実験動物医学


Japanese Association for Laboratory Animal Medicine (JALAM)

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実験動物医学 No.5


医学生物学研究用サルとバイオセイフテイ

日本生物科学研究所  山内一也
医学生物学研究用サルとバイオセイフテイ
日本生物科学研究所  山内一也
 実験動物としてのサルの利用は、医学生物学の展開とともに、エイズ、異種移 植
、バイテク医薬品、遺伝子治療といった新しい研究領域も巻き込んだ広いもの にな
ってきている。バイオセイフテイの観点からはエイズや臓器移植の研究のよ うにサ
ルに免疫不全を引き起こさせる内容のものはとくに注意を要するものであ る。一方
、学問の進展や経験の蓄積により、サルからの感染の危険性に対する対 策について
も進んできている。この両面からサルを用いる医学生物学研究でのバ オイセイフテ
イについて整理を試みることにしたい。 

1。サルから感染するおそれのあるウイルス  サルが自然宿主となるウイルス、サ
ル以外の野生動物からサルが感染してヒト に感染を起こすもの、ヒトからサルが感
染し、別のヒトに感染を起こすものの3 種類に分けることができる。このうち、前2
者がバイオセイフテイの面ではとく に重要である。ヒトからサルを介してヒトとい
う感染は細菌では赤痢、結核など が重要であるが、ウイルスではデングウイルスの
ように潜在的危険性の考えられ るものがあるが、現実に問題となっているものはほ
とんどない。そこで、ここで は前2者のうち、とくに代表的なものとして、Bウイル
スとフィロウイルスをと りあげ、バイオセイフテイの面からの問題点を述べる。  
サルを自然宿主とするウイルスの中ではBウイルスがもっとも重要である。マ カカ属
サルが自然宿主であり、サルでは通常病原性を示さず、ヒトで致死的感染 を起こす
。1932年にウイルスが分離されて以来これまでに40名弱の感染例 が報告され
ている。
 サル以外の動物からサルが感染してヒトへ伝播するウイルスのなかで、もっと も
高い危険性があるものはフィロウイルス科に属するマールブルグウイルスとエ ボラ
ウイルスである。1967年のミドリザルからのマールブルグウイルスによ る感染
がもっとも有名である。1995年にはチンパンジーからのエボラウイル スによる
研究者の感染が起きている。結果的にヒトへの病原性は見いだされなかっ たが、社
会に大きな衝撃を与えたものとして1989年に米国で起きたカニクイ ザルでのエ
ボラウイルス・レストン株感染も有名である。  
2。新しい研究の進展に伴う危険性と対策
 1980年代後半からBウイルス感染増加の傾向が問題になっている。その背 景に
はエイズや肝炎の研究でのサルの使用の増加、不十分な安全対策などが指摘 されて
いる。一方、抗ウイルス剤であるアシクロビルによる発病阻止や治療効果 が明らか
となってきた。暴露事故に対する具体的かつ詳細なガイドラインも19 94年に発
表された。しかし我が国ではほとんど知られていないのが現状である。 

 Bウイルス、フィロウイルスいずれもクラス4に属しP 4実験室が使用できない 我
が国ではウイルス分離などの検査は不可能である。しかし不活化抗原による抗 体検
査は我が国でも最近始められた。臓器移植の実験のように免疫抑制剤の投与 を伴う
ような場合にはBウイルスやフィロウイルス抗体の陰性のサルを使用する ことが望ま
しい。

3。人工繁殖サルからSPFサルへ
 微生物汚染の危険性が高く、また年令など実験動物として基本的データも欠け て
いる野生サルの使用は人工繁殖サルへと切り替えられてきている。  さらに、特定
の病原体汚染のないSPFサルのコロニーの作出も進められている。 最初にこの試みが
始められたきっかけはサルにエイズを起こすD 型レトロウイル スの汚染のないサル
を確保することであったが、現在では、遺伝子治療用のベク ターの検査用として、S
PFサル作製の動きが米国で活発になっている。バイオセ イフテイの観点からも、SPF
の概念の導入が望まれている。 


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