動物学者のみた
自然は警告する
─これからの私たちの生活─
 
長澤 弘
 
はじめに
 
  日本を含む先進国の多くの人々は現在の心地好い生活がこれからも続くことを当然のように思い、さらに便利、快適になることを望んでいます。
  それは私たちの生きている肝心の地球(自然)について全く何も考えていないか、あるいは地球(自然)は丈夫なもので少々の事があっても頑張ってくれて、なにもかも浄化してくれるだろうと考えてしまっているからではないでしょうか。
  しかし、実際には地球は「きわめて複雑で、デリケ−トで、不安定で、脆いもの」なのですから地球に対して無関心で生活していること、それだけで自然破壊に一役買っていることにもなりかねません。
 
  本書の目的はできるだけ多くの人々が自然破壊の実情を正しく理解して、毎日の生活において自然環境問題を現実のこととして考え、対応するきっかけを作って頂くことにあります。
  そのため、だれでも最初から最後までスム−スに読んでいただけることを第一に考えましたが、どの章から始められても理解に全く支障ないように書かれてあります。 
 本来、私たちの社会も各地域の先住民のように自然のバランスを保った循環型であるべきです。それなのに、いわゆる文明人は、無数の化学物質、道路や建物を作ることによって自然を破壊しながら、その恩恵を無制限に享受した結果、自然のバランスを大きく崩してしまって、多数の生物を危機に陥れているのです。他の生物が絶滅してしまって人間だけが生き延びられる世界などありえないし、物質的に豊かな、しかも安全な生活などもありえないことを早く認識して、気持ちの上でも実際的にも生活のありようを変えるべきときであると思います。そのため以下のような事を頭の何処かに置いて本書を読んで頂ければなによりです。 
  物質的豊かさはある程度まで心の豊かさと並行しますが、その程度を越えると、その並行は乱れ、前者の進歩は後者の退歩(頽廃)を促すものになります(図1)。
  便利さの表れである様々な電化製品、マイカ−、パソコン、携帯電話の類は確かに私たちの毎日の生活をより便利にしてくれています。しかしその一方で、これらのものが礼儀、思考、努力、計画性、規則正しい生活、我慢、記憶力、勤勉さ、会話(国語)力、社会性(自分が社会の一員であるという認識)など、人間として本質的なもの、生きて行く上に必要最低限の条件をいかに失わせているか、言いかえれば、自然環境を破壊するまでに進歩した物質文明は、自然だけでなく、人間の本性までも破壊しつつあるとも言えるのです。
  逆に「勿体ない」だの、「節約」だの、「倹約」などという忘れ去られた言葉を毎日の生活において事あるごとに思い出すだけでも自然ばかりでなく人間性の破壊をも防ぐのに役立つと思います。

株式会社アドスリー