熱のでないナノランプ

高原 淳一 阪大院基礎工

【用語解説】

白熱電球:
電流が流れる性質を持つ物質を細く線状にしたもの(フィラメント)に電流を流し、温度を上げて熱輻射させることで、光を輻射する光源。1879年に英国のJ.W.Swanと米国のT.A.Edisonによりほぼ同時期に発明された最初の実用的な電気照明である。現在のフィラメントには金属中で融点の最も高いタングステンからできた二重コイルが用いられており、燃焼を防ぐために希ガスを封入したバルブとよばれる容器中に入っている。光の大部分は目に見えない赤外線として輻射されるため、電力を可視光に変換する効率が蛍光灯などに比べて低い。ハロゲン電球はバルブ中にハロゲン元素を封入して、フィラメントの蒸発を抑制し長寿命化を実現した白熱電球の一種である。

赤外線:
光は電磁波という波であるが、波の一周期の長さである波長が可視光より長く、マイクロ波よりも短い光で、波長が780ナノメートルから数ミリメートルの光のこと。「赤外」とは可視光の波長が380~780ナノメートルの狭い範囲にあり、600~700nm付近の光は赤く見えることから、赤の外側という意味である。人間の目には見えないので、照明においては無駄なエネルギー輻射として扱う。人体に当たると光に比べて深く侵入するため、熱作用が大きく暖房や加熱などにも利用される。

熱輻射:
熱の輻射ではなく、熱による電磁波の輻射のこと。熱輻射は温度が低いときは赤外線が大部分であるために肉眼では見えないが、温度を上げるにつれて可視光が増え、赤、黄を経て白色に輝くようになる。熱輻射スペクトルはプランクの法則とよばれる分布に従い、あらゆる物体からは、温度が低くてもその温度に応じた電磁波の輻射がある。20世紀初頭に溶鉱炉の中で高温となって輝く鉄からの熱輻射スペクトルを理論的に説明しようとする試みの中から量子論が誕生し、その後およそ20年を経て量子力学が完成した。

共鳴:
共振ともいい、振動を扱う物理学の広い分野(力学、音、電気回路、光など)にわたって現れる現象。一般的に定義すれば、振動系を外部から強制的に振動する場合に、外部力の1秒間における振動の回数(振動数)と振動系によって決まる固有の振動数(固有振動数)が一致すると、振動の振幅が非常に大きくなる現象のことを共鳴という。共鳴を積極的に用いるために設計された振動系を共鳴箱あるいは共振器という。楽器を例にとると、笛は人間が強制的に息を吹き込んで、笛の中に共鳴を利用して固有な振動を起こすことにより、音を出すものである。

共振器量子電磁力学:
量子電磁力学(quantum electrodynamics)とは電磁場と電荷をもつ粒子からなる系を記述する相対論的場の量子論であり、頭文字をとって英語でQEDという。その中で特に、共振器(cavity)中の電磁場と物質との振る舞いを研究する分野が共振器量子電磁力学(cavity QED)である。鏡を二枚合わせた共振器中に置いた原子からの自然放出は、自然の状態とは異なる性質を示すことが知られており、これをcavity QED効果とよぶ。この効果は基礎物理だけでなく、半導体レーザーや分子からの発光など様々な分野に観測され、高効率発光素子への応用研究がすすめられている。

第17回「大学と科学」公開シンポジウム