基礎と臨床のための
動物の心電図・心エコー・血圧・病理学検査
 
【編集者】

菅野 茂
東京大学名誉教授
局 博一
東京大学大学院農学生命科学研究科
中田 義禮
万有製薬株式会社学術部

【執筆者】

菅野 茂
東京大学名誉教授
局 博一
東京大学大学院農学生命科学研究科
桑原 正貴
東京大学大学院農学生命科学研究科
中田 義禮
万有製薬株式会社学術部
森田 晴夫
前 実験動物中央研究所付属前臨床医学研究所
小林 秀俊
株式会社ソフトロン
内野 富弥
動物エムイーリサーチセンター
勝田 新一郎
福島県立医科大学生理学第1講座
岩瀬 三紀
名古屋大学大学院医学系研究科
加藤 洋介
名古屋大学大学院医学系研究科
横田 充弘
名古屋大学大学院医学系研究科
西村 正彦
名古屋大学大学院医学系研究科
金井 孝夫
東京女子医科大学実験動物中央施設
福崎 好一郎
株式会社新日本科学
佐藤 恵一朗
武田薬品工業株式会社医薬研究本部
宮嶌 宏彰
株式会社新日本科学

【まえがき】

  動物の体内には体液(血液、リンパ、組織間液)がすみずみまで流れており、これによって全身の器官を構成する各組織の細胞に酸素と栄養物が供給され、そこから不要な物質(炭酸ガス、老廃物、余剰水分など)が運び去られる。このような、いわゆる血液循環のしくみは、1628年、当時英国のチャールズ一世の侍医であったウィリアム・ハーベイ(William Harvey)によって発見され、以来、医学の進歩とともに、今日みられるような循環器病に対する高度な診断・治療技術が確立されるに至った。
  血液循環を行う循環器系は心臓と血管系とからなるが、その中心にある心臓が拍動を停止することはまさに死を意味する。それゆえ、近年、癌とともに病死の原因としてますます注目されつつある心臓病対策は医学、獣医学における最重要課題のひとつといえる。一方、循環器用薬剤に限らず医薬品全般あるいは農薬、食品添加物などの化学物質の開発にあたっても、それらの循環器系に対する安全性を的確に評価しておくことは、これまで報告されているような薬禍を未然に防ぐ意味においてきわめて大事なことである。
  医学、獣医学、安全性試験研究では実験動物を用いた動物実験が頻繁に行われているが、そこで得られた成績をヒトあるいは他の動物に外挿するにあたって、十分な配慮が必要なことはいうまでもない。しかし、心機能検査法のひとつとして定着している心電図検査を例にとってみても、これまでの経緯では、記録された心電図の解析にあたって、どのような理論にもとづいて判断を下したら良いか、十分な基礎的、応用的研究がなされないままに、もっぱら、ヒトの心電図の解析法を安易に転用してきたきらいがある。胸部の形状、胸腔内における心臓の位置、心臓そのものの形態的および機能的特性に違いのみられる各種動物を対象とする場合には比較心臓学的立場に立った解釈がなされなければならない。
  ところで諸外国では動物の心電図検査や心エコー検査など循環機能検査法に関する成書が少なくないが、わが国には動物の循環機能検査に関する基礎と実用面の両方を網羅した標準書が見当たらない。そのため医薬、化学、食品部門における薬効試験や安全性試験などに直面している研究者にとっては拠り所となる資料が乏しく、日常的にデータの取得やデータの判読、あるいは報告書の作成などに際して苦労を強いられることが多い。このような事情から動物の循環機能検査法に関する本格的な専門書刊行への要望が関係者から多く聞かれるようになってきた。また、大学、研究所、獣医病院における医学、薬理学、獣医学の研究者や臨床家からも同様な希望が寄せられている。本書はそうした方々のご要望に少しでも応えたいというささやかな動機から企画され今日の刊行に至ったものである。
  本書を刊行するにあたっては、分担執筆頂いた関係者のほかに、貴重な資料を提供して頂いた諸兄の多大なご協力があった。この場を借りて心からお礼を申し上げる。また、このような企画に賛同され、出版を快くお引き受け下さった株式会社アドスリー社横田節子社長ならびに編集、校正にご尽力頂いた同社企画編集室の諸氏に深謝する次第である。
  2003年3月 編集者代表 菅野 茂

【あとがき】

  本書は日本獣医循環器学会における講習会などで中心的に活躍されている専門家の同意とご協力を頂き、立案以来約6年の歳月を経てわが国初の本格的な動物循環機能検査法の刊行を目指して編集作業を行い今日に至ったものである。この間、ICHガイドラインによって安全性試験における循環機能検査の重要性が指摘され、評価バッテリーに関する様々な提言がなされるなど、薬物の循環器影響の評価をめぐる社会情勢も大きく変貌しつつある。
  本書は試験研究に使用される機会の多い主要な動物種(マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル)を中心にして、それらの循環機能検査法に関する基礎的な考え方と技術を具体的な事例に沿って記載することを主眼に置いて編纂された。その中には近年、利用性が増しているテレメトリー法や心エコー検査法なども含まれている。しかしながら、多種類の動物種について循環機能検査法のすべてを記載することは難しく、必ずしも読者の要望を十分に満足しているとはいえない。多くの不備な点をお詫びするとともに、本書がきっかけとなり逐次改善を心がけることにより、将来、わが国における動物の循環機能検査法に関するより理想的な成書が完成されることを期待して止まない。なお、本書の刊行に際して、データの作成や提供などで多数の研究者の方々のご協力を頂いた。とりわけ心エコー検査では、西村正彦博士(名古屋大学医学部)ならびに横田充弘博士(名古屋大学医学部)の両氏のご協力を賜りましたことに誌面をお借りして厚く御礼申し上げます。

  2003年3月 編集者一同
 

 
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