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超高齢社会 ―進む少子化、近づく多死社会―

超高齢社会 ―進む少子化、近づく多死社会―

商品コード: ad70013

著者: 坂田 期雄

発行日: 2011年4月20日
判型: A5判
頁数: 296ページ
書籍コード: ISBN978-4-9-904419-16-8 C0036
定価:2,420円 (本体価格:2,200円)

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日本はこの大波を乗り越えることができるのか!?
いま何が問題で、どうすればいいのか!? 政治には何ができる?

【推薦】 元総務大臣 片山 善博
日本の人口が半分になる とくに若年層(支え手)が大激減
どうする!地方現場からみる

本書は、地方自治体、福祉現場を20数年見てきた著者がその経験の上
に立って、わが国の現在の立ち位置をよく見定め、超高齢社会をどう受け止め、
どう乗り越えるか、そのチエ、ノウハウを地方現場の目線で眺めていこうとするものである。

著者インタビュー

著者紹介

坂田 期雄(さかた ときお)

東洋大学名誉教授、西九州大学大学院客員教授、地方自治経営学会理事

昭和29年東京大学法学部政治学科卒業、自治省(現総務省)入省、42年群馬県財政課長、県民生活部長、48年自治省公営企業第一課長等を経て、50年自治大学校部長教授、54年東洋大学法学部教授(地方自治、都市経営論)ならびに都市経営総合研究所を主宰。平成9年東洋大学より博士(社会福祉学)を受ける。同11年東洋大学名誉教授、西九州大学(地域福祉)、現在、同大学客員教授。なお、地方自治経営学会(片山善博会長)の理事兼事務局長として作成昭和59年学会設立以降25余年にわたり、毎年の研究大会(50回開催)のプログラム及び運営の責任者としてあたってきた。主著は『明日の地方自治(全6巻)』(平成元年、ぎょうせい)『介護保険』(平成14年、ぎょうせい)、『自治体最前線(全4巻)』(平成14年、ぎょうせい)『分権と地方改革』(平成8年、時事通信社)、『地方自治の論点』(共著:平成10年、時事通信社)など。

本書について

  • 制度解説書、説明書的ではなく、「今何が問題なのか」そのためには「どうするか」を考える。
  • 中央(省庁)の立場からでなく、地方の立場、とくに実際の福祉、介護、医療等の現場に入って、そこからのナマの声、ナマの主張を多くとり入れた。また、実際に取り組まれている各地のすぐれた先進事例、地方現場のナマの事例(成功、失敗もあわせて)を多くとり入れた。
  • なるべく地方の現場に入って歩き、さらに様々な方法(新聞、経済誌、各種書籍、雑誌等)でナマの情報、事例を多く集め、その上に立って「見方」「考え方」をまとめた。

主要目次

1 はじめに―超高齢化社会とは:増大する社会保障費と消費税アップ問題―
急速に進む少子高齢化に対して、これまでにとられた社会保障費の抑制策、急務とされる消費税率の引き上げについて考える。
2 これまでの日本の福祉を支えてきたもの―「家族の介護力」「地域支えあい」ともに次第に弱く―
低下する、家族・地域・企業による「介護力」。公的な介護保険の責任能力、地域による助け合いの領域について考える。
3 介護保険、介護サービス
急増する介護費用。公費投入のための消費税率の引き上げ、それを行った場合の見通しを論じる。
4 進む少子化、人口減少社会、どうとめるか―このまま進んだら日本はどうなる―
止まらない少子化の背景を概観し、どう食い止め、改善していくかを考える。
5 新たに介護予防事業が登場―これへの批判と問題指摘―
介護予防事業の背景、地域包括センターの問題点を全国各地からの批判、問題指摘から見る。
6 近づく多死社会―あなたは終末期、「死」とどのようにして向き合うか、迎えるか―
終末期医療、孤立死・孤独死の増加、尊厳死など、近づく「多死社会」にどう向き合うかを考える。
7 介護職員の離職増加とその待遇問題
相次ぐ職員の離職、人材流出、事業所の閉鎖。介護の現場の問題を考える。
8 在宅介護
訪問介護事業所の閉鎖、ケアマネージャーへの締め付けなど、「在宅」が抱える問題から、その良し悪しについて考える。
9 施設介護(その1)
特養ホーム、老健施設の現状から、そのあり方、利用の仕方を考える。
10 施設介護(その2)
グループホーム、居宅サービス、宅老所、ケアハウス、軽費老人ホームなど、様々な形で行われている施設介護を概観する。
11 医療
今世紀最大の課題である認知症、脳梗塞を取り上げ、高価な薬剤の問題など、高齢者医療にについて考える。
12 長寿の時代
100歳以上がここ10年で1万人から4万人に増加。長寿社会と長寿の秘訣を論じる。
13 変わる葬式と墓地
高齢化が進むにつれ、個性化してきた葬儀。大都市で増えてきた「合葬式」。変わりゆく葬儀について概観する。
14 高齢者虐待、児童虐待
増加の一途を辿る高齢者虐待、児童虐待。その背景を探る。
15 定年・年金
高齢社会を迎えた今、60歳での定年は早すぎる。定年と年金制度を考える。
16 生活保護
急増する生活保護、生活保護を狙った「貧困ビジネス」など、生活保護と貧困の問題を考える。
17 成年後見制度
制度の発足から10年。期待された「市民後見人」は伸び悩んでいる。成年後見制度を見つめなおす。
18 ひろがる無縁社会
その存在が続々と明らかになった行方(生死)不明の高齢者、希薄になる血縁・地縁・社縁。ひろがる無縁社会を考える。
19 現代の貧困、とくに若者の貧困
実は「貧困大国」の日本。6人に1人は貧困状態だといわれている。若者の貧困問題について考える。
20 高齢化する都市・変わる都市
商店街の衰退、老境迎えるニュータウンなど変わりゆく街はどうなるのか? これからの都市づくりを考える。

内容紹介

「人口半減時代」への突入

わが国の人口は、この50年間で4割以上にも急増、これと並行して、経済も国民生活も驚異的な高度成長を遂げた。しかし、2006年をピークに人口は減少に転じた。これまでの長い日本の歴史の中で、人口は常にほぼ一定か、上昇という傾向だったが、今回はじめて「下降へ」と180度異なる方向転換を見せたのである。そしてこの日本の人口は、今の1億2,800万人から今世紀末には、ほぼ半分の6,241万人にまで低落する。まさに「人口半減時代」への突入である。

今の社会保障制度の構造が足元から崩れる

これは、単に、人口の総数が減るということだけではない。"高齢化"と "少子化"が同時進行で進むため、頭の方の「高齢者層」は増えるが、下の方の「若年層(現役世代)」は逆に減るという、人口構成の中味、形が大きく変ってくる。「支えられる側」(上の方)の高齢者層は増える反面、「支える側」(下の方)の若年層(現役組)は少子化で年々減少していく。2000年には、「4人で1人を支える」という体制だったのが、これが、「3人で1人」「2人で1人」をそして、2050年には「1.5人で1人」を支えるという極めて不安定な構造になっていく。「若年層(現役層)が働いて税金や年金掛金を支払い」「高齢者はそれによって支えられる」という今の社会保障制度の構造が足元から崩れようとしている。
 また、長寿化によって増加するのは、元気な人だけでなく、認知症や寝たきり等の老人も増えてくる。これを受け入れる特養は、すでに満杯で、現在でも入所までに「数年待ち」という状況だが、このままでは、今後、入所はさらに一層困難となってこよう。医療、看護、介護等の要員、スタッフの確保も高齢化の進展にとても追いついていけない。すでに外科、麻酔科、産科、小児科等では、医師が不足し、診療科閉鎖の病院も出てきている。
 これまでは、高齢化は、都市部より地方で大きく進んだが、これからは、逆転して、都市とくに東京など大都市で大きく進む。ところが、これら大都市では、特養等の施設整備が著しく遅れ、さらに地価が高いため、今後の新増設にはあまり期待できない。これから急激に増えることが予測される大都市での要介護老人を、どこでどうやって受け入れるのか。

ごく普通の生活をしている人にも、明日突然に訪れる

これまでは、わが国には、高齢者に対しては、国、自治体による正規の保護、援助のほかに、「家族」「地域」「企業」による事実上の支えがあり、助け合いがあった。いわゆる「日本型福祉」がひろくあり、それによって高齢者はかなり守られてきたといえるが、それも近時、急速に弱まり、このため、今日では、介護、福祉の制度の枠からはずれると途端に、どこからも支えてくれるものがなく、孤立した介護難民に一度に落ち込んでしまう。そういう社会へと変わってきている。
そしてそれは、公園や広場などで寝泊まりしている路上生活者などごく一部の人たちの話ではなく、ごく普通の生活をしている人たちに、それは、明日にでも襲ってくる。それは、今までの「上り」「上昇」カーブの社会ではあまり見えなかった、最近の「下り」「減少」社会になって始めて見る社会構造の大きな変化、恐ろしさでもある。
本書は、このような時代認識―上りカーブが下りカーブへと変る一大転機、変革の時―という認識の上に立ち、わが国の現在の立ち位置をよく見定め、その上に立って、押し寄せてくる超高齢社会の大波をどう受け止め、どう乗り越えるか、どう生き残るか ― そのチエ、ノウハウを地方現場の上に立って眺めていこうとするものである。

読者感想

――この本の、1番目の読者として――
私たちは、このことを「常識」として、持っていなければならない

「和を以て貴しとなす」―この本を読んで想起したことばです。
今を去る千数百年、聖徳太子という先輩によって出された「憲法十七条」の第一条の冒頭の文です。続きがあります。
   忤(さか)ふること無きを宗(むね)とせよ。
   「人」皆党(たむら)あり、また達(さと)れる者少し。

ここを以て、あるいは君父に順わず、また隣里に違ふ。
しかれども、上和ぎ下睦びて、事論(あげつら)ふに諧(かな)ふときは、事理自づからに通ふ。「何事」か成らざらむ。「人皆」が、ある目的を達しようとして、協同作業を起こすときの心構えと実行方法です。それがかなえば、「何事」も「成らないことはない」という励ましのことばです。

私が本の出版の編集に携わるようになって、半世紀になります。その最初の頃、編集者というのは、著作の最初の読者だから、心してかかるように、という忠告を受けました。

この度の坂田先生のお原稿に接し、読み始め、読み終わって、あまりのことにがく然としました。日本人は、これからこの事態に対処して行かなければなりませんが、未曽有の挑戦になります。これまで、地球上のどこかに解決の方法を求め、根拠にして対応してきたのですが、この問題に手本はありません。どこにも例のない、世界の現実にない事態に、それこそ初めてとり組むことになったのです。

しかし、考えようによっては、たいへんにやりがいのあるテーマである、ということもできます。

もちろん、それに向かう人たちは大変です。なにしろ、世界で初めての事態に直面するのですから。それでは、今まで、大人たちは何をやっていたのだ。弁明をすれば、夜昼なしに、世界から文句を言われながら働いてきました。その前は、それこそ、目茶苦茶なスケジュールの父母をみてきました。その前は、戦争につぐ戦争です。これまで、日本人は一生懸命に働いて来たのは事実です。ところが、結果としてよかったと判断しうる状態にはなっていません。なぜだろう、と首を傾げています。

今私が出来ることといえば、こういう現実であっても、真向うから受けとめて解決して行こうと努力する将来の後輩たちに、敬意をもって工―ル(応援歌)を送ることでしょう。それは、先輩たちの難局に立ち向かったときのことばを思い出すことでしかありません。

1つは、江戸時代の中期に出た上杉鷹山さんの和歌です。
  成せば成る 成さねば成らぬ 「何事」も
    成さぬは「人」の 成さぬなりけり

 これを知ったとき、私はむかしの人は、元気だなあ、とてもかなわない、と概嘆しました。今回、この中の「人」は、参加を予定された人たち、憲法十七条の「人」であり、「何事」も同じと気付きました。
そして、「和」に参加する個人への応援歌ですが、鷹山さんの少し前、戦国時代に、山中鹿之助さんという先輩がいました。彼は逆境に遭って、三か月に祈りました。
  憂きことの なおこの上に 積もれかし
    「限りある身」の カためさん

むかし、私は、しんどいなあ、と思いました。
今、これは、「限りある身」の限界への挑戦であり、それは有限の生だからこそ価値を見出すことのできるすばらしさだということがわかります。
そして、この難局を支え、受け持つ人々の、理想の心境です。
  我が物と 思えば軽し 傘の雪

次に、実行しなければなりません。その指針としては、明治の初め、政治の中心にいた大久保利通さんの心構えです。若い徳富蘇峰さんに伝えたことばです。
  急ぐな、あせるな 

他より早く行こうとすれば、「人」を置いていくことになります。「和」を志すとは、全体として動かなければ成り立たない、と考えることです。大久保さんの置かれた立場を考えれば、ものすごいことばです。

次に、私には、何が出来るのか。
それを「認知症」にならないようにすること、としました。笑わないでください。真険なテーマなのです。

方法としては、江戸時代の、佐藤―斎さんのことばです。
  老いて学べば朽ちず。

この年になっても学ぶ。
その結果としての以下の対策は、はたして効果があるかどうかわかりません。しかも、これまで私が過ごして来た中から身近に選べるものに限定されます。認知症とは、脳に起こる病態です。それなら、脳が健康であればいいはずです。出来ることは読書。脳の思考力を保ちます。目につく所から拾いました。哲学。とりあえず、デカルトの「方法序説」、寺田寅彦の「日本人の自然観」から始めました。

科学は苦手ですが、ファラデーの「ローソクの科学」、ユークリッドの「幾何学」を目につく所に置きました。文学は、古典として「徒然草」、情操をよみがえらせるために、堀辰雄の「大和路信濃路」、国木田独歩の「武蔵野」にしました。

そして、これらを音読することにします。音読すると、黙読と違い、間違いが目につきます。気がつけば一々直していきます。それに、、自分のことばに出しての表現力の貧しさがよくわかります。

ただ受動的なだけでなく、脳に新しい働きを加えるため、日本の古戦場をめぐり、そこで戦われた古人の作戦の論理を文章化してみることにしました。読書だけでなく、自分で文章にせよ、というのが大先輩の叱言でした。

皆さんは、とくに若い人たちは、大人たちは何をやっていたのかと、批難するかもしれません。たしかに、それは当たっているのでしょう。
しかし、ここまで来て、過去の反省は未来を目指すときに必要なだけであり、これからの日本の未来は、誰か賢人が計画したものを、衆が実行して得られるものではないようです。

50年先の未来は、その間にあなたが成したものに、同じく他の人が成したものを、単純に加えたものです。皆さんの成果の、「和」でしかありません。それ以外の未来などないのです。今のあなた方を見ていれば、私は50年先の未来を見ていることになります。
ぜひ、笑って、明るく、しなやかに。がんばってください。
(編集子、71歳)

[読者の皆様へ]
ぜひ、この本の読後感をお寄せください。そして、ここに収載させてください。
以上は、たしか、10日前あたりに書いたのである。その後に、東北関東大地震が来ました。次々に知らされる現地の状況に、ただただ呆然とするばかりでした。なくなられた方々には、心から哀悼の念を捧げます。

また、被災された方々には、できるだけ早く、復興の実をあげられますよう、祈りあげます。起こったことは、乗り越えるしかありません。また、やってくることも避けては通れません。ここでは、お互いに、お互いを、日本人を信じましょう。そして、ともにがんばりましょう。


「超高齢社会」と「東日本大震災」
   ―「超高齢社会」坂田期雄著を読んでー 
            重田 昇(64歳)
      株式会社 元気21総合研究所 主宰

3・11という人類史上未曽有の大災害は、人間の生きる意味と将来のあるべき姿・形・ビジョンを、まったく変えてしまう大事件であった。文明と文化のあり方から、日々の生きるというくらしのあり方まで、その一切が、再構築されなければ、人間には、未来がない。

大地震、大津波の天災は、昔から、飢餓とともに、人類の最大の天敵であった。衣食住(食べる、寝る、着る)と薬・医者は、生きるための必須条件である。生、老、病、死は誰も避けて、通ることができない。更に、今回は、原発事故という人災まで加わった。文明がうみだした、すべての機械は、電気という工ネルギーなしでは考えられない。

人カ、風力、水力、火力と、だんだんと、膨大な工ネルギーが必要になって、終に、人間は、原子エネルギーを開発し、手に入れたかに見えた。一日の生活を考えてみる。歯みがき(水道)トイレ(自動)炊飯、冷蔵庫、掃除機、テレビ、電子レンジ、電話、パソコン、クーラー、風呂、(家)には、エネルギーを必要とする機器があふれている。外に出れば、車、エレベーター、電車、船、飛行機、会社、工場、商店、膨大なエネルギーが使用されている。戦後六十余年、われわれの文明が作り出した、生活を快適にするための、便利にするための、モノばかりである。

深く疑うこともなく、文明による"豊かさ"を享受してきた、日本人である。"一億総中流"と妄信して、あふれるものを消費する"美徳"を、謳歌してきた、日本人であった。高度成長という名のもとに。そして、日本が、経済が失速して、失われた、10年、20年で、繁栄の時代が終わった。

心の時代、コンクリートから人へと叫ばれながら、文化は、いったい、どうなったのか。文学、音楽、絵画、宗教、建築、芸能、芸術、文化は、文明にカ負けして、片隅へと追いやられ、モノの時代は、数と量を誇って、いまも、続いている。

人類は、人口問題が、最大の危機であると警鐘を鳴らし続けてきた。もう、数十年前から、地球の資源、エネルギーでは、50億人以上は、食べて、生活することはできない、と専門家たちは、予測していた。

国連によると、2011年、つまり、今年の10月で、世界の人口は70億人に達する。中国、インド、アフリカ、その他の発展途上国の人口増で、この10年毎に、10億人単位で増えてきたのだ。2100年には、終に、100億人に達する予測だ。(食料、水、エネルギーの供給は、果たして可能だろうか?)
その一方で、先進国、日本、イギリス、フランス、イタリア、韓国などでは、人口は減り続けて、少子高齢社会に突入している。

「超高齢社会」(坂田期雄著)は、現在の日本の人口減から発生する問題を、福祉、介護、医療、経済、年金の分野から、分折を試みている。資料、データーはもちろん、(現場)での実例を加えて、グラフや表を活用して、"日本の現在の姿"を浮き掘りにしている。

地域社会の崩壊、限界集落から都市での、孤独死、無縁社会化、若者たちの貧困、正社員・契約社員・派遺社員、パート、アルバイト、フリーター、ニートと、「階層化する職場」の実体と、寒々しいほどの、厳しい、日本社会の実態が、「超高齢社会」という本の中にある。さて、どのようなビジョンを描けるのか? 読者の一人一人が、(現実)を知って、それぞれが生きる、地域で、職場で、問題意識を共有して、実践するしかあるまい。もちろん、国、県、市町村が、日本人が、元気で、将来を生きぬくために、ビジョンを画き、計画を立てて、社会を、先導しなければならない。

衣食住+人口問題+エネルギー問題。"原発事故"は、文明のあり方を、大転換する、人類の危機である。

人口問題の根底にあるエネルギー問題を、放っておく訳にはいかない。生きている限り、誰もが、エネルギーを使い、消費する者である。責任は、一人一人の、生き方・考え方にかかっている。

逃げることも、避けることも、無関係だと言いのがれをすることも出来ない。"原子力"は、人間がコントロールできない。数十万年とか、百万年とか、何億年とか、原子力の単位は、たかだか、百年くらいしか生きることのできない人間には、怪物・魔物だとしか言えない。科学の(知)が及ばない。
不可能である。不可知である。不確実である。不可測である。人類の(知)は、まだまだ、(宇宙)単位の時間、空間から考えると、小さな、小さな一歩にすぎない。原子力は手に負えない。

人間は、文明から文化へと、一歩を進めるべきではないのか。「超高齢社会」は、人間が、成熟する社会であるべきだ。

20年以上、全国の、企業や市町村を歩いた。約2500ケ所くらいの市町村を尋ねた。エイズ、O157、生活習慣病の予防と実践。ウォーキング講習会では、全国の住民の方々と、その地元の町を歩いた。

今回、東日本大震災で、甚大な被害を被った、釜石、大船渡、広野、志津川、ひたちなか市、旭市......ほとんどの市町村を訪問している。太平洋に面した、日本の、美しい、風景と、素朴な、共同体を重視して生きている人々、一瞬にして、一切が、消えた驚愕。(無)である。(無常)である。

一緒に歩いた人々の顔、宿ったホテル、民宿、国民宿舎......提防が、舟が、電柱が、車が、家が、役場が、学校が、眼の中に残っている風景が、一気に(無)へと雪崩れ込む恐怖。3.11は、人間の、意識を完全に変えた。

東北は、高齢者が多い。このまま推移すると、人口は、900万人から500万人へと、半減すると予測されている。震災後の体育館などへの避難者の方々は、3分の2が、高齢者である。

再建、復興へは、若い力、若い人たちの活力がいる。魅力のある、新しい街の出現が望まれる。エコタウンなど、将来の日本の、世界のモデルになる、夢のある高齢者社会の知恵が結晶した"東北の街"を望みたい。
"快適と便利"を追求してきた、日本の理念そのものが、新しく、生まれ変わらなければなるまい。

生きるーー大事とは何か、必要とは何か、3・11は、そのことを、教えてくれたではないか。その時、日本人は、誰もが、同じ地点を見て、同じことを感じ、同じことを考えていたと思う。一緒に生きよう。あなたは私だ。
何か、してあげたい、困っている人に。そう、人間は、何度でも、出発できる。
(無)からの出発であっても、一緒に。

目 次

1 はじめに―超高齢化社会とは:増大する社会保障費と消費税アップ問題―
2 これまでの日本の福祉を支えてきたもの―「家族の介護力」「地域支えあい」ともに次第に弱く―
3 介護保険、介護サービス
4 進む少子化、人口減少社会、どうとめるか―このまま進んだら日本はどうなる―
5 新たに介護予防事業が登場―これへの批判と問題指摘―
6 近づく多死社会―あなたは終末期、「死」とどのようにして向き合うか、迎えるか―
7 介護職員の離職増加とその待遇問題
8 在宅介護
9 施設介護(その1)
10 施設介護(その2)
11 医療
12 長寿の時代
13 変わる葬式と墓地
14 高齢者虐待、児童虐待
15 定年・年金
16 生活保護
17 成年後見制度
18 ひろがる無縁社会
19 現代の貧困、とくに若者の貧困
20 高齢化する都市・変わる都市

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