ盲腸蟯虫とネズミ大腸蟯虫のそれぞれに対する駆虫効果と副作用の面から妊娠マウスや新生仔に及ぼす影響について検討を行った。
・投与方法:イベルメクチン注射液(1%)をスプレー瓶に入れ、蒸留水で10倍に希釈し、よく攪拌する。そして、通常のケージ交換作業後にマウスを含むケージ全体に、希釈した薬剤を1回噴霧する。1回の噴霧で約1?、イベルメクチン量で1r投与することになる。噴霧は週に1回、3週連続で行なう。
・結果(1)イベルメクチンを1、2回噴霧することで両蟯虫の虫卵は検出されなくなり、さらに剖検により完全駆除を確認した。マウスの異常は見られなかった。
・結果(2)妊娠したBALB/cおよびC57BL/6マウスの薬剤噴霧群と蒸留水噴霧群において、産仔数、離乳数、離乳率に有意差は見られなかった(ともにp>0.05)。また、妊娠マウスや新生仔の死亡や奇形などの副作用は見られなかった。
これらの結果よりイベルメクチンはマウスの蟯虫感染症の治療に対して優れた効果があり、繁殖を行っているケージに投与してもBALB/c、C57BL/6の繁殖に大きな影響を与えるとは言えないということが示された。
しかし、繁殖を繰り返している大規模コロニーでは再感染は容易に起こるために先の投与方法を1サイクルのみでは不完全であり、投与量を増やす必要がある。私は2サイクル繰り返すことで、駆虫期間中のケージ交換方法や飼育室内の清掃方作業について、従来の作業手順を何一つ変えることなく両蟯虫の根絶を成功させた。一部で、多剤耐性遺伝子のノックアウトマウスに対する副作用が報告されているが、投与量や投与方法を十分に考慮することにより、安全に使用できると思われる。
イベルメクチンは駆虫効果、労力、費用のバランスのとれた駆虫薬であり、今後この治療薬が広く普及されることを期待している。
------------------------------------------------------------------------------
2002年米国実験動物学会見聞記
黒澤 努
大阪大学医学部附属動物実験施設
2002年10月27?31日に開催された米国実験動物学会(AALAS)に参加した。今回の目的はいくつかあったが、Round Table Discussion "What Drinking Water quality Is Necessary for the Vivarium? A Step Toward the Development of Standards" にて実験動物飲水のわが国の情況ならびに国際標準化の提案を報告した。
日本実験動物医学会国際渉外担当理事としては、10月28日月曜日朝8:00?10:00にわたってACLAMの国際交流委員会にObserverとしての出席を求められ、情報交換を行った。
委員長は英国のDr. Timothy Morris (ECLAMのDiplomateでもある)である。委員会としての重大事はACLAMとASLAPの国際活動の1本化のようで、米国獣医学会時の合意などを確認し、具体的にどのように進めてゆくかが話し合われた。
私は日本実験動物医学会の認定医の登録について、すでに61名が登録されるとともに、本試験制度が始まり、すでに3名の本制度による認定が行われたことを報告した。また日本実験動物医学会は引き続き米国実験動物医学会とより一層の友好関係を築きたい旨お伝えしてきた。
各委員から各国の現況報告などがあったが、そのうちでもとくに興味が持たれたのは米国在住韓国人のLee委員から2003年に第1回のアジア実験動物協議会が韓国で開催されることが報告された。また New Zealand の ANZSLAS会長の Jon Schofield 委員から3年に一度のANZSLAS総会が2003年8月に New Zealand、 Christchurch で開催されることが報告された。日本実験動物医学会はANZSLASとも友好を深めたいので是非詳細な開催情報を送付していただけるよう依頼した。
今回はテキサスでの開催だったこともあってか動物実験反対運動家のデモンストレーションなどはみられなかった。
次回の米国実験動物学会はシアトルで開催される。
以上米国実験動物学会見聞記を記す。
------------------------------------------------------------------------------
第50回日本実験動物学会における
日本実験動物医学会教育シンポジウム(予告)
日 時:2003年5月28日(水) 13:00?16:00
テーマ:『実験動物施設のセキュリティー』
座長:黒澤 努(大阪大学)
座長:佐藤 浩(長崎大学)
1. ハンチンドン研究所のセキュリティー
Mr. Brian Cass(ハンチンドン研究所)
2. 実験動物施設におけるバイオセキュリティー
杉山 和良(国立感染症研究所)
3. 実験動物施設を訪れた動物実験反対運動家
黒澤 努(大阪大学)
上記の詳細(http://www.jalas.or.jp/SOUKAI/50/)
------------------------------------------------------------------------------
学術集会委員会からのお願い
日本実験動物医学会学術集会委員会ではシンポジウム、ワークショップのテーマを募集しております。会員各位のご提案を歓迎致します。
提案先:学術集会委員長 黒澤努 kurosawa@iexas.med.osaka-u.ac.jp
------------------------------------------------------------------------------
平成15年度総会案内
日 時:平成15年4月1日 12:00〜13:00
場 所:東京大学弥生講堂
第135回日本獣医学会第9会場7号館230
------------------------------------------------------------------------------
事務局だより
会費納入のお願い
同封の振込み用紙を用い、平成14年度会費(2,000円)の納入をお願い致します。
前年度以前の会費を未納の方は、振込み用紙にその旨を記載いただき、一緒に振込みを
お願い致します。
郵便振替 00190−3−715229
加入者名 日本実験動物医学研究会
日本実験動物医学会 ホームページ
http://www.adthree.com/jalam/