蝶の羽根はナノ構造
木下 修一 大阪大学
私たちの身近にいるさまざまな色の蝶。その翅を覆うわずか0.1mmほどの鱗粉は、光の波長よりもはるかに小さい、驚くべきナノ構造で飾られている。その規則性と不規則性を共存させた構造が目にはやさしく、しかし、輝くような色を作り上げている。
【用語解説】
多層膜干渉・誘電体多層膜:
いくつかの異なる物質でできた層が積み重なってできた膜を誘電体多層膜という。特に2種類の層が交互に積み重なった層は、特定の波長の光を選択的に強く反射するので、完全な反射を必要とするレーザー鏡やいろいろな色を演出するラッピングペーパーなどに用いられている。
薄膜干渉:
薄膜は膜の両面で反射された光が干渉していろいろな色をつける。これを薄膜干渉といっている。シャボン玉の色や油膜の色などは薄膜干渉の結果できた色である。特に、基板となる物質に屈折率の異なる物質をコーティングして薄い膜をつくり、膜の表面と裏面で反射した光の波がちょうど打ち消しあうような厚さにすると反射が起きないので、基板表面での反射を抑えることができる。メガネや双眼鏡にはたいていこのコーティングがついている。メガネを斜めにすると色がついて見えるのはこの膜によるもの。
チンダル散乱:
光の波長程度かもっと小さい粒子が分散している液体に光をあてると、これらの粒子の散乱により、光の通る道筋がはっきりと見えることができる。これをチンダル現象といっている。チンダル現象によって起こる光の散乱をチンダル散乱という。粒子の大きさが光の波長より小さいときは、散乱は短波長の方が起き易くなるため、チンダル散乱は青色に見える。牛乳をうすめると青っぽく見えるのはこのためである。
拡散光:
光が不規則な物質にあたって、いろいろな方向にほぼ均一に広がった光を拡散光といっている。照明で電球の表面をすりガラスにするのは拡散光を作るためである。拡散光は目にやさしいので、さまざまな照明に用いられている。
翅鞘・鱗片:
翅鞘はさやばねともいう。甲虫類の前翅は硬くキチン化して、鞘のように体を保護している。とまるときは薄い後翅を折りたたんで硬い前翅の下に入れている。この前翅のことを翅鞘と呼んでいる。鱗片は鱗粉ともいう。チョウや蛾のような鱗翅目や甲虫類にある体表面にある扁平な突起のこと。
第17回「大学と科学」公開シンポジウム