実験動物の技術と応用 実践編
 
(社)日本実験動物協会 編
 
はじめに
 
我々は何のために動物実験をするかというと、大きく2つの目的があります。1つは人類のためであり、具体的には病気を予防したり、治療したりすることにより、人々の健康を維持することが目的です。そのためには、新しい技術や、医薬品を開発したり、あるいは環境汚染を動物を使って調べるようなことが考えられます。もう1つは、ヒトは何者か? という根源的な問いかけです。我々はどこから来たか? 我々は何者か? 我々はどこに行こうとしているのか? ということを明らかにしたいという欲求です。
このどちらの問いかけに対しても、動物実験というものが必要です。前者ではヒトの代替として、いろいろな評価に動物を使用し、その結果をヒトにあてはめ(外挿し)ます。後者では、ヒトとほかの生き物を比較することにより、霊長類の中のヒト科ヒトという存在を明らかにしよう、ヒトの生物学的意味を明らかにしようとするものです。
このように、生命科学にとって基本的で重要な動物実験は、研究者、動物技術者、実験動物の三位一体ではじめて成立するものです。優秀な研究者だけでは、本当のよい実験はできません。適切な実験動物と実験動物を適切に維持・管理する優秀な技術者が必要です。3つの要素のどれが欠けても、動物実験は成立しません。
この入門編には、実験動物の日常の飼育・管理作業に必要な最新の基礎知識と技術を盛り込みました。また、実験動物科学だけではなく、実験動物福祉の面からも、必要な知識を取り上げました。とくに、今回は本書を利用する若手の人たちの先輩に当たる実験動物技術者の方々を中心に、経験豊かな各分野の研究者、技術者に執筆を依頼しました。今までに培われた経験、技術および新知識をわかりやすく、かつ簡潔に纏めてもらいました。本書は図も多く、また随所に工夫が込められています。すでにこの分野で豊富な経験を持つ方でも、原点に戻り自分の経験を再整理してみるという点で入門編は有用です。また、入門編を突破したらさらに実践編へとステップアップしていただくよう期待しております。 
本教科書の改訂にあたり、獅子奮迅の働きをされた鍵山直子編集委員長、また本教科書のまとめにご尽力いただいた大和田一雄教育認定委員長他、委員の方々、快く執筆に協力していただいた著者の方々に御礼申し上げます。最後に、本書の出版にあたり、いろいろと無理をきいていただいた株式会社アドスリーの皆様方に謝意を表します。
 
平成16年3月
 
社団法人日本実験動物協会副会長
教育認定担当理事
吉川 泰弘
 

株式会社アドスリー