ISBN 4-900659-65-7 C3045
 
  もし本書が10年前に出版されていたら,これは完全なサイエンスフィクションとして読まれていただろう.なにしろ体細胞クローンは10年前までは実現不可能な技術だと思われていたのだから.それどころかサケにマスの子供を産ませる「トンビがタカを生む」技術や,ウシにヒトの染色体を組み込んでしまったり,ほうれん草の遺伝子を組み込んだおいしいブタを作ったり,果ては単為発生マウス「Kaguya」(この名前は日本で最初のSF小説と言われている竹取物語からつけられた)まで生まれている.どれも絶対にSF小説の世界でしか語られなかった未来の技術である.
  本書は,日本畜産学会第104回大会で行われたシンポジウムをまとめたものだが,科学解説書というより,いかにしてその発見に辿り着いたのか,問題を解決するためにはどうすれば良いのか,という道筋が中心に述べられている.その行程がどれほどワクワクするものだったのがよく伝わり,研究とはこんなに楽しいものだったのか,と読者に思わせてしまう.最新の科学が述べられているのにもかかわらず,最後まで一気に楽しみながら読めてしまう不思議な本である.
  そして本書を読んだ後には,おそらく多くの若手研究者が不可能なことへの挑戦を始めたくなるだろう.ただし一般的な考え方で挑戦するだけではダメである.ほかの人とは違うオリジナルな考えで挑戦することが重要なのである.そのオリジナルな考え方を身につけるためにも本書は役に立つだろう.
  各章の初めには著者の研究への思いなどが述べられているが,これはモチベーションと夢を持ち続けるためのアドバイスになる大事な項目である.本書によって,第二の「Kaguya」や「サケからマスをつくる」など世界初のオリジナリティーのある技術が日本の若手研究者から発表されることを私は信じている.
(理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 若山照彦)
いざ“生”の扉へ
─クローンとエピジェネティクスの新展開─
監修 東條英昭(東京大学)
編集 今川和彦(東京大学)
造本・体裁  B5判 並製本 147頁
発行  2006年4月15日
定価  2,520円
(本体価格2,400円)
刊行の趣旨   本書は、2005年に行われた第104回日本畜産学会にて「クローンとエピジェネティクスの新展開」として開催されたシンポジウムをまとめたものです。講演内容を、大学、短大の畜産・獣医・応用動物科学系・理学・生物学系の学生の皆さんや研究者、技術者あるいは臨床家にも十分に理解していただけるように編集し直しました。
  講演内容のまとめと合わせて、各著者の紹介では、現在の研究を始めたきっかけや苦労話、研究(人生)に影響を与えた出逢い、ことば、などについてご執筆いただき、とくに、これから研究者を目指そうと考えている人たちのためのよい参考書になって欲しいと考えてつくりました。
  この本には、21世紀にサイエンティストになり、生き抜くためのヒントがいっぱい詰まっています。それぞれの最前線に立って研究を続けておられる研究者の勇気ある言葉や苦労話も堪能してください。 (今川和彦)
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