動物学者のみた
自然は警告する
─これからの私たちの生活─
 
長澤 弘
 
あとがき
 
  1965年に東京から此処大宮の郊外に引っ越してきた時は、その自然の豊かさに驚かされました。それが年とともに変わってゆきました。夏の夜に優雅に飛んでいた蛍が消え、小川の濁りとともに魚がいなくなり、飛んでくる白鷺も減り、富士山の見える日が少なくなり、夏の夜も網戸なしで済むようになり、小さな庭の草取りもそう大変でなくなり、漆黒の夜は消え、見える星の数も減ってゆきました。それらと並行して旧中仙道を走るクルマの数が日を追って増え、森や林や野原は伐り拓かれ、田や畑はつぶされて住宅が建ち並び、道路は矢継ぎばやに舗装されてゆきました。そしてこれは当地に限ったことではないのでしょうが、夏はひたすら暑くなった代わりに冬、屋外でも氷の張ることも少なくなりました。気のせいか最近は春の蛙、秋の虫の声も淋しくなったようです。
  このように、変化の激しい環境にあっては、確かに便利になった日常生活との関連においても「自然破壊」に関心をもたざるをえませんでした。たまたま、浜松の看護大学で担当しておりました生物学の講義が生態学に科目変更になりましたのを機に、これまで集めた情報と私自身の考えを基に自然(生態系)とその破壊について講義を行うことにしました。目的意識をはっきりもった熱心な学生に刺激されて、講義嫌いの私も「自分を褒めてやりたくなる」くらい毎年の講義の準備には身を入れ、学生の反応を見つつやり甲斐のある試行錯誤の連続でした。
  2000年に看護大学を辞しましたが、5年余にわたるこの講義の内容を基に、本勤務先の明治大学のリバティーアカデミー公開大学、および農学部における講演、講義も行いました。 
  本書はこれら講義・講演の内容を改定し、全面的に書き改めたものです。
  自由な発想での講義をお認め頂き、本書を著すきっかけを作って頂きました聖隷クリストファー看護大学の当時の看護学部長、丸川和子先生に厚く御礼申し上げます。
  参考にさせて頂きました著書類は原則として各章の始めに引用しました。本書の性質上、学術書におけるような引用方法をとりませんでしたことを御理解願います。
  毎日新聞からは参考資料として引用のほか、多くの記事を参考にさせて頂きました。同新聞社の御好意に心より御礼申し上げます。
  テレビ、ラジオ、その他によって入手しました事柄で後になって出所をはつきりさせることができませんでした場合にはお名前だけ引用させて頂きました。また、上記を含めて本文中のお名前は全て敬称を略させて頂きました。あわせ御了承のほどお願い致します。
  長年にわたって講義・講演の準備、資料整理、原稿や図表の作成に御協力頂きました宇田川葉子氏が本書の完成を見ることなく夭折されました。返す返す残念です。改めて感謝とともに本書を捧げます。
  最後に本書の出版に際し、格段の御高配を頂きましたアドスリーの横田節子社長および関係の皆様に感謝します。

株式会社アドスリー