透明なナノ構造を光で測る
梅田 倫弘 東京農工大学
ガラスやプラスチックなどの透明な物体を光が通るとき、偏光状態が変化します。この現象を利用して、透明体内部の力の懸かり具合や分子配列など、透明なナノ構造を画像化する新しい顕微鏡の原理と観測例を紹介します。
【用語解説】
複屈折:
ある媒質に偏光が入射したとき、互いに直交する二つの振動する成分がそれぞれ異なる屈折率、すなわち異なる速度で進行方向に進み、その結果、媒質中を通過した二つの光波に位相差が生じる現象で、二つの振動成分が、水平と垂直に振動する直線偏光に対する複屈折を直線複屈折、左右円偏光である場合を円複屈折あるいは旋光性という。一般に複屈折という場合、直線複屈折を表すことが多い。
光弾性効果:
透明材料に光が通るとき、外力によってその方向とそれに直角な方向の屈折率が異なる複屈折を示す現象を言う。外力に対する複屈折の変化の割合を光弾性定数と言い、材料によって決まった値を示し、外力に比例して増大する正の光弾性定数と減少する負の光弾性定数を示す材料がある。
偏光:
光は電磁波の一種で、進行方向に対して電界や磁界が直角方向に振動する横波である。このとき、光の電界成分が進行方向に対して一定の面で振動しながら伝搬する状態を偏光と言い、その面を偏光面という。偏光には、光の進行に対して偏光面がある一定の平面内にあるものを直線偏光、螺旋状に進行する偏光状態を楕円偏光と言う。楕円偏光のうち、軌跡が完全な円である場合、円偏光という。これらは回転方向によって右円偏光、左円偏光がある。
軸ゼーマンレーザー:
He−Neレーザーの光軸方向に磁場を加えることによって、左円偏光と右円偏光が同時に得られるレーザーを言う。二つの偏光状態の発振周波数には、磁場の強さに依存した周波数差があり、典型的には100kHzから1MHzである。レーザー干渉計測などの光源に使われる。
近接場光学顕微鏡:
一般の光学顕微鏡はレンズを用いるため、観測できる最小の構造は光源の波長程度(0.5ミクロン)である。これに対して、レンズを用いずに微小な開口(直径100nm以下)を試料に接近させてその上をなぞりながら観測することで、分解能を飛躍的に改善した新しい概念の顕微鏡。試料に接近させてその上を走査する開口として、光ファイバーを加工して先端の大きさを10nm程度にした光ファイバープローブや、金属を鋭く加工した無開口金属プローブなどがある。
第17回「大学と科学」公開シンポジウム