波長より細かい格子のナノ光学

羽根 一博 東北大院工

【用語解説】

回折光学素子:
マイクロメートルオーダの周期を持った格子構造に光を当てると,顕著な回折光が発生します.光の波としての性質により,光をさえぎる物体の影の部分にも光が回り込みます.この現象は回折と呼ばれます.格子状の物体に光があたると,各格子の隙間から回折光が発生し相互に干渉します.このため,干渉が強め合うような限られた方向に強い回折光を発生します.この回折光の方向と強度は格子の周期と透過率(反射率)に依存するので,それらを設計し,レンズやプリズムの効果を持たせることができます.レンズは同心円の格子構造により実現できます.このように,格子の回折効果を用いた光学素子を回折光学素子と呼びます.

偏光素子:
光の電磁界は横波なので,光波の振動は進行方向に垂直に2方向の振動が可能です.偏光素子は2方向のうち1方向の振動の光を透過させる素子です.液晶ディスプレイでは偏光素子と液晶を組み合わせて表示を行っています.偏光素子にはいくつかの種類があります.金属細線の格子を用いたものは古くより知られていますが,偏光により反射と透過光に分離でき,広い波長帯域で偏光素子として動作します.最近の微細加工により周期の小さい金属細線が実現できるので,近赤外や可視光領域で金属細線の偏光素子が実現できるようになってきました.

ホログラフィ:
普通のカメラは物体の2次元の濃淡像をフィルム面に記録しますが,ホログラフィでは,物体からの波面を干渉縞として記録します.干渉縞として記録されるので,フィルムの上にはサブミクロン周期の細かな縞が記録されています.再生においては,記録された縞が回折格子として作用し,物体から発生した光波と同じものを回折により発生します.これにより立体的に物体を見ることができます.

リソグラフィ:
マイクロ・ナノメートルサイズの構造の製作には,薄膜堆積技術,微細パターンの転写技術,エッチング技術を組み合わせて行われます.精密な構造を何回も繰り返し製作するために,望みの形状をパターンとして写真の縮小転写技術により複写します.転写はレジストと呼ばれる感光材料を用いて行われます.レジストを現像すると,露光された部分,あるいは露光されなかった部分のレジストが残ります,残ったレジストを保護膜としてエッチングにより,レジストの下の薄膜を取り除き,レジストのパターンをその下の薄膜に写すことができます.このように,写真の露光の技術と薄膜のエッチング技術を用いて,微細加工を行う方法をリソグラフィと呼びます.

エッチング:
材料を溶かして除去することをエッチングと呼びます.リソグラフィにより微細な構造を実現するための基本技術です.エッチングにおいては,古くから溶液が用いられて来ました.たとえば,シリコンを溶かすにはアルカリ溶液(KOHなど)を用いることができます.ガラス材料はフッ酸で溶かせます.現在では,1μm以下の極めて微小な構造を実現する必要があるので,溶液の代わりに,プラズマやガスが用いられます.プラズマはガスの放電により作られますが,その中にはイオンと活性種が存在し,それらの高いエネルギーや反応性を利用して,材料を削ることができます.

第17回「大学と科学」公開シンポジウム