NPO「災害から文化財を守る会」
パイロットプロジェクト
 
国をはじめ関係者の人々の努力により、文化財の消火施設が整備されていますが、それは放火や内部の失火によるものであり、決して地震の後に起こると思われる火災に対するものではありません。
 では、問題は何なのか。一つは地震の際にも消火施設や防火施設が機能を維持するようには出来ていないことなのです。第二に、施設が必要とする水量を決めるに際して、消防自動車が来るまでの半時間ほどの放水を念頭においてますが、地震時には同時多発的であり、道路も通れないから消防車は来ません。したがって地震の後の消火や防災のための水の供給については、通常の火災に対するものとは全く違った観点から検討する必要があります。
 
◆ プロジェクト1 千本釈迦堂

 パイロットプロジェクトの一つである千本釈迦堂は通称であって、大報恩寺が本名です。このお寺の本堂は1227年に建立されましたが、1456年の応仁の乱にも燃えずに残りました。京都では最古の木造建造物であり、国宝に指定されています。
 このお寺には本堂のほかにも仏像などの国宝や重要文化財を多く擁していますが、それらは耐火性のある収蔵庫に保管されていることから、地震時に周辺で火事が起こったとしても、比較的安全であろうと考えられています。
 
千本釈迦堂の場合の問題点は、境内が狭く本堂のすぐ近くまで民家が迫っていることです。このように人家が密集している地域では、周辺の色々な場所で出火が起こるであろうし、それが本堂に及ぶであろうことも容易に推察されます。
 したがって、千本釈迦堂では、境内の周りに何らかの延焼遮断のための方策を講じなければなりません。方策としてはさまざまなものが考えられますが、技術的な可能性や必要経費との関係も勘案する必要があり、こうした点について検討を進めています。
 
◆ プロジェクト2 二条城
 もう一つの検討例である二条城は、建造物である方丈が国宝であるばかりでなく、その内部には障壁画など多くの国宝を有する 貴重な文化財です。ここは、文化財として貴重なのみならず、市民の緊急避難地にも指定されており、3万人以上の人がここに避難することから、周囲の人家からの延焼はあってはならないのです。
 二条城は周囲を堀で取り囲まれていますが、水は溜まり水ですから消火や防火には適していません。しかし、東側の表通りには堀川が流れており、近い将来は通水の予定ですから、これをお堀に繋げば堀の水を利用することができ、地震火災に対する安全度は飛躍的に高まると期待されます。
◆ プロジェクト3 東山山麓
 石塀小路から高台寺を経て産寧坂に至るあたりは伝統的建築物の保存地区ですから、地域全体を面として火災から防御する必要があります。この地域は東山山麓に沿って広がる景観と歴史が調和した美しい地域であり、歴史環境としても守るべき地区です。
 清水寺は産寧坂を上ったところにありますが、この坂は東山の山麓の斜面に展開していますから、坂の下で火が出るとあっという間に斜面を も登り窯のように駆け登るものと考えられます。そして、その火は清水寺に達することが懸念されるのです。
 ここは上記の二つと違って、拡がりのある面として検討の対象としなければならないのです。
 
事務局
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