光のナノ集積回路
大津 元一 東京工業大学
次世代の高速大容量光ファイバ通信システムを支えるためにナノ寸法の光デバイスとその集積回路の実現の可能性について述べます。ここではレーザーなどの既存のデバイスはもはや主役の座を降ります。あたかも「真空管からトランジスタへ」、「船から飛行機へ」のごときパラダイムシフトの到来です。
【用語解説】
回折:
「かいせつ」と読む。光が狭いすきまを通り抜けるとき方向が曲がって、陰に回り込む現象。微粒子に光が当たるときにも回折はおこり、直進する光のほかに曲がって進む光も現れる。回折のために光を凸レンズで集めても点にはならずぼけが生ずる。そのぼけの大きさは光の波長に比例し、穴の大きさに反比例する。
ナノフォトニクス:
ナノ寸法のデバイスを作り、使い、高性能の光システムを実現して、高度情報化社会の要求に応える光技術である。ナノ寸法のデバイスを作るためには、その材料としての物質の大きさがナノ寸法であるだけではなく、情報を伝える光がナノ寸法でなくてはならない。このようなナノ寸法の光は近接場光と呼ばれる。すなわち、ナノフォトニクスの実現には近接場光の利用が不可欠である。
光スイッチ:
入口に入ってきた光のエネルギーを出口まで送るか、送らないかを調節する光部品である。出口まで送られる場合、スイッチが閉じていることに相当する。送られない場合はスイッチは開いている。スイッチの開閉は電気を使う場合と、光を使う場合とがある。光を使う場合には入口に入ってきた光とは別の光を使う。
化学気相堆積法:
気体の化学反応を利用して、気体中の分子を分解し、分子を構成する特定の原子を基板の上に積み上げる技術。化学反応を起こさせるためには気体に熱を加えたり、光を当てる。分子を分解させることは解離とも呼ばれている。
量子サイズ効果:
物質の寸法が小さくなると、その中の電子は自由に運動できなくなる。そのような状態は量子力学により説明されるが、それによると電子のエネルギーは任意ではなく、特定の値しか取り得なくなる。この状態で物質は巨大な寸法の場合とは著しく異なる性質を持つようになる。この性質によって引き起こされる現象は量子サイズ効果と呼ばれている。たとえばナノ寸法の半導体微粒子(量子ドットと呼ばれている)から発生する光の波長は寸法に応じて短波長になる。
第17回「大学と科学」公開シンポジウム