「天災は忘れた頃にやってくる」という名言を残した著者。専問とする地震学の知識をもとに、日本人の地震への関わりを考えた風土論である。
文章は朗読するに限る。声に出して読む。そのため、すべての漢字にふり仮名(総ルビ)をふった。文章をひたすら繰り返し読む。1話1冊の体裁を採った。
内容は「旅とふるさと」。日本人の地震との関わりは長い。地震には、厳父としてのきびしさと、慈母としてのやさしさの二つの様相をもつ。その繰り返しの年月の中に独得の心性を育てた。最たるものが「天然の無常」である。日本人の心情の根幹に迫る文。
地震は恐ろしい しかし、地震を含む自然活動が 日本という自然を作った また、日本人の一つの心性を創った 「千年の活断層で千年に一回ぐらい」地震が「起こって、そのたびに1メートルぐらいの誤差を生じる」。これを「繰り返し繰り返しやっていきますと、大体百万年で千メートルの上下差ができる」。「京都盆地に立って周りを見ますと約千メートルの大山脈がずっと東山をつくっている、あるいは北山をつくっている。そして西の山をつくっている」。「百万年の土木工事をやってきたというわけです。」「要するに活断層とはおつき合いをしてきたのだし、」「それと共生をはかる」「ということになります。」 『日本の心と文化財』―京都大地震は近い― 尾池和夫 「寺田寅彦の晩年の作品に『日本人の自然観』というすばらしいエッセーがあるんです。寺田さんは東京大学の物理学科を出られて」「生涯地震研究に一身をささげた方です。このエッセーは地震学者としての専門的キャリアの上に立って、日本の自然というものを検討された、その最終報告です。」「厳しい父親のごとき自然」「慈母としての自然」「これが」「日本人の美意識、感覚、思想というものを非常に豊かにしたんだと。」 『日本の心と文化財』―京都大地震は近い― 山折哲雄