| 鈴 木 立 雄 |
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イヌと同様にコンパニオン・アニマルとして人気の高いネコではあるが、その家畜化の歴史は新しく、4000−3500年に過きず、イヌとはまったく異なる。 ヒトが農耕をはじめ、穀物を貯蔵するようになると、これをねらってネズミがヒトの居住地に住み着いた。ヒトは穀物を食い荒らすネズミ対策に腐心し、エジプトでネコが家畜化され、これによって駆除に成功した。 野生のネコは狩猟本能が極めて強く、とじ込めて飼育すると、盛んにネズミを補食し、しかも、この本能はヒトが食餌を与えても影響がなく、家畜化ができたのである。 このように、ネコはネズミの捕獲の目的で家畜化されたが、テリトリーを守る本能が強く、飼育しているヒトの住居をテリトリーとして生活し、ペットとしての役割を果たすようになったのである。 ペットとしてのネコは、飼い主であるヒトと極めて強い交友関係を持って相利共生する動物であるが、イヌとは異なり、ネコはヒトを仲間として意識したり、ヒトに完全に従属することはない。いいかえれば多分に野性味を残していることと符合するのである。 飼いネコの正確な頭数を知る手掛りは別にないが、現今ではコンパニオン・アニマルとしてのネコの頭数が増えていることは事実である。ペットフード工業会が平成12年10月におこなった調査によれば、わが国でのネコの飼育推定頭数は6,538千頭、野生ネコの推定頭数は1,180千頭、したがってネコの推定全頭数は、7,718千頭とされている。 このような状況のなかで、ネコ、そしてその心を深く知る拠りどころとなる書物は少なく、また、必ずしも内容が斬新とはいいがたい。ネコ関係の雑誌などには、ネコの行動や病気などについての論文がしばしば掲載されてはいるが、ネコの鳴き声や行動、病気のサインに関して信頼すべき新書の出現が待望されていた。 たまたま本書の原稿を拝読すると、ネコと一緒に生活した場合の実際面において遭遇する疑問が網羅されていて、まさにわれわれの要望を満たしているもののように思われた。 本書は臨床獣医師として著者の30有年にわたる体験から、ネコの意思伝達のサイン、すなわち「ネコのことば」について、鴫き声やポーズ、行動から見たサイン、全身的ならびに局所的な症状から見た病気のサイン、繁殖のサインなど、基本的なだれもが知りたい事柄が簡潔明瞭に述べられている。 さらには、著者が臨床家として集積した多数の実例写真が随所に活用されており、愛猫家はもとより、ブリーダー、アニマル・テクニシャン、獣医学徒、さらには小動物臨床獣医師にとっても実際に役に立つ良書と考える。 本書が、愛猫家のみならず、ネコと生活している方、これから生活しようとする方のネコへの理解を一段と充実させるうえに貢献でき、21世紀を生きるヒトとネコとの調和のとれた共存の道標になればと待望するしだいである。 |
| 平成13年11月 |
| (麻布大学教授・獣I医学博士・現獣医学部附属動物病院長) |