手術や分娩などの際にも使用される血液製剤は人の血液から作られています。現在の日本ではその約半数を海外における非献血(売血)に頼らざるを得ないのが現状です。本書はその海外から輸入される血液製剤に関する問題点を医学関係者の方はもとより、一般の方にもわかりやすく書かれたドキュメントです。
1981年、ロサンゼルスで男性同性愛者5人に奇病(後にエイズと命名された)が発生し、翌年になってウイルスが原因らしいと伝えられた。わたしは、米国の売血に依存している日本の血友病患者にエイズ感染がおこるであろうと推測した。
国内の献血ですべての血漿分画製剤を自給するためのキャンペーンが必要であると思い、1984年、半年がかりでロサンゼルス、サンディエゴ、サンフランシスコ、サクラメントなどの犯罪多発地域での売血所への潜入調査を行った。
翌85年3月から新聞、テレビ、雑誌などで米国の売血の実態を国民の皆様にお伝えし、国内献血での自給を訴えた。
米国の売血の惨状は、あまりにもひどかった。
推薦の言葉
櫻井よしこ氏
わが国は薬害エイズから失敗の原因を学びとったか。否であると青木氏は断定する。
失敗から学ぼうとしないわが国の実態を本書は鋭くリアルに描き出している。
著者紹介
青木繁之
・献血供給事業団理事長
・東京臍帯血バンク代表
・厚生労働省
・厚生科学審議会専門委員
目 次
目次
推薦のことば 櫻井よしこ
はじめに―血液は「薬」ではない
第1章 安全な血液をもとめて―血液の戦後史
(1)輸血による梅毒感染
(2)輸血による血清肝炎(輸血後肝炎)感染
これが売血だ①―日本の売血―東京・山谷、大阪・釜ケ崎、京都など
(3)血清肝炎のその後
(4)血漿分画製剤
(5)輸入血液製剤によるHIV感染
これが売血だ②―アメリカの売血―カリフォルニア、コロンビア、ベリーズ
(6)HIV感染の悲劇
(7)2000年代にクエスチョンマーク
第2章 血液事業の展開
(1)新しい血液事業のスタート
新血液事業推進検討委員会第一次報告 概要
基本合意事項
(2)書き換えられた合意事項と覚書
合意事項
覚書
血液製剤の供給
第3章 新しい血液事業に向かって
(1)中央薬事審議会での検討
新たな血液事業等の在り方について
(2)血液法の制定
(3)血液製剤は国内献血で
あとがき―これからの血液事業